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『ガスライティングという支配』 アメリア・ケリー
こんにちは。クライマーのKinnyです。私はクライミングでガスライティングという被害を受けて、うつ病を再発し、セルフセラピー中です。
素晴らしい良書を発見しましたので、シェアしたいと思います。
こちらです。米国の臨床心理士、アメリア・ケリーPhDによる著作です。
この価格帯にしては、コンパクトにまとまった専門書の中での入門書というような内容になっています。
この書籍の素晴らしいのは、医療において病名の診断にあたる、ガスライティングそのものの解説というよりも、回復に重点が置かれ、ワークが大変豊富なことです。これまでたくさんの専門書を購入してきましたが、専門書はワークの背景の解説が丁寧ですが、ワークとしては、え?これだけ?というほど単純なことが多く、やることはシンプルだったりするので、買って損した感があることがありました。
以下が紹介されているワーク(心理学的な回復処置、医療において投薬に当たるもの)です。
バウンダリー
複雑性PTSD
大文字のTRAUMA/小文字のtrauma
ACEチェック
トラウマボンド
愛着スタイル
SUDS
情緒的コントロール
共依存(12ステップ)
DEAR MAN
フォーカス瞑想
決定の単純化
セルフコンパッション
ボックス呼吸法・パワーポーズ
感謝ワーク
ストーリーテリング
パーツ
EMDR
アートセラピー
陰ヨガ
FETタッピング
第三チャクラワーク
ゆるしワーク
セラピューティックライティング
譲れないものリスト
これらが、処方箋に当たるようなものです。それぞれの専門書を当たる必要がないように解説されています。
■ ガスライティングとは何か?
私はナルシストアビュース(自己愛的虐待)をクライミングパートナーより受けたことで、ガスライティングという被害に遭ったことを知りました。
ただ、顕在的な被害にあう以前にも社会的ガスライティングには頻繁にあっていたようだ、と本書を読んで分かりました。
日本のような家父長制が色濃く残る国では、女性を男性がコントロールする手段として定着しているそうですので、ナルシストに限らず、ガスライティングをすることで、ガスライターの意図のまま、被害者を動かすという方法は、すでに社会人生活の中で、経験したものであった、とこの本で分かりました。
この本は女性向けに書かれていますが、男性でも同じ処方箋が使えますので、ガスライティングの被害に今遭っている方は、本書のワークに取り組むことで改善が期待できると思います。
日本の心理学の業界では、ガスライティングは比較的新しい概念で、まだ知らない人が多いですので、カウンセラーを見つけるのが大変だと思います。
自分にも思い当たるかもしれないという方は、ガスライティングの事例について、自分が当てはまるかどうか?は、この本を読んでみてほしいですが、特徴は、
否認: 「そんなことはやっていない」
聞こえないふり:(無視する)
矮小化:「なんでそんなに大げさなんだ」
価値下げ:「俺は〇〇なんて信じないね」
無効化:「そんなこと、作り話だろう」
ステレオタイプ化:「誰も、あなたが行っていることなんて信じないよ」
論点すり替え:「君が〇〇なだけだろう」
です。ガスライティングにも段階があります。
第一段階:嘘のネガティブなストーリーを作り出す
例:○○さんは依存的でいつもトップロープを張ってもらいたがるという。
現実は、〇〇さんの実力以上のところに連れて行かれるためトップロープ以外の選択肢がない。事実は、岩講習などを受けておらず無免許運転で岩場に行っているのはむしろ相手で、無責任なのは自分の側であるにもかかわらず、俺は連れて行ってやっているんだ、という風に周囲に思い込ませる。
第二段階:しつこく繰り返す
意図した構図が定着するまで繰り返す。
第三段階:反論するとエスカレートする
反論すると、強化するような行動をとる。しゃーねーなー、つきあってやるよ…という態度など。(同書より引用 「ガスライターは、自分の責任を否認し、しばしば確たる証拠があるにもかかわらず、自分がやってもいないことで責められ、どれだけ傷ついたかを訴えます。自分を傷つけた責任はおまえにある、とばかりに相手に責任を擦り付けようとします」これは、クライミングでは、自己責任論による、責任転嫁になっています。)
第四段階:ターゲットを消耗させる
ターゲットに「自分がおかしいのだろうか…」と自信を失わせる。ガスライターが作り出した現実に同調させようとする。
第五段階:共依存
ガスライターは、ターゲットを自分につなぎ留めておくために、恐怖心を利用します。
第六段階:偽りの希望
優しさや反省をチラ見せする。「そこまで悪い人ではないのかも…」と再考させる。
第七段階:被害者を利用する
個人の考えをコントロールし、行動をコントロールする。自分に利する行動だけを奨励する。例:ドレイヤーの完成
この関係性の特徴は、ギャンブル性です。心理的安全がなく、いつも緊張したり、たまに優しかったりで、落差が激しく、本質はどちらなのか?と探求してしまうと罠にかかります。