なぜ虐待をしてしまうのか? 『虐待: 沈黙を破った母親たち』を読みました
概要
読書感想文
虐待を話題にする時、親や行政ばかりが責められます。確かに適切な対応をしていないのは事実だとしても、責任を追及するだけでは、根本的な解決にはなりません。
問題なく育児をしていた人が、いきなり乳幼児を揺さぶってしまうとか、いきなり頭がい骨陥没にまでけがを負わせるわけではありません。
最初は感情的になって怒鳴ることからはじまり、言っても聞かないから軽く叩き、アザが残るほど殴るようになり、最悪の場合は虐待死事件になる。
どこかで、社会が止められたはずなんです。
例えば、テレビCMでこまめに育児の相談窓口の宣伝をしたり、虐待の定義や適切な育児の解説をワイドショーなどが取り扱うなど。
もっと言うと、児童福祉法の厳罰化も必要です。
現状、虐待らしき言動を見かけたら然るべきところに通告する義務はありますが、しなかったからといって罰せられません。しかし、アメリカでは刑事罰が課せられます。だから、子どもと関わる職業の人は常に目を配っていないと、自分の仕事を奪われたり、人生が終わりかねないのです。
これは良い法律だと思います。子どもを守るために、常に国民が目を配っている。それは監視社会というより、虐待に敏感な社会といった方が適切です。
また、児童福祉に関わる人が、専門的な知識と豊富な経験を持っていることも必要です。
虐待を無くすために大事なのが、虐待をしてしまう親への共感や支えです。
「子どもに暴力をふるう親なんて」とか「ちゃんと育児できない親が子どもを産むなよ」と、冷たく突き放すことは簡単です。しかし、それでは虐待を減らす根本的な解決にはなりません。
どこの家庭でも、親に必要なのは、ちゃんと共感してくれる相談相手です。腹を割って話せる人がいないと、自分の中にストレスをため続け、それはいつか、子どもへ発散してしまうことになります。
未来ある子どもたちを救うためには、その親を救わなければなりません。
そのためには、児童虐待防止法の厳罰化と、虐待をした親への適切な治療と指導が必要です。