見出し画像

【蛸】こんな日も愛しく思う

ウバといいます。
訪ねていただきありがとうございます。




息子さんがどうしても食べたいとのことで、お隣は佐賀県の伊万里市にあるたこ焼き屋に並んでいる。6個入り100円のたこ焼きだ。

大きなスーパーに併設されたたこ焼き屋なのだが、安いからなのかとにかく人が多い。たこ焼き屋さんには長蛇の列が出来ている。

嫁さんと子供達はスーパーでお買い物を楽しんでいるなか、私はゲンナリしながらひとり並んでいた。

結果45分ほどで買えたのだが、にしても長かった。天気が良くポカポカしていて助かったが、寒かったらきっと泣いていただろう。

並んでいる時間はとにかく暇だ。後ろのお姉様たちは尽きることなくおしゃべりに夢中だったが、途中で「純一郎がさ!」と聞こえたため郵政民営化の話で間違いないだろう。

そんな他人のおしゃべりに耳を傾けるほどには暇である。

だってひとりなんだもん。

とはいえここまで並んだら食べたい。順番まであと少しのところで数人前のお客さんが10箱ほど購入、いっきに在庫切れとなり「焼き上がりまで15分ほどかかります〜」のアナウンス。

こればかりは仕方がない。もう待つのにも慣れてきたところだ。嫁さん達はなかなか出てこない。私の存在を忘れてお買い物を楽しんでる様子。


目の前に並ぶ小さい女の子がペロペロキャンディをくれたのはアナウンスから数分後のことだった。「コレあげる」と。

手を繋いているお母さんも「お兄さんにあげるというのでよかったらどうぞ」と笑顔である。

飴ちゃんよりあなたの連絡先をいただけませんか?とは言えない。この長い列に同じ時間並んだのだ、戦友とよんでいいたろう。戦友には手を出せない。

戦友はダメで人妻なら手出しはいいのかとかは置いといて、私は笑顔でペロペロキャンディを受け取り女の子の頭を撫でる。もらってすぐに舐めはじめたペロペロキャンディは、我が子が好きなのと同じもので甘くて美味い。

それから程なくしてたこ焼きが焼き上がる。女の子はたこ焼きを手に入れ、私に手を降って去ってゆく。私も手を振り返したこ焼きを購入した。ペロペロキャンディを舐めながら買うという行儀が悪いことをしてしまったが大目に見てほしい。

嫁さん達は買い物を済ませ車で待っていた。終わってたなら一緒に並んでくれても良かったのに、とは言えない。

車を出す前にひとつたこ焼きを食べたが飴の味と混ざって美味しくはなかった。しかし温かかった。この温かさはきっとあの子がくれた優しさなのだろうなんて思った。

まあ出来たてだから温かいだけなのだけど、優しさと書いたほうがいい人に見られそうだから書いている。下心である。


本当に天気のいい日だった。私は買い物にも参加できずただ並ぶだけのドライブだったが、こんな日も愛おしいなと思える。

何もない日々の繰り返し。それでもそこに小さな幸せがあれば、人は今日を愛せるんだと思う。




ここまで読んでいただきありがとうございます。
自慢じゃないですが、子供にはモテるんです。




それでは、佐世保の隅っこからウバでした。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集