私のワルツ
⚠️この投稿は「眠れぬ夜はケーキを焼いて」3巻のネタバレを含みます。それでも大丈夫であればぜひお読みください。
こんばんは。みなさんは今日はいかがお過ごしでしたでしょうか。私は今日は溜まっていたドラマと買った本と美味しいご飯とたくさんの睡眠で最近崩し気味だった体調を整えました。その買った本がとても共感できる素敵な一冊だったので、今日はその本についてお話ししたいと思います。
前のブログに書いた通り、私は高校生の頃から不眠症を患い、長年にわたる治療を続けています。初めは少し眠れない程度だった症状が、今では毎日14錠ほどの薬を飲んでもなかなか眠れない程に悪化してしまいました。
不眠とは日常生活に大きな支障をきたすもので、朝のバイトが出来ないどころか大学の行きたい講義に出られないこともあります。大学の方は配慮申請をしているのでまだなんとかなっていますが、仕事となるとそうはいきません。ですから、私は数年後に社会人になる自分が想像出来ず、とても怖いです。毎日夜中まで眠れず、昼過ぎに起きる生活。こんな状態で自分は果たして社会に出られるのか。そんな不安が毎日意識の片隅にあり、私をじりじりと炙ります。
そんな時に、Twitterでふと午後さんという方の「眠れぬ夜はケーキを焼いて」という漫画に出会いました。この漫画は私と同じく不眠症を患う作者さんが眠れない夜にお菓子作りをする、といった話で、話の部分部分に作者さんの人生観が込められています。
私は初めてこの方の漫画を読んだときに、「ああ、これは私の漫画だ、私のための漫画だ」と強く思いました。眠れない夜。寝ようとすればするほど焦り、ただ過ぎていく時間。自分以外この世界に誰もいないかのような静寂。そして、空腹感。この作品に出会って、不眠症で苦しんでいるのは私だけではないし、それを乗り越えて生きている人がいるのだと初めて実感しました。そうだ、眠れない夜にはお菓子を焼くのもいいかもしれない、とも思いました。この作品は、毎日やってくる孤独な眠れぬ夜の過ごし方を私に教えてくれているかのように思えました。
私がこのシリーズの中で一番気に入っている話は、3巻の第11話、真夜中にガレットを焼く話、です。引用をすると、「いいんだ。諦めた無数の願いも、凍えるような寒さも、染みのような漆黒も、幾多の眠れない夜も。いいんだ。きっとその全てが私のワルツになる。どんなに歪でも私にしか踊れないワルツ。」(「眠れぬ夜はケーキを焼いて」3巻139ページより引用)という言葉に胸を打たれました。
私にはたくさんの諦めた夢があります。本当は、あの学校に入りたかった。病気が無ければ、勉強が出来ていたら、医者になりたかった。あの子ともっと友達でいたかった。標準的な、「普通」の子に生まれたかった。失った夢は数えるときりがありません。そして、一人きりの凍えるような寒さも痛いほど知っています。どんな人もいつしか私の側を離れていき、何もできない自分だけが一人取り残される。幾度も繰り返されるそのような体験は、私を人間不信にしました。心はいつしか泥濘のような濁った漆黒に変わり、変わらないものは永遠に続くように思える眠れない日々だけ。でも、そんな経験もいつか自分だけのワルツになる。その言葉が私を救ってくれたような気がします。どんなに歪でも、私の経験からしか生み出せない、私だけのワルツを私は踊り続ける。潰えた夢を、身を刺すような冷たい孤独を、どす黒い心を、眠れぬ夜を織り込んだワルツを。
このお話し以外でも、「眠れぬ夜はケーキを焼いて」はレシピに加えて作者さんの深い人生観が込められていて、それでいて絵が可愛く読みやすい一冊です。私と同じ、不眠症に悩む皆さまには、ぜひおすすめします。これを読んだあなたが今日はぐっすり眠れますように。それではまた明日。