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12月、さよならの日。

夜明け前に走り出せば、今日から逃げられるかもしれない。
そんなことをちょっとまじめに考えたりした。

午前4時。



傾いたオリオン座が西の空を降りていきます。
広域農道を走り、北浦大橋を渡り、青い車はいつもの道を東へ。



夜に来ることが多い海岸の朝は、息を呑むほどきれいでした。
いつもはだれもいない砂浜に釣り人が等間隔に並んでいました。



気温0度。今季一番の寒い朝。
北からの風が波を斜めに送り込んできます。



「この車で海に来るのもこれが最後かなあ」
と言い始めて、これで何度目の海でしょう。

でも、今日が本当に最後の日です。


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15年目の青い車

春くらいから小さな不具合がでてきました。
でも、次の車検は通すつもりでした。月までの距離(38万キロ)は乗りたいと思っていたからです。



とはいえ、交換時期を迎えた箇所もいくつかあって、すべてを直して車検を通すと50万円を超えてしまいそう。2台の車が必要なくなったこともあり、車検前にお別れすることに決めました。



本当はまだまだ走れるでしょう。

今もエンジンはうっとりするほどなめらかです。
燃費も年々少しずつよくなり、最近は喜多方や銚子あたりを往復するとカタログ燃費(10・15モード)よりもいい値を出すようになっていました。

車って劣化するだけでなく育っていくのです。



こどもたちの成長とともにあった青い車。

それだけでなく、自分の気持ちが落ち込んでいる時もこの車ででかけましたし、大事なプレゼンの練習なども車を走らせながらやっていました。

1万時間くらいの長い時間をこの車の中で過ごしたはずです。



海から帰ってきて、午後。
15年、32万2421kmをともにした車は引き取られていきました。



今朝、入り込んだ海辺の砂が、青い車に運ばれて、いずれどこか知らない町の土に紛れ込んでいく。

愛する車の後ろ姿を見ながらそんなことを思っていました。


きっと、世界はそうやって続いていくのです。



よく考えたら、来春には家を出ていくはずの次女と一緒に海に来る機会も、あと何回あるかわかりません。

でも、そんなことはまだ考えないでおきましょう。


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大きな楓さんが、娘目線でのアンサー記事を書いてくださっています。父親目線で読むと泣けます…


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kimura noriaki
「科学」と「写真」を中心にいろんなことを考えています。