前田利常のすごさ【無能を演じるということ】
江戸時代前期に加賀藩の第2代藩主である前田利常という人がいました。
この人は戦国武将前田利家の息子であり、
加賀藩初代藩主である前田利長の弟にあたります。
利常はとにかく加賀藩を守るために藩主自らがあることを実践しました。
それはとにかく無能を装うことです。
利常はあえて鼻毛を伸ばすことで、徹底的に無能を演じました。
そして幕府に警戒されないようにしました。
幕府に有能と思われてしまうとなんだかんだ理由をつけて改易される可能性があったため、ひたすら無能を演じ続けました。
幕府側としても大名が有能だともしかしたら幕府に反乱を起こす可能性があると考えて警戒します。
実際に1611年の二条城会見でまさに今言ったことが起きています。
徳川家康と豊臣秀頼が二条城で対面しました。
この時、家康数え年で69歳、秀頼数え年で19歳でした。
この会見の後、家康は本多正信に秀頼は賢い人であると述べたらしいです。
つまり秀頼は有能であると家康は認識したということになります。
こうなるともともと豊臣家の息子として警戒していた秀頼のことをさらに警戒せざる負えなくなります。
家康はこのとき69歳と当時では超高齢でしたので先は長くないと思ったのでしょう。
家康はもし自分の死後、有能な秀頼が徳川から実権を奪う可能性があるだろうというふうに考えていたと思います。
実際にこの二条城の会見で家康が豊臣を滅ぼそうと決心したという説もでています。
ただ、自分の考えとしては家康は1615年に起きた大阪冬の陣後も豊臣の存続を図っていた気がします。
なぜなら実際に大阪冬の陣後には秀頼に対し、大坂城を出て大和郡山か伊勢に移れという国替え命令が出ているからです。
つまり、まだ大名として残しておこうと家康は考えていた節があります。
しかし、二条城の会見により家康が秀頼をものすごく警戒したことは間違いないでしょう。
結果論ですが、この会見で秀頼は家康に会ってはいけませんでした。会っていなかったら有能と思われ警戒されることもなかったのです。
こういった秀頼の事例をおそらく利常は知っていたのでしょう。
有能と思われると目をつけられて改易にされる可能性がある。
だから無能を演じて警戒されないようにしようと利常はうまく立ち回ったのです。
実際に前田家は危ない状況になったことがあります。
それは1631年に起きた寛永の危機とよばれる出来事です。
寛永とは当時の年号です。
この出来事は加賀藩が幕府に無断で、
加賀藩の城である金沢城を修築しました。
他には他国から船舶を購入したり、
大坂の陣で功績があったものに追加の褒美を与えるなどの行いをしたことで、
謀反を企てているとして幕府から疑いをかけられてしまいました。
これにより加賀藩は改易の可能性もありました。
加賀藩は100万石という徳川家を抜いた大名の中では一番石高の多い藩でした。とにかく大藩だったので幕府は脅威に感じていたのでしょう。
そこで利常は加賀藩の家老である横山康玄(やすはる)を江戸に送り、自らも子の前田光高を連れて江戸に赴き、弁明したことにより、
幕府からの疑いを晴らすことに成功しました。
これにより加賀藩は改易の危機を免れることができました。
この出来事があってから先ほど紹介した鼻毛を伸ばして無能を装うということを利常は実践するようになりました。
藩を守り抜くために利常は精一杯頑張った藩主だと思います。
最後に
藩を守るために無能を演じた前田利常について紹介しました。
今、当たり前のように無能を演じることについて話をしていますが、なかなかできることではないと思います。
ほとんどの人は周りから無能と思われるよりもあの人は優秀だという風に思われたいものです。
これは昔の人も現代の我々でも同じ考えを抱いているでしょう。
特に利常という大藩の藩主という身分の高い人なら一般の人よりもなおさら優秀な人と思われたかったのではないかと考えています。
しかし、利常はあえて無能を装いました。
繰り返し言いますが、それは藩を守るためだったのです。
自分のことよりも藩のことを考えて行動した
ここが利常のすごいところです。
藩主なんだから藩を守るのは当たり前なんじゃないと感じる人もいるかもしれませんが、
実際に藩を守るために行動に移すのは大変難しいというか勇気がないとできないことだったと思います。
利常にとって加賀藩はそれほど大事な土地だったという思いが伝わってきます。
以上、尊敬する歴史人物の一人前田利常についての話でした。
ではまた~
参考にしたもの
・徳川家康の生涯と全合戦の謎99 かみゆ歴史編集部著
渡邊大門監修
・Wikipedia
・刀剣ワールド
「徳川家を鼻毛で愚弄?前田利常のかぶき者伝説」
・産経ニュース
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