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ユダヤ人強制収容所でおこなわれた史上最大規模の紙幣偽造作戦💷映画『ヒトラーの贋札』
こんばんは。きなこもちです。
みなさんはユダヤ人強制収容所と聞いて何を想像しますか?有名なところだとアウシュビッツ強制収容所、ホロコースト、映画なら『ライフ・イズ・ビューティフル』や『縞模様のパジャマの少年』のような強制労働やガス室による虐殺でしょうか。小説『夜と霧』が思い浮かぶ方もいるでしょう。実はこれ以外にも特殊な専門技術を持つユダヤ人ばかりを集めてある軍事作戦に無理やり協力させていました。
今日は史上最大の偽札発行を狙ったベルンハルト作戦とそれに関わったユダヤ人技術者たちの戦いを描いた『ヒトラーの贋札』を紹介します。
あらすじ
サロモン・サロビッチは紙幣偽造やパスポート偽造で稼いでおり、裏の世界ではそれなりに名前が知られていた。ある日、警察に捕まったのち、ユダヤ人として強制収容所に連れて行かれた。本来であれば、青い縞模様の囚人服のようなものを着せられるが、サロビッチはポケットにだけ青い縞模様が入った他のユダヤ人捕虜とは考えられないほど上等な服と環境を与えられた。
サロビッチも最初は不審に思ったものの、集められた他のユダヤ人たちの顔ぶれを見て気がつく。元銀行員、元記者など、彼らは全員イギリスポンドの偽札を作るために集められていた。大量の偽札でイギリスで急激なインフレーションを起こし、経済破綻させることで戦争を有利に運ぶ『ベルンハルト作戦』を実行するためだった。
果たしてサロビッチたちは助かるために贋札を作るのか、それとも命をかけてイギリス、ひいては祖国を守るのか。
サロビッチたちの静かな戦い
この映画はほかのユダヤ人強制収容所を描いた作品に比べるとだいぶ静かで拷問や虐殺についてもほのめかす程度で直接的には出てこないのが特徴です。そしてどれほど過酷な環境だったかに重きを置く作品が多い中、この映画は主人公たちの加担したくもない作戦に無理やり加担させられる苦悩の方を重点的に描いてます。
しかも直接武器を手に取ることもできないので、とにかく今のナチスの戦況を想像しながら、どこまで紙幣偽造のリードタイムを伸ばせるかギリギリの駆け引きがおこなわれており、静かですがかなり手に汗握る展開となっていて、これまで見てきたユダヤ人強制収容所の話とは全く違うと言ってよいです。
ユダヤ人捕虜内で意図的に作られた格差
私はこの映画を見るまで知らなかったのですが、ユダヤ人全てが同じ待遇なのではなく、あえて一部を優遇するようナチスは計らっていたそうです。目的は本来ナチスに向けるべき敵対心を優遇されてるユダヤ人に集めて「あいつらは我々を裏切りナチスに加担しているのだ」と思い込ませるためです。そうすることで、ナチスによってサロビッチたちも命を握られているのに、ナチスよりも弱そう、うらやましい、裏切り者で憎き相手としてサロビッチたちに敵対心が向かうんですね。また優遇される側も自分たちの能力のおかげで生き残る確率が上がっているわけですから、なおのことナチスに逆らえません。「使えないお前らが悪い。」と優越感も持ってしまうわけです。こうしてユダヤ人同士の反目を狙うのです。卑怯ですが人間の心理をついた非常に嫌らしい作戦です。
特殊技能を持つ者たち
集められたメンバーのうちサロビッチは明確に犯罪者でしたが、元銀行員などは自分の仕事に誇りを持っていたようでサロビッチと同じ作業場に集められて怒り出すシーンなどがあります。確かにユダヤ人の中でもお金を扱う仕事は優秀と考えられていたようで、それがまして偽札作りの達人とまで言われた人と一緒にされたんじゃ、たまったものではなかったでしょう。
しかし中でもサロビッチは抜きん出ていたようで、その場に集められた人々は彼をいつの間にかリーダーのように扱っていました。またナチス側も彼ほどの技術がないため彼の言うことを信じるしかなく、徐々に主導権を握っていく様が非常におもしろいです。もともと裏の世界でやってきたところもあって、マフィアのような連中との付き合い方に慣れていたんでしょうね。
アドルフ・ブルガーの自伝的小説
この映画の原作は映画内でもキャラクターの一人として登場するアドルフ・ブルガーの自伝的小説です。正直な感想なのですが、映画内でのブルガー、めっちゃやな奴なんですよね…😅まぁ捕虜として捕まって世界を破滅に向かわせる仕事を手伝わされて、気が狂ったように喚き散らす気持ちはわかりますけど、いやお前何しとんねんと見てて思いましたね。でも原作を書いたのはそんな嫌な奴のブルガーで、主人公がサロビッチなのに驚きました。この辺は映画見たあとに調べたので、純粋にびっくりです。私の偏見ですけど自分が小説に出るなら、多少かっこよく描くものだと思ってました。なのに、みっともないとさえ思うほど嫌だーと言ってるキャラクターなので、本人の本当の行動だったとしても、むしろそう描くことに勇気を感じます。
あのへんは映画オリジナルの演出なんですかねぇ。原作は読んでないので細かな違いはわからないです。
おわりに
この映画はいつか必ず紹介しようと思ってました。戦争の話で不謹慎かもしれませんが、おもしろいです。興味を持ちましたら、ぜひご自分で鑑賞してください。