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なぜ虐待をしてしまうのか? 『虐待: 沈黙を破った母親たち』を読みました


概要

なぜ母たちは,暴力への衝動に抗うことができなかったのか.いつから母たちの心は殺されていったのか.本書は痛苦の思いでわが虐待を語り始めた4人の母の心の軌跡,家族の闇を丹念な取材で描き出した衝撃のルポルタージュ.日本社会に潜行する「子どもの虐待」を「加害者」の側から初めて照らし出し,識者の助言も紹介する.

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読書感想文

 虐待を話題にする時、親や行政ばかりが責められます。確かに適切な対応をしていないのは事実だとしても、責任を追及するだけでは、根本的な解決にはなりません。
 問題なく育児をしていた人が、いきなり乳幼児を揺さぶってしまうとか、いきなり頭がい骨陥没にまでけがを負わせるわけではありません。
 最初は感情的になって怒鳴ることからはじまり、言っても聞かないから軽く叩き、アザが残るほど殴るようになり、最悪の場合は虐待死事件になる。
 どこかで、社会が止められたはずなんです。
 例えば、テレビCMでこまめに育児の相談窓口の宣伝をしたり、虐待の定義や適切な育児の解説をワイドショーなどが取り扱うなど。

 もっと言うと、児童福祉法の厳罰化も必要です。
 現状、虐待らしき言動を見かけたら然るべきところに通告する義務はありますが、しなかったからといって罰せられません。しかし、アメリカでは刑事罰が課せられます。だから、子どもと関わる職業の人は常に目を配っていないと、自分の仕事を奪われたり、人生が終わりかねないのです。
 これは良い法律だと思います。子どもを守るために、常に国民が目を配っている。それは監視社会というより、虐待に敏感な社会といった方が適切です。

 また、児童福祉に関わる人が、専門的な知識と豊富な経験を持っていることも必要です。

 子どもの福祉とはかかわりのなかった人が、人事異動で機械的に所長や児童福祉司となるケースが一般的で、児童相談所は児童福祉に豊かな知識と経験を持つ専門家で成り立つ組織とは違うことがよくわかった
 しかも、多くの職員は数年で配置替えになるのが慣例で、在職期間がみじかいため地域の中で児童福祉の専門家が育ちにくい構造になっている

同 P48

 虐待を無くすために大事なのが、虐待をしてしまう親への共感や支えです。
 「子どもに暴力をふるう親なんて」とか「ちゃんと育児できない親が子どもを産むなよ」と、冷たく突き放すことは簡単です。しかし、それでは虐待を減らす根本的な解決にはなりません。
 どこの家庭でも、親に必要なのは、ちゃんと共感してくれる相談相手です。腹を割って話せる人がいないと、自分の中にストレスをため続け、それはいつか、子どもへ発散してしまうことになります。

 未来ある子どもたちを救うためには、その親を救わなければなりません。
 そのためには、児童虐待防止法の厳罰化と、虐待をした親への適切な治療と指導が必要です。


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