ルックバックこんにちわ

 土曜の休日。
 夕方にゲリラ雷雨があると聞いて、当初、『ルックバック』と『THE MOON』を二本立てで観る予定だったが、『ルックバック』一本に絞った。そして予定外がもう一つ。
『住みにごり』の6巻の在庫が、紀伊国屋書店・新宿本店で無いと、検索で知った。やや面倒だが、西口のブックファースト新宿店に在庫があるということで、初来店となる。
 複雑怪奇な地下ダンジョンを擁する新宿駅に緊張し、事前にルートを調べていざ総武線に乗車。
 それなりの混雑具合。そこである少女が視界に入る。
 おそらく未就学児童で、か細い体で、ピンクの帽子を被っていた。
 そのピンクの帽子に若干のシミがあった。「洗ってやるか、新しいものを買ってやればいいのに」と思った。気にするほどでないが、どこか貧乏くさい印象なのだ。
 大きなお世話。
「帽子ぐらい買ってやるわい」
 若干の父性が表出したところで、新宿駅に到着。西口改札を抜け、「新宿の目」をとおり過ぎ、中央通り地下道をしばらく行くとモード学園入り口。
 その先の地下1階にブックファースト新宿店があった。
 店内の家具類が見えて、地下道ということもあり、独特でシックで洒落た雰囲気がある。地下2階にダイソーがあったので、開店まで時間を潰す目的で入店。
「何の気なしに、ダイソーか。大都会だな」
 店内はそこまで広くないが、一通りの商品があり、それなりの見ごたえはある。土地柄か、外国人観光客がチラホラ。久しぶりの百円ショップで、ワクワクしながら店内をぐるぐるしていたら、開店時間。
 お目当てのコミックコーナーは家具や新刊のコーナーを抜け、その先にある。トリッキーなフロアである。やや暗めで落ち着いた店内で、目当ての『住みにごり』6巻と『ルックバック』を購入する。
 紀伊国屋書店・新宿本店が絶対的ホームであるから、来店頻度は少ないだろうが、これで迷わず行ける。開拓、開拓だ。
 地下道を標識を頼りに東口、新宿三丁目方面へ向かう。アルタの出口から地上へ生還し、新宿バルト9へ向かう。
 チケットとパンフレット(1,500円也)を購入し、時間は十時半過ぎ。早さ重視ですき家を選択。トリプルにんにく牛丼と、半熟卵とみそ汁のセットを注文。想定内の味。美味い。満足。
 さーてと。
 紀伊国屋書店・新宿本店へ。
 そして、汗が止まらない。止まるまで一旦、二枚持参したハンカチで汗を拭いまくる。あっという間にハンカチの湿り気はマックス、限界突破。
 結論から言って、目的の、『家畜人ヤプー』の文庫本は無かった。今回はタイミングではないと割り切り、『THE MOON』をキャンセルしたことで増加した予算を元に、慎重に選び、上映時間まであと三十分。
 さっさと新宿バルト9に戻り、ペプシコーラのLサイズを購入し、いざ、『ルックバック』上映開始。
 一時間ほどで終了。
 良い。非常に、良い。原作は未読ながら、内容について知っていたが、楽しめた。絵の線が完全に均一でなく、肉筆のような感触で、人物が活き活きしていた。風景描写も美しく、こだわりを感じた。
 それはそうと、
【ストーリー】
 学園新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野。
 クラスメートから絶賛され、自分の画力に絶対の自信を持つ藤野だったが、ある日の学年新聞に初めて掲載された不登校の同級生・京本の4コマ漫画を目にし、その画力の高さに驚愕する。
 以来、脇目も振らず、ひたすら漫画を描き続けた藤野だったが、一向に縮まらない京本との画力差に打ちひしがれ、漫画を描くことを諦めてしまう。
 しかし、小学校卒業の日、教師に頼まれて京本に卒業証書を届けに行った藤野は、そこで初めて対面した京本から「ずっとファンだった」と告げられる。
 漫画を描くことを諦めるきっかけとなった京本と、今度は一緒に漫画を描き始めた藤野。
 二人の少女をつないだのは、漫画へのひたむきな思いだった。
 しかしある日、すべてを打ち砕く事件が起こる――。

 わたしも小学生から高校生あたりまで、よく絵を描いていたし、漫画家も一瞬だけ夢みたこともあった。それだけに藤野と京本の漫画、そして絵に対する情熱がひしひしと伝わって、心に響いた。
 ルックバック。
 圧倒的な画力の京本の背中を追いかける、藤野。
 進路の違いから離れることになる、京本の背中。
 そして、ひたむきに机に向かい続ける二人。 
 誰かの背を追い、または、自らも追われ、それは、ライバルであり戦友で同志。絵を描く人間同士だからこその、友情が画面全体に迸っていた。素晴らしい。
 上映時間が58分と短く不安だったが、杞憂に終わった。
 58分でいい。
 むしろ、無駄に肉付けして無理矢理120分にする必要はない。原作をリスペクトしているからこそ、この上映時間なのだろう。
 爽やかな感動と、わたし自身が物書きの端くれの、切れ端であるから余計に感じるものがあった。
 とにかく、書かなくては。と、再認識した。
 料金は1700円と若干お安いので、気軽に観に行ってほしい。
 ちなみに入場者特典で、緑色の表紙の『Original Storyboard』(原作者・藤本タツキの原作ネームを全ページ収録)が配布された。なくなり次第、配布終了ということで、お早めに。
 上映終了し、
 ダッシュで新宿駅へ。
 マッドな質感の塗料でつぶしような、空にゲリラ雷雨の予感を感じつつ、帰途につく。
 早く帰ってきてよかった。そう思うほどゲリラ雷雨は降ってないが(午後7時)どうでもいい。
 そう、今日は土曜日。
 一週間に一度の酒盛り。アテの仕込み(卵ワンパック、カニカマ、サラダチキン・ハーブ味)は終わった。テレビでは『マツケンサンバⅡ』が流れているので、もう終わり。
 そして、また明日でございます。

 
 
 

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