英語&翻訳解説【Wake Up and Live】
まず曲を理解する
「目を覚まして 正しく生きよう」
メッセージがはっきりと打ち出された分かりやすいナンバーです。
「目を覚ます」とは「真理を知る」ことです。
「正しく生きる」とは「真理を実現するため必要なことをやる」ことです。
一体何を知って、何を実現するべきなのか、この曲は語っていません。
でもボブのアルバムや曲を聴いてきた人にはおのずと答えが分かるはずです。
知るべきは隣人への愛、実現すべきは誰もが人間らしく幸せに生きられる愛にあふれた社会です。
そんな社会を実現するために俺たちにはやるべき仕事がある、そう歌っています。
ぼ~っと生きている人に活を入れ、やる気とパワーを注入してくれるポジティヴなメッセージソングです。
英語表現と訳し方
Wake up and live
単純に「起きて生活しろ」と呼びかけている訳じゃありません。
お前たちは眠っている=真理(God's truth)を知らない、そのことを自覚し、目覚めた人間になるんだというのが前半部分(wake up)の意味です。
後半のliveは真理を知った人間として「命という一本道を正しく歩いていくんだ」と促す言葉です。
何も考えず、何も感じず、ただ呼吸し、水と栄養を摂取し、生命を維持しているだけでは死んでいるも同然だという含意があります。
命の意味を知り、考え方をあらためて、やり直しがきかない人生という時間を無駄にせずに生きていくんだというメッセージです。
上記すべて盛り込むことは不可能なので「目を覚まし 正しく生きよう」と簡潔に訳しておきました。
Signs
「しるし」とか「兆候」のことです。
ここではtraffic signs(交通標識)という意味で使われています。
「記号」という意味もあります。
数学記号のことはmathematical signsと言います。
Sign languageと言えば「手話」のことです。
Riding through the ruts
Ride は「乗り物に乗って進む」という動詞です。
Rutはわだち、つまりタイヤの跡を指します。
雨や雪が降った後にトラックが通ると舗装されていない土の道にはタイヤの跡がつきます。あれがrutです。
Don’t you complicate your mind
Complicateは「複雑にする」、「わかりにくくする」です。
Mind(あたま)を複雑にしてはいけないと言っているので、肯定文に置き換えて「シンプルに考えるんだ」と訳しました。
Flee from ~
「~から逃げる」、「~から逃れる」です。
Escape from ~とかget away from ~とかrun away from ~と言い換えることができます。
Flee from temptationだと「誘惑を避ける」、flee from realityだと「現実から逃避する」です。
Bury
「地中に埋める」という動詞です。
転じて「葬る」、「埋葬する」という意味で広く使われます。
この箇所では目的語がthoughts(考え)なので「考えを捨てる」と訳しました。
Put ~ to reality
直訳すると「~以下をreality(現実)に持っていく」、あるいは「~以下をreality(現実)に当てはめる」です。
これでははっきりと意味が取れないので、分かりやすい言葉に置き換えて「~以下を現実化する」と意訳しました。
Rise
「立ち上がれ」、「倒れた状態から起き上がれ」という簡潔な命令文です。
動作を促しているように聞こえますが、聖書的なダブルミーニングがある表現です。
キリスト教の文脈では、「よみがえれ」、「生き返れ」という重要な言葉です。
Christ is risenとかChrist has risenと言えば、「キリスト(=救世主)はよみがえった」という意味です。
Ye mighty people
Yeは古い時代に使われた二人称複数形(君たち)です。
Might peopleは「力強い人々」です。
君たち=力ある者たちに呼びかけています。
Sleepless slumber
詩人ボブならではのカッコいいフレーズです。
Sleepless(眠れない)+ slumber(うとうとした状態、まどろみ)で「眠りたいけれどもどうしても眠れない状態」を表わしています。
眠れない状態はinsomnia(不眠症)とも言います。
I’m suffering from insomniaと言えば、「俺、不眠症なんだよ」という意味です。
We’re more than sand on the seashore
We’re more than numbers
ひとつ目のmore thanは通常の数量の比較です。
自分たちのような人間は海辺の砂より大勢いると言っています。
ふたつ目のmore thanはnot onlyという意味です。
数が多いだけじゃない、俺たちは数字には置き換えられない「かけがえのない存在」なんだと主張しています。
自分たちがどういう存在なのか正しく認識して心に刻むんだという間接的呼びかけです。
One, one cocoa full a basket
パトワを使ったジャマイカのことわざです。
Cocoaはカカオの実です。
ひとつ、またひとつとカゴの中に置かれるカカオの実が最後にはカゴを一杯に埋め尽くすという意味です。
欧米式の文法で書き直すとCocoas placed in a basket one by one will fill the basketとなります。
目標(=カゴ一杯のカカオの実を集める)を達成するには時間が必要だという教えです。
Roma was not built in a day(ローマは一日にして成らず)のジャマイカ版です。
When they use you
Live big today
Tomorrow you buried in a casket
Live big todayの前に主語youが隠れています。
標準英語に直すと、when they use you, you can live big today, but you will be buried in a casket tomorrowとなります。
「連中がお前を利用するなら、お前は今日を派手に生きることができる、でも明日は殺されて棺の中だ」という意味です。
権力者(baldhead)の手先となって働けば、派手で贅沢な生活が簡単に手に入る。でもそれは命と引き換えの危険な取引なんだとパトワで教えています。
韻を踏んでいる箇所
次の3か所で韻を踏んでいます。
翻訳する上で苦労したポイント
When they use you/ (You) live big todayという箇所が難しかったです。Island Records提供の英文歌詞ではWhey the use you live big todayという音を書き写しただけの意味不明な形になっています。One, one cocoa full a basketということわざを用いてボブが言おうとしたことを推測し、抜けているyou(主語を省くのはボブの癖)を補って訳しました。
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