着物屋さんの仕事 その弐
前回の続き(前回記事はこちら)
お客様とコミュニケーションを取り、機会が来るのを待つことはお分かりいただけたと思います。
では、ただただ機会を待ち続けるのか?機会はそんなに頻繁に来るのだろうか?
みなさん疑問に思われるところだと思います。
そうです、機会なんてそうそう頻繁に訪れるものではありません!
では、どうやって売り上げを作っているのでしょう?
着物屋さんでは、一般的に「展示会」と言うものを行って売り上げを作っています。うちのお店では年に9〜10回、4日間程度の展示会を行い、そこで売り上げを作っています。お店のスタンスによって開催回数や日数は様々です。お店の規模によるんじゃないでしょうか。
例えば、6月の12日〜15日に展示会を計画します。(実際にうちのお店で計画しておりましたが、コロナの影響を鑑みて中止にしました・・・)
展示会は自社の在庫だけでなく問屋さんやメーカーさんからも協賛という形で商品をお借りして、場合によっては人的な応援も派遣していただいて開催します。ですから、何ヶ月も前から(うちでは1年前から)計画を立てて、出品商品の段取りをして展示会に臨みます。
お客様に対しても、ただ「展示会を開催するから来てください」ではなかなかご来店いただけないので、珍しいお取り寄せスウィーツをご用意したり、特別目玉商品をご用意したりして、「行ってみようかなぁ〜」と思っていただける演出を考えてご用意します。
先日行った展示会では、京都の塩芳軒さんという老舗のお菓子屋さんから職人さんにお越しいただき、ご来店のお客様にその場でできたてのお菓子とお抹茶を召し上がっていただくおもてなしをご用意したところ、みなさんに大変喜んでいただきました。
展示会を計画し、来ていただきたいお客様のところへは毎月の訪問の際に展示会の案内状を持参し、ご来場いただくお約束をいただいて帰って来る。そして展示会期間中にご来場いただき、商品をご提案し、気に入っていただいた際にはお買い上げいただく。
こうやって売り上げを作っているんです。
その昔、大手呉服店の囲み商法や重ね売りが新聞紙面を賑わせたことがあります。これは、ご説明したような展示会に於いて、ご来場のお客様を複数名のスタッフが取り囲み、買うと言うまでその場から動かせない。買うと言わせたら、ローンを組ませ、毎回の展示会で着もしない着物を重ね売りする。そんな事件と言ってもいいようなことが起きていました。
ほんの一部の悪徳店が、呉服業界全てが悪だと思われるような行為をしたために、真面目に商売をしていた店舗までが煽りをくらってしまうことになりました。これ以後、ローンを組む場合の審査が厳しくなりました。
更に言うと、バブル崩壊までの着物業界はとにかく売ること先行で、お客様にどんどんと着物を販売することだけを行って来ました。
私は、この状態をよく車に例えるのですが、運転免許証を持っていない人にポルシェやベンツをどんどんと買ってもらっていたような状態、と説明します。お分かりいただけるでしょうか?自分で運転する訳でもないのに、自宅の駐車場に高級外車が何台も並んでいるんです。そんなバカな話はありませんよね!
しかし、呉服業界はそういうような状態を作っていたのです。つまりは、自分で着物を着れない人にどんどんどんどん着物を売ることだけに一生懸命になっていたのです。
ここへ来てその時のシワ寄せがきています。全国のタンスには40兆円を超える着物が眠っていると言われています。しかも、1度も袖を通したことない着物が大多数・・・。
これではお客様も新たに着物を買おうなんて思われませんよね。当然のことだと思います。
私たちは今、その過去の償いをすべく様々な取り組みを行っております。
その取り組みについては、また次回〜。