
お金が全て
「お金が全て」と聞いて、良く思わない人が大勢いることを知っている。それでもあえて言わせて欲しい。お金が全てであり、夢を追いかけるよりもまずはお金を稼いで現実主義的に生きることが第一であると。
私は38年間のほとんどを金欠で過ごしてきた。4月に転職してようやくお金に余裕を持てるようになった。「お金が無いと生きていけない」「人はお金で豊かになれる」ことを身に染みて実感するようになった。

夢を追うべきか、現実を生きるべきか。それを考える上でとても興味深いキャラクターが居る。『ラブライブ! スーパースター!!』の鬼塚夏美である。ご存じない方の為に、現実主義だった彼女が夢を持ち、スクールアイドルの“Liella!”に加入するまでの経緯を説明する。
中学までは大きな夢を描いていた。オリンピックで金メダル、ノーベル賞を取れる科学者、世界を駆け回るモデル。しかし、現実は足が遅い、算数も苦手、あまつさえ低身長で、いずれの夢も叶える適性が無いことに気付く。
こうして若くして現実主義者となった夏美は「マニー」が口癖となり、バイトや動画配信の収益で「お金を稼ぐ」ことでしかアイデンティティを見出せなくなる。
(中略)
しかし、かのんに言われるがままダンスのステップを踏んでみると、その気持ち良さに気付く。夢を見つけてからの夏美は覚醒した。運動音痴を克服し、人一倍練習に励み、その結果学園祭ライブでいきなりセンターポジションを務める。感想は「最高だった……ですの」。
2年前の記事を読み返して自分でも驚いているのだが、まだ貧乏だった当時の私は「夢を見て生きる人たちのほうが格好良く見える」と締めているのだ。今はそこまで思っていないのに。
私を含む多くの大人たちも現実を生きている。とうの昔に夢を諦め、第一志望でない会社に就き、お金の為に働く。これは普通と言えば普通なのだが、何かの弾みでアイデンティティやレゾンデートルを失い、ただ死んでいないだけの抜け殻と化してしまうかもしれない。そう考えると現実主義者もある意味では博打である。どうせ博打なら夢を見て生きる人たちのほうが格好良く見える。
転職を機に給料が増え、少しは贅沢できるようになった今は「やっぱ現実っしょ、お金大事っしょ」としか思えなくなった。
***
そもそも夢は叶わないのが普通である。これは10年前に小藪千豊さんも『アメトーーク!』で断言している。
世の中には「夢は叶うんや」と言う奴が多すぎる。 夢なんか、言うとくぞ子ども。絶対叶わんからな。アホな男が言いすぎなんですよ。テレビ出とるスター、大金持ち、みんな夢叶っとるから言うとんねん。 稀やこんなん。
(中略)
サッカーの本田が小学校の時「セリエAで10番とるんだ」と作文で書いた。あの人は死ぬほど努力して、死ぬほど周りの人に助けてもらって、色んな人から勝ち上がって、それでやっと夢叶ってんねん。
「基本、夢なんか叶わへん」
そうやってテレビの大人が言うとかんと。社会なんてジャングルやから、サソリもおったら毒蛇もおる。ホテルもなければコンビニもない。そういったところに送りこまないかん大人側が、ジャングル行く前の子どもらに「ジャングルめっちゃええとこやでー。凄い快適やでー」って言っていたら、子どもは何の準備もせんとパンツと靴下だけ持って「じゃあ行こか」ってなんねん。ほんで実際に行くと「あっつ、ヘビおるやん、私こんなんイヤや」ってなって引きこもる! 当たり前や!
夢を追いかけるよりもお金を稼ぐほうが絶対に幸せになれる。それに気付いたことで、かつて学生時代に描いていた「小説家か放送作家になる夢」を叶えられなかった自分を最近になって許せるようになった。親元を離れてから16年間願い続けてきた「人並みの生活を送ること」が、ようやく実現しようとしている。冷蔵庫に冷凍室が付き、壊れた洗濯機の代えも手に入れ、VHSデッキはHDDレコーダーになり、スタバでMacBookを開けるようになった(※一部、貰い物や福利厚生も含まれています)。ふるさと納税に37,000円投資する余裕も持てるようになった。弾丸ではあるが5年ぶりに帰省することも決まっている。どれも世間的には当たり前のことばかりだが、私はそれほどまでに貧乏だったのだ。
***
一方で不安が全く無いと言えば嘘になる。私なんかより何十倍もお金にストイックだったのに、27歳にして突然そのスタンスをやめてしまった女性を知っているからだ。会社のスタートアップCOOという肩書を捨て、銭湯の経営者に転職した関根江里子さんである。
学生時代から本当にお金稼ぐことが自分の人生の必須条件で、それが何故かって言うと、学費があって自分の生活費があって実家の住宅ローンとか家への仕送りとか、そういうの含めると凄い額が飛んでいくんですよ。大学生でそういう額稼ごうと思ったらたぶん普通のサラリーマンくらいのお金を稼がないと生活が出来なくって。
ふと周りを見渡せば私立の大学だったので、みんなブランド物のバッグを持って「バイトは社会経験です」みたいな「スタバで働きます」みたいな子しか居なくて、そういうのがまた悔しくて、結構劣等感で、凄い働いて、稼いで、頑張って学費払って、一人で立ち飲み屋に行って「払えた!」みたいな、そういうのが自分のお金を稼ぐことの原点にあって、稼がなきゃいけないって思って稼いできて……
2年前に父が亡くなったタイミングで、私の中では一つ終止符が打たれた感覚があって、もう稼がなくて良いって思ったんですよ。
今の仕事で安定して働けるようになれば、今後は昇格や昇給もあるかもしれない。貯金もどんどん膨れ上がるかもしれない。今はそれで幸せになれると信じているが、もしそれを上回るマイナスな出来事が身に降りかかってしまったら、自分の中で終止符が打たれてしまったら、「もう稼がなくて良い」と思ってしまったら、その先に何が残るのか。
(前職で)辛くなっちゃったときに銭湯で、私のことを何にも知らないおばあちゃんと話した20分間に凄い救われて、「明日はちょっと生きてみてもいいかな」って思えたんですよ。頑張ろうとかでも無いですし、凄い解決したってわけじゃ無くて、「まあ明日も生きてみよう」みたいな。
関根さんは前職で必死にお金を稼いでいく過程で、直感的に「銭湯で働く」夢を描くようになった。夢を叶えるのは、お金を稼いでからでも遅くは無いのかもしれない。ものの2年で考えを改めるような私なのだから、こんなことを書いておいて2年後には大なり小なり新たな夢を持っちゃったりする可能性もゼロではない。ただ、万が一そうなったとしても、事前にお金を稼いでおけば夢に向かって大なり小なり何かしらのアクションを起こせるはず。
今はそれくらいの軽い気持ちで良いのではないか。まずはお金を稼ごう。お金が全てなのだから。