『目 >脳』

 「先生、私毎日頭が痛いんですけど、大丈夫なんでしょうか?」

 最近頭痛が蔓延しているらしい。こうして新木の診療所を訪れる患者のほとんどが頭痛を訴えていた。

「痛み止めを処方しておきましょうか。」
「いえ、どうしてこんなに頭が痛いのか知りたいだけなんです。周りのみんなも痛がってるんですよ。」
ぎょろついた患者の目がさらにくるくると回って新木を見つめる。

「僕も頭痛がひどくてね。一体原因は何なのか、医者の間でもはっきりとわかってないんです。」
新木も出っ張った目を右回り、左回りと回転させる。

 この時代、多くの人間は異常に目が発達し、頭部より突き出して大きく肥大していた。中には目の突起が頭部の大きさより大きいものもいるとか。

以前の人間は目がくぼみ、顔のほかのパーツと変わらない大きさか、それより小さかったらしいが、情報社会になったことでこれに変化が起こり、より多くの情報を処理するべく目は発達を重ねていった。

目の前に座る患者は諦めたらしく、椅子から立ち上がる。目が大きすぎて前につんのめり、よろけていた。

例の患者を見送った看護師が診察室に戻ってきた。
「この頭痛なんでしょうかねぇ。みんなして痛がるだなんてまだ目が肥大化するのかもしれませんね。」
「目が大きくなりすぎて、このまま脳みそがなくなってしまったりしてな!ハハ!」

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