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【読書メモ】『寝ながら学べる構造主義』-『構造と力』を読めるようになりたい①

今回は『寝ながら学べる構造主義』について、
読書感想というよりは、内容の整理を、
自分用に行いたい。


はじめに

なぜかと言えば、タイトルにもあるように、
私は数ヶ月前に、『構造と力』という書籍に挑戦してみたが、
内容がよく分からず、1章で断念した。

『構造と力』にある千葉雅也さんの解説には、
この書籍の内容について、

構造主義~ポスト構造主義の理論を驚くべき鮮やかさで整理している。

と評している。

私は、構造主義もポスト構造主義についても
知識がないため、全くもって理解できなかった。
また、私にはそのような前提知識がなくても理解できる素養も持ち合わせていない。

また、「『構造と力』読めない」とか「『構造と力』難しい」といったことをネットで検索しても、特に個別具体的に解説してくれるものが見つからなかったので、自分で読み切るしかないのだと、痛感したのである。

という訳で、『構造と力』を読めるようになりたいため、
そのような思いに駆られ、
構造主義、ポスト構造主義について学ぼうと考えた。

まずは構造主義に関して、
『寝ながら学べる構造主義』から学んでいきたい。

『寝ながら学べる構造主義』を読んだ感想

本書の内容に入る前に、感想を述べるが、
構造主義について、例え話を交えながら、簡潔にわかりやすく述べられている。
哲学初心者の私でも、読みやすく、構造主義の大枠を捉える1冊目としては、良かったのではないかと実感している。

ただ、ポスト構造主義については書かれていないので、
また別の入門書を探す必要がある。

本書の構成

本書の内容構成は図の通りである。

本書の構成

まず、1章で構造主義以前の思想をみる。
ここでは、構造主義という思想が生まれる地盤を形成した
人物が挙げられている。
マルクス、フロイト、ニーチェである。

2章では、構造主義の始祖(この呼称について様々な意見があることが本書でも述べられているが、理解しやすいために便宜的に用いている。)
とも言われる、ソシュールを扱っている。

そして3~6章では、構造主義の四銃士と呼ばれる、
フーコー、バルト、レヴィ=ストロース、ラカンについて、
簡単に、どんなことに関心を抱いていたのか、整理されている。

構造主義とは?

まず、構造主義とは何か。

構造主義というのは、ひとことで言って仕舞えば、次のような考え方です。
私たちはつねにある時代、ある地域、ある社会集団に属しており、その条件が私たちのものの見方、感じ方、考え方を基本的なところで決定している。

『寝ながら学べる構造主義』p.25

私たちは自分では判断や行動の「自律的な主体」であると信じているけれども、実はその自由や自律性はかなり限定的なものである、という事実を徹底的に掘り下げたことが構造主義という方法の功績なのです。

『寝ながら学べる構造主義』p.25

と説明されている。

要するに、社会の在り方(政治、労働、家族に至るまでのあらゆる物事や関係性)や、思考には、私たちが意図しているかに拘らず、
何かしらの大きな枠組み(=構造)が存在している、

ということである。

(やや誇張的になるが)だからこそ、その構造的な枠組みの理解を通すことでしか、「人間を理解」できないのではないかという考え方である。

ある制度が「生成した瞬間の現場」、つまり歴史的な価値判断がまじり込んできて、それを汚す前の「なまの状態」のことを、のちにロラン・バルトは「零度」と述語化しました。構造主義とは、ひとことで言えば、さまざまな人間的諸制度(言語、文学、神話、親族、無意識など)における「零度の探究」であると言うこともできるでしょう

『寝ながら学べる構造主義』p.80

以上が構造主義の大枠の理解である。

それと関連して、ポスト構造主義とは何か。
今回は、構造主義を批判的に捉えた思考法
として把握しておくに留める。

『寝ながら学べる構造主義』第1章

話は本書の要約に戻る。
1章では、マルクス、フロイト、ニーチェが扱われている。

●マルクス
私の理解では、
人間の個別性を形成するのは、「何をするか(=労働)」によって決まる。
というのがマルクスの基本的な考え方である。

生産関係の中で「作り出したもの」を媒介にして、人間はおのれの本質をみてとる 

『寝ながら学べる構造主義』p.28

ネットワークの中に投げ込まれたものが、そこで「作り出した」意味はなく、主体の「行動」のうちにある。これが構造主義の根本にあり、(後略)

『寝ながら学べる構造主義』p.32

中心に静的な主体が、判断したりするのでなく、中心を持たないネットワークの動的な関係性から、主体は規定される
というのが、マルクス以前の思想との違いである。

●フロイト

人間が直接知ることのできない心的活動が人間の考え方や行動を支配している

『寝ながら学べる構造主義』p.33

これは先にみた、構造主義と相通ずるところがありそうだが、
フロイトは、無意識(=当人には直接知られずに、人の行動や判断を支配するもの)という概念を見出した人で、
社会や大きな構造的枠組みの話ではなく、
無意識領域に関心が向けられている。

だからこそ、
ある心的過程を意識することが苦痛なので、「抑圧」することで考えないようにしている
と考えるのである。

●ニーチェ

ある自明と思えることは、ある時代や地域に固有の「偏見」に他ならないということをニーチェほど激しく批判した人はおそらく空前絶後でしょう 

『寝ながら学べる構造主義』p.40

ニーチェに関しては、これを抑えれば、本書の内容を掴むことができる。

※本書は、ニーチェが何をしたのか具体的に記述されており、その根本を見失いかねないので、要注意である。

ニーチェが批判したのは、「畜群化された社会集団」である。
「畜群化された社会集団」とは、いかにしてみんなが「均質」を目指すのかであり、善悪に関しても「同じか/同じでないか」という価値基準が蔓延する社会を指す。

さらにニーチェが危惧したことは、

これまでも強権に屈して畜群化された社会集団は歴史上いくつも存在しました。しかし、近代の畜群はそれとは決定的に違っています。というのは、現代人は、「みんなと同じ」であることそれ自体のうちに「幸福」と「快楽」を見出すようになったからです。
相互参照的に隣人を模倣し、集団全体が限りなく均質的になることに深い喜びを感じる人間たちを、ニーチェは「奴隷」と名付けました。

『寝ながら学べる構造主義』p.53

そして、ニーチェは奴隷(=外在的な規範)からの解放をすべきだと訴えた人である。

おわりに

以上が、構造主義の基盤を形成した思想である。
ある時代の価値観は、ある時代的なものでしかないことを説き、主体中心からの脱却を試みたのが、3人の功績と言える。

長くなってきたので、構造主義については、次回。


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