T氏の日記。

24歳の日記。忘れないように、思ったことを。

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最近の記事

【読書感想】坂口安吾「堕落論」「続堕落論」

「堕落論」は一読しただけでは、頭に入ってこなかった。 安吾が定義する「堕落」という言葉のニュアンスや、 文意を理解することが難しかったからである。 なので、本来の解釈は異なるかもしれないが、 私見として坂口安吾の「堕落論」「続堕落論」について書き残したい。 はじめに 「堕落論」は、確かに今現在に当てはめても、 力を持ち続ける作品であると思う。 (数ページしかなく、短くてすぐ読める) しかし、見方を変えれば、安吾は人間の本性とは何かを、 普遍的に論じているために、具体的処方

    • 【読書感想】夏目漱石『こころ』

      恥ずかしながら、夏目漱石は数年前に『坊ちゃん』を読んだくらいである。 そのため、漱石における位置付けを語るには至らないが、 『こころ』を読んで思ったことをいくつか書き残したい。 『こころ』の構成 『こころ』は上中下と3つから構成されている。 そのうち、上中は「私」の視点から描かれ、 下は「先生」の遺書から文章が構成されている。 私が感じたことは「この小説の事実とは何か」である。 この意味は、本小説が何かしらの歴史的事実に基づいているか否かの 話ではない。 現に、フィクシ

      • 【感想】最近浴びたもの-20240706

        簡単な感想を述べるだけであるが、 最近観たコンテンツについて書き残しておきたい。 ※ネタバレを含む 関心領域 この映画で印象に残っているのは、 男の子の部屋の場面で、 外(収容所)から、りんごを争ったために、 川流しの刑に処された人がいることを聞いた、幼い子供が 「もう二度とそんなことをしちゃダメだよ」 というようなことを言い放つシーンである。 映画全体は、内容が単調で、カメラフレームも引きの画が多く、 隣にある収容所には希薄な関心であることが伺える。 さらに、収容所関

        • 『構造と力』第1章読んでみた!-『構造と力』を読めるようになりたい④

          前回までに、構造主義の前提知識を学ぶために、2つの書籍を読んだ。 さて、準備が整った訳で、『構造と力』を読んだ。 最初に結論から言えば、 よく分からなかったという感想になる。 第1章の4までと、8の内容については、大枠をつかめた気がしたが、 5〜7、交換以降の内容については、よく分からなかった。 具体的な箇所としては、文庫本p.77やp.93の図式の説明についてである。図の成り立ちや表現意図については、文章を読んで理解したが、なぜそのような図式にならざるを得ないのか、そ

        【読書感想】坂口安吾「堕落論」「続堕落論」

          【感想】最近浴びたもの-20240621

          今回は、感想がまとまってはないものの、最近読んで、観たコンテンツについて残しておかねばと思うものをここに記す。  安部公房『砂の女』 ストーリーのファンタジーさ比べ、描かれる主人公の心情やイデオロギーは、実的なようの思えた作品である。 また、存在倫理というべきものか、生死を前にしたときの言動は何か、普遍的なものではないかとも考えさせられる。 このように、死に迫られ、社会なら排除されたときに抱く感情や感想はどこか本質的なものが孕んでいると考えられる。 そして、生きるとは

          【感想】最近浴びたもの-20240621

          【読書感想】『ニホン語日記』

          今日は、井上ひさし著『ニホン語日記』について、書き残したい。 はじめに本書は、平成初期に週刊文春で書かれた、 井上ひさしの日本語にまつわるエッセイを 集めたものである。 内容は、最近(といっても平成初期あたり)の日本語の傾向や、 井上ひさしの言語にまつわる関心事、 そして外来語が日本語を侵食していく傾向や、 「カタカナ」など、様々な題材が取り上げられている。 「様々」といったが、各エッセイにカルタのようなものが描かれ、 五十音順に取り上げられているため、50のエッセイが

          【読書感想】『ニホン語日記』

          『現代思想入門』-『構造と力』を読めるようになりたい③

          今回は『現代思想入門』より、ポスト構造主義について整理したい。 ↓前回までは、構造主義を整理した。 はじめに 『現代思想入門』の内容を整理するが、 本記事では、ポスト構造主義について主要な3人、 デリダ、ドゥルーズ+ガタリ、フーコーを扱っている、 『現代思想入門』第3章までを整理したものである。 第4章以降では、ポスト構造主義以前の思想や、 さらにポスト構造主義を深掘りしたもの、 今後の現代思想について記されているため、 そちらに興味がある方は、本書を手に取って参照さ

          『現代思想入門』-『構造と力』を読めるようになりたい③

          【読書メモ】『寝ながら学べる構造主義』-『構造と力』を読めるようになりたい②

          今回も前回に引き続き、『寝ながら学べる構造主義』について、 内容の整理を、自分用に行いたい。 前回はこちら↓ 本章の構成は以下のとおりであるが、 今回は3章以降をメモする。 『寝ながら学べる構造主義』 2章 ソシュール 2章では、前回述べたように、 構造主義の始祖(この呼称について様々な意見があることが本書でも述べられているが、理解しやすいために便宜的に用いている)とも言われる、ソシュールを扱っている。 ソシュールの思考の一つを挙げれば、 ある言語圏のシステムの中

          【読書メモ】『寝ながら学べる構造主義』-『構造と力』を読めるようになりたい②

          【読書メモ】『寝ながら学べる構造主義』-『構造と力』を読めるようになりたい①

          今回は『寝ながら学べる構造主義』について、 読書感想というよりは、内容の整理を、 自分用に行いたい。 はじめに なぜかと言えば、タイトルにもあるように、 私は数ヶ月前に、『構造と力』という書籍に挑戦してみたが、 内容がよく分からず、1章で断念した。 『構造と力』にある千葉雅也さんの解説には、 この書籍の内容について、 と評している。 私は、構造主義もポスト構造主義についても 知識がないため、全くもって理解できなかった。 また、私にはそのような前提知識がなくても理解で

          【読書メモ】『寝ながら学べる構造主義』-『構造と力』を読めるようになりたい①

          【読書感想】読書感想文に対して思うこと-『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

          noteで「#読書感想文」や「#読書日記」などと検索すれば、 多くの人が、いろんな書籍で何らかの文章を書いていることがわかる。 しかし幾つか読むと、何か物足りないと思うものが散見されるのである。 もちろん、何を書いても、何を思っても自由であるが、 欲しがりな私からすれば、どこか寂しさを感じてしまう。 そもそも、読書感想文や読書日記とは何か。 その本に惹かれたフレーズを書き残すでも、内容を整理することでも、 当然、何でも良いと思うが、 私はやはり、そういった類のものには、物

          【読書感想】読書感想文に対して思うこと-『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

          【読書感想】『桃を煮る人』

          今日は『桃を煮る人』について、書き残したい。 作者はくどうれいんさん。 小説や短歌、俳句、童話など幅広く執筆活動をされている方だが、 食に関するエッセイ『わたしを空腹にしないほうがいい』が話題となった。 『桃を煮る人』も、食に関するエッセイについて綴られたものである。 このエッセイはウィットに富んでいるとかそういうことではなく、 純粋に食の楽しみを、その食べ物に纏わりつく想い出とともに、 「くどうれいん」そのものを描いたエッセイである。 この本の魅力の一つに、くどうれ

          【読書感想】『桃を煮る人』

          【読書感想】『残像に口紅を』

          今日は『残像に口紅を』について、書き残したい。 前回に引き続き、図らずも「口紅」続きとなってしまった。 はじめに この小説は、筒井康隆によって記されたものである。 ストーリーについて大枠を言えば、 「この世の中から言葉が消えるとどうなってしまうのか」 という、音が一つずつ消えていく世界で、主人公ならびに人間にはどうなってしまうのかを描いた作品である。 この小説に対する主な感想は、 「実験的であり面白い」とか、「読みづらいくて面白くない」といったものが目立つ。個々の感想で

          【読書感想】『残像に口紅を』

          『Tシャツに口紅』

          今日は『Tシャツに口紅』について、書き残したい。 はじめに 作詞は松本隆、作曲が大瀧詠一の歌であるが、 メロディーも歌詞もなんとも良いのである。 まず出だし。 この情景については…. と語りたいところではあるが、この曲と出会いについて語らせて欲しい。 大瀧詠一にハマっていた時期に、この曲を初めて聴いたのである。 最初はメロディーが気持ち良くて、「この雰囲気好きだな」という感じであった。 私は、歌詞よりもメロディーの雰囲気で、好きか嫌いかを判断するタイプの人間であり、

          『Tシャツに口紅』