英語&翻訳解説【Natty Dread】
まず曲を理解する
この曲のテーマはずばりラスタです。
「俺はラスタだ、ラスタで何が悪い」と堂々と歌っています。
ドレッド、ナッティドレッド、ナッティドレッドロック、コンゴボンゴ、ルーツナッティ、ビンギボンゴ・・・ルーツレゲエファン以外には聞き慣れない言葉が続々と出てきますが、全部ラスタの別名です。
ラスタは自分たちの文化、そして道を知っていると歌っています。道とは遠いふるさとアフリカへ帰る道のことです。
厄介者扱いされようと、誰に何と言われようと気にしない、自分たちのやり方を貫くんだ。そんな歌詞で容姿を理由に怖がられたり、社会不適合者のような扱いをされがちなラスタを励ましています。
英語表現と訳し方
Natty Dread
Nattyはknottyのジャマイカ式発音をスペルに反映させたものです。
Knottyは「knot(結び目)が多い」という意味の形容詞です。
そこから結び目が多く、もつれた髪の毛をnattyと呼ぶようになったわけです。
旧約聖書に記された決まりを厳守している正統派のラスタは髪の毛を伸ばし放題にして決してとかしません(洗髪はします)。
ナジル人についてはこちらをどうぞ。
髪もヒゲも完全に放置状態なんで、ラスタは見た目がかなりワイルドなことになっている人が多いです。
非ラスタのジャマイカンは彼らのそんな姿をNatty Dreadと形容し、ラスタ本人たちも誇りをもってそう自称します。
補足しておきますが、関連語dreadlocksは、dreadful(恐ろしい)+locks(髪の毛の房)」です。
恐ろしい髪の毛の房を持つ人、つまりラスタです。
という訳でNatty DreadもNatty Dreadlockもどちらもラスタを指します。呼び方が違うだけです。
Congo Bongo I
CongoはNatty Congoの略です。
Natty CongoとNatty Dreadは同じです。
Bongoはblackを意味するパトワです。
ルーツレゲエの世界ではいろんなアーティストがCongo Bongoと歌っています。
ひたすらNatty Dreadを連発するよりCongo Bongoを混ぜた方がリズミカルで楽しいからだと思います。
最後の「I」は「わたし」です。
倒置されてこの場所に置いてあります。ルーツレゲエでは定番の形です。
Congo Bongo IでI’m a Rastaという意味です。
Walk up ~
「~を歩く」という意味です。
厳密には坂や階段を「歩いて上る」というニュアンスがありますが、ただストリートを歩いている場合にもよく使います。
Walk up and downと言うと、「上り下りする」、あるいは「行ったり来たりする」という意味になります。
Tread on ~
「~を歩いて進む」と言う意味です。
ベルトの上を歩いたり走ったりするトレーニング装置treadmillのtreadです。
Seh
パトワです。
欧米式の標準英語だとsaysになります。
I and I
非常によく使われる代表的なI-wordです。
I(わたし)+ I(わたし)でwe(わたしたち)という意味です。
Go astray
「道に迷う」という意味の文語的表現です。
日常会話では使わない言葉です。
口語では通常get lostと言います。
Astrayは、「本筋を外れる」とか「道を踏み外す」と言うニュアンスで英語版聖書で多用されている言葉です。
こんなところにも聖書からの言葉が出てくるところがボブらしいです。
Bright and sunny
「明るく陽光が一杯の」という意味の定形表現です。
よく似た言い方でclear and sunnyというのもあります。
「快晴」という意味です。
Have things our way
Thingsは「物事」を指します。
Wayは「やり方」とか「方法」です。
Have things our wayで、「物事を思い通りにする」、「物事を自分たちのやり方でおこなう」という意味になります。
If a egg Natty in a the red
すごく謎めいたフレーズです。
ジャマイカの格言かなと思い何度も調べてみましたが、どうやらボブが創ったオリジナルのようです。
英米式標準英語に直すと、If the world is an egg, Natty Dread is in the redとなります。
「世界が卵だとすると、ラスタはその赤い部分だ」という意味です。
卵を割ってみると黄身の周囲に血が滲んでいることがたまにあります。おそらくその状態を指しているんだと思います。
ボブが何を言おうとしたのかは不明です。ドレッドロックのラスタは「卵に混じる血のように目障りな異物だが、存在自体は特に問題ない(=取り除く必要はない)」という意味なのかもしれません。
韻を踏んでいる箇所
以下の三か所で韻を踏んでいます。
翻訳する上で苦労した点
最後の謎のフレーズをどう判断して翻訳するかが非常に難しかったです。
リスナー個人個人が自由に解釈できるよう、必要な単語だけ補って逐語的に訳しました。
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