英語&翻訳解説【She's Gone】
まず曲を理解する
この曲のテーマは喪失感です。
主人公はパートナーを失った男性(=ボブ)です。
彼女はある日突然いなくなってしまいました。
ストーリーは、彼女を残したメモをボブが発見するところから始まります。
これ以上は耐えられないという書き置きを残して出て行った彼女にボブは怒りではなく、理解を示しています。
ふたりの間には前から問題があったんだとようやくボブは気づいたようです。
彼女が突きつけた別れるという選択を受け入れて彼女のことを諦めたボブですが、人目をはばからずに泣いています。
愛する女性なしには生きてゆけない自分の弱さをさらけ出した曲でもあります。
英語表現と訳し方
My woman
生まれた時代や持っていた文化的背景の影響で男性優位思考だった人ですが、ボブは女性に対して「支配的」な人ではありませんでした。
「俺の女」ではボブの人間性と合いません。
彼が言いたかったのは「パートナー」だと解釈し、シンプルに「彼女」と訳しました。
似て非なる言葉にmy kind of womanというのがあります。
「自分好みの女性」、「好きなタイプの女性」のことです。
性別を入れ替えてmy kind of manと言うこともできます。
Gone
Goの過去完了形で「過ぎ去った」、「過去の」という意味の形容詞です。
有名な映画タイトルGone with the Wind(風と共に去りぬ)のgoneです。
人に対して使われると、「いなくなった」という意味になります。
後ろにforeverをつけてgone foreverと言うと、「命を奪われる」です。
For goodを補ってgone for goodとすると、「完全に消え去る」という意味になります。
関連語にgonerというのがあります。
「死者」、「助かる見込みのない人」という口語表現です。
「もう死ぬかと思いました」はI thought I was a gonerと言います。
A note
「メモ」のことです。
歌詞のように「短めの手紙」という意味もあります。
日本語のノートは、英語ではnotebooksと言います。
「メモを取る」はtake a note、「記録としてメモを残す」はkeep a noteです。
この曲に出てくるようにleave a noteと言うと、「短めの手紙を残す」=「置き手紙をする」という意味になります。
Compare notesという慣用表現もあります。
「意見を交換する」、「感想を述べ合う」という意味で使われます。
Hanging on ~
Hang on ~で「~からぶらさがる」です。
A note hanging on my doorで「俺のドアにぶらさがった置き手紙」という意味です。
後ろからnoteに説明を加えている形です。
Hang on the wallになると、「壁にかかっている」という意味です。
Couldn’t take it
Take itはいろんな意味で使われる表現ですが、ここでは「我慢する」、「耐える」です。
同じ意味でstand itも使えます。
「もう耐えられない」は、I can’t take it anymoreともI can‘t stand it anymoreとも言います。
The pressure around me, just couldn’t see
主語を省いて倒置してあります。
置き直して全部書き出すとShe just couldn’t see the pressure around meとなります。
「俺の周囲にあるプレッシャーが彼女にはどうしても見えなかった」という意味です。
ここでは「精神的な重圧」という意味で使われていますが、pressureの本来の意味は「圧力」です。
Atmospheric pressureと言えば「気圧」、electric pressureと言えば「電圧」、water pressureと言えば「水圧」です。
Fools
「愚か者」、「笑い者」、「道化師」を指します。
Foolと言えばこの名曲ですね。
逆説的な歌詞が興味深いナンバーです。
Don’t be a foolと言えば、「馬鹿なことをするな」です。
Play the foolで「道化師を演じる」という意味になります。
Wise men
「賢者」のことです。
Fools と対比させる形で数多くのことわざに登場します。
いくつか例を挙げておきます。
A heart desire
Heart(心) + desire(望むもの)で「心から望むもの」です。
Heart‘s desireという形で使われることも多いです。意味は同じです。
Heart‘s contentという似た表現もあります。
「心ゆくまで」、「思う存分」という意味です。
Mocking bird
「マネシツグミ」という和名を持つ鳥を指します。
北中米カリブ海地域原産の日本には生息しない鳥です。
「マネシツグミ」とか「モッキンバード」ではほとんどの日本語話者には何のことか分からないので「モノマネ鳥」と訳しておきました。
九官鳥と似たポジションの鳥です。
他の鳥や犬や猫だけではなく、自動車のクラクションやピアノの音まで真似するそうです。
Made it through the exit
Make itは「やり遂げる」という意味の口語表現です。
Through the exitは「出口から」です。
ふたつを合わせて、「出口から去っていった」という意味になります。
出口にはexit以外の言い方もあります。
Way out(出て行く道)です。
同じ発想で入口(entrance)をway inと言うこともできます。
韻を踏んでいる箇所
次の4か所で韻を踏んでいます。
翻訳する上で難しかった箇所
日本語話者には馴染みがないmocking birdの訳し方が難しかったです。様々なアイデアを試してみましたが、どれもうまくハマらず、最終的に定訳化している「モノマネ鳥」を採用するに至りました。
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