誕生日に贅沢なひと時を。カヌレとケーキとパティスリー
10月14日。鉄道の日。
正岡子規や堺雅人の誕生日。
そして私の誕生日でもある。
平素はコメダオタクとして、コメダ珈琲店にお金と時間を注ぎ込む日々を送っている。だが数年前までは、そもそも美味しいものにお金をかける人間ではなかった。味わうことに価値を見出したのは、とあるパティスリーのカヌレがきっかけだった。
誕生日を記念して、今日はその話をしよう。
倹約家の両親の元で生まれ育った私は、成人するまでスイーツとは無縁の人生を送ってきた。お菓子なんて虫歯の原因になるだけで、食べなくても生活できる。家でのおやつは、割引シールのついたヨーグルトや菓子パン。スーパーのお菓子コーナーやスイーツ売り場に足を踏み入れたことはなかった。
そして、誕生日やイベント毎のケーキは母が手作りしていた。生クリームを泡立ててスポンジに塗り、旬のフルーツを2、3種類飾りつけるのだ。母の誕生日には、父がカスタードパイを焼いた。私にとってはそれが当たり前で、パティスリーのケーキを買う発想すらなかった。
例え材料が安くても、家族で手作りケーキを囲める方が素敵だという意見もあるだろう。私もそこは否定しない。質素ながら何不自由なく育ててもらった、とても幸せな子どもだったと思う。
ただ、両親の料理スキルと倹約の精神が噛み合ったために、お店の食べ物で贅沢するのを知らずに育ったのだ。それでも友達の家に遊びに行くと色んなお菓子が出てきて、甘い物の美味しさを知る。誕生日ケーキはどこで買っているかという話題が出たら、ケーキ屋さんに興味を抱く。日々の暮らしに不満は覚えずとも、心のどこかでスイーツやパティスリーへの憧れは積み重なっていくのだった。
🐈 カヌレの話
心の中に蓄積していく、スイーツやパティスリーへの憧れ。社会人になってお金を持つと、その憧れはある動画との出会いで顕著になった。
2021年の夏、私は製菓YouTuberのネコノメさんの動画を偶然見つけ、カヌレの何たるかを知った。カヌレが焼き菓子なのは分かっていたが、表面の焼き色をチョコレートだと思っていたくらいには無知だったのだ。
動画にて、カヌレは表面がカリッとしているが中はモチッとしているのだと紹介されていた。ひとつのお菓子で同時に聞くことのない表現。どんな食感なのか、一度は食べてみたいと思っていた。
しかし、我が家にはカヌレ型がないし、バニラビーンズもラム酒もないし、手頃な手鍋やバットもないし、冷蔵庫に生地を寝かせる空間もない。
え?やる気があれば解決できるだろって?
じゃあ本音を言いますね。
手間のかかるお菓子作りはしたくなーい!
そもそも台所に立ちたくない。稀にお菓子を作りたくなっても「簡単」と銘打たれたレシピしか検索しない。レシピに漉すとか寝かせるとか登場した時点でブラウザバック。
こんな人間、カヌレ作りなど5000年早いわ。
そんな折、ネコノメさんが同年9月にChat LuuME(シャルーメ)というオンラインパティスリーを立ち上げることを知った。
YouTuberが自分の手が届く範囲で活動を展開するなんて初めての出来事で、物珍しさがあった。また、自分のパティスリーを持ちたいというネコノメさんの情熱に触れ、少しでもその夢の後押しができればと思った。
初めて販売される商品は、カヌレ&ブラウニーのセットだった。購入したら経営に貢献できるし、前から気になっていたカヌレを食べられる。かなりのお値段だったが、思い切って予約購入。
予約した日から始まったワクワク感。クール便で届いたオシャレな箱。中には綺麗なポストカードと待望のカヌレ。今でも全て鮮明に覚えている。
メッセージカードにオススメの食べ方が書いてあったので、その通りに解凍して食べた。
表面はカリカリを超えてガリガリに硬かった。でもその食感がクセになる。そして中には弾力のある生地がぎっちり。バニラの風味がしっかりと感じられて、とても美味しかった。
その後、私はあのカヌレの味が忘れられなかった。コンビニやカフェでカヌレの字を見たら必ずと言っていいほど買っているのだが、シャルーメのカヌレの食感と味には及ばない。初めて出会ったのが満点のカヌレだったばかりに、もうあのカヌレじゃないと満足できない身体になってしまったのかもしれない。
🐈 ケーキの話
さて、話は現在に戻る。
シャルーメの、今年8月の新商品。
かわいい彩り!おしゃれ!
初めて出会ったカヌレ以来の、惹きの強さ。
この広告を見た瞬間、これは来ただろと思った。
そう、買い時が。
販売された当初は、値段のこともあって足踏みしていた。しかし、意を決して自分への誕生日プレゼントに予約した。
ミニケーキ、1個あたり845円。私が愛するコメダ珈琲店のケーキは520円〜580円。シャルーメ、さすがにお高いね。
そうだ!定期的にシャルーメを利用すれば、金銭感覚がバグってコメダに通う罪悪感が減るのでは?
……なんて破滅的なことを思いつくんだ。二度と言うんじゃない。
なんと、誕生日の前日に届きました!
配送日の指定はできないので、もはやこれは運命。
早速、高級感ある紺色の箱を開封。
中身はケーキのみ。以前はオシャレなポストカードや解凍時間の説明が同梱されていたんだけど、大変だから廃止したのかな。ポストカードが地味に楽しみだったんだけどしょうがない。ただ、予約を締め切った商品は公式サイトからページが消えるので、解凍方法だけはどこかに残しといてほしかった。一番おすすめの食べ方で頂きたいですからね。
公式サイトのQ&Aによると、プチガトーの解凍は容器ごと冷蔵庫で6時間。これを参考にしていいはずだと信じて、6時間置いたものがこちらです。
最初に食べるのは、王道の苺ショート。
食べる前に、中身を拝見してみよう。公式から断面図による説明が出ていて、それが気になっていたのだ。
スイーツのこういう各層の説明、好きなんですよね。理解してるとは言ってない。
公式画像を目指して切ったけど、外のチョココーティングがバキバキになっちゃった。
さあ、フォークを突き刺してかぶりつく!
う〜ん!甘酸っぱくて美味しい!いちごジャム……失礼、ジェリフィエ・フレーズの味が強い!てっぺんのチョコ……否、ムール・ショコラとジェリフィエ・フレーズが接しているため、ムール・ショコラを噛んだ瞬間、ジェリフィエ・フレーズが溢れ出すような感覚だ。
この調子だと呪文まみれになるな。以降は馴染んだ単語を使わせて下さい。
私はケーキスポンジのパサパサ感が苦手なのだが、このしっとりスポンジはスッと舌に馴染む。これなら美味しく食べられるぞ。
生クリームは、ミルク感強めで上品な甘さ。
スポンジも生クリームも柔らかい口当たり。解凍は成功したようだ。
口いっぱいに頬張っていて気がついたこと。
ミニケーキの高さは5cmを超えていて、実際に見ると意外と大きいのだ。全ての層を一気に味わいたいと言えども、縦方向にかぶりつくには顎に無理がある。
細やかな層の重なりをよく見ると、上半分と下半分で、各層がセットになっている。半分ずつ食べれば、全ての層を味わえるように設計されているようだ。
苺ショート、大変美味しく頂きました。
残り5個も大事に食べていこうと思います。
次はどれから食べようかなって考えるのも楽しいね。
🐈 パティスリーの話
私はシャルーメのコンセプトが大好きなんです。
食べたいお菓子を予約して、期待に胸を膨らませながら日々の生活を頑張って、待ちわびた特別な日には思いっきり贅沢をする。一度の食事が、ひとつの素敵な体験として自分の中に色濃く残る。それは輝かしい思い出となり、明日への活力に繋がる。素晴らしいサイクルじゃないですか。
シャルーメのおかげで、私はこの贅沢な好循環を学ぶことができた。美味しいものを「食べる」だけでなく「味わう」ようになれたのだ。
そして「食べる」を「味わう」に昇華させた私は、運命的な出会いを果たした。
コメダ珈琲店の、季節のケーキである。
いや、シャルーメのオタクにはならんのかい!
ごめん、コメダが家からあまりに近すぎて。
予約注文のクール便と、徒歩5分とじゃあ手軽さが段違いだもの……。
ともかく、シャルーメでの経験から「味わう」ことに価値を見出すようになった私は、以前よりもコメダの商品をじっくりと味わい、その時間を楽しむようになった。
味わった感動を多くの人に届けたい。いつしかそんな思いが生じ、私はnoteで怪文書を撒き散らすようになりましたとさ。
私の貧弱な収入では、コメダのお高い価格設定が手痛いダメージとなる。そのため、コメダの注文ひとつひとつが貴重で贅沢な体験なのだ。
事前にお目当てのメニューを調べておき、楽しみにしながらお店に行って、どのドリンクならより楽しめそうか、時間をかけて吟味する。
こうして考えると、ホテルを予約してアトラクションのまわり方を吟味するディズニーと同じようなもんだ。規模は違えど、コメダは私にとってのTDRです。
2022年に、noteにてシャルーメのカヌレを讃える記事を投稿していたのだが、アカウントを爆破したのでもう残っていない。しかし、改めてネットのどこかにシャルーメへの思いを残したいと常々思っていた。
このアカウントはコメダ語り専用だと決めていたので、少なからず葛藤もあった。
今日は誕生日ということで、どうかご容赦下さい。
最近のネコノメさんは、お菓子の販売だけでなく、製菓を学ぶ人・製菓を生業とする人へ向けての取り組みを進めているようだ。消費する側の私からすれば、生み出す側の人たちに仲間として寄り添い、夢を応援できる場を作れるなんて凄いなと思う。
私はコメダ珈琲店のオタクだけど、シャルーメとネコノメさんのことも、今後とも応援していきます。
私の心に特別な体験を残してくれてありがとう。