いま、なに食べた?で覚える味【食べ物のことについて毎日考えてみた】
いまなに食べた?
食事中に娘がよく聞いてくる。
初めて食べた料理、食べておいしかったもの。食べた瞬間に「これは!」と感じたものは、食べている最中から「いまなに食べた?」と何回も聞き、自分の中になんとか記憶しようと試みる。
食べた次の日も、ふと「きのう何食べた?」と聞いて思い出そうとする。この問いかけをされ始めた当初は、前日に食べた色々な料理について、娘に思い出してもらおうといくつもの料理を伝えようとしていた。けれども、色々伝えているうちに、娘からは「違う〜おやつの時になに食べたぁ?」と言われるようになり、特定の食べ物を聞いているのだと気づく。
それからは食べた時の娘の反応から、これは明日以降思い出そうと聞いてくる食べ物になったな、と感じることができるようになった。
先日、学生さんたちの国家試験合格祈願に湯島天神にお参りに行った帰り、和菓子の「うさぎや」に寄って名物のどらやきを買って帰った。
おやつの時に大人が食べるどらやきを少〜しだけもらった娘は、初めて味わう食感と味に、目をキラキラさせて、「いまなに食べた?」と、この味を記憶しようと何度も聞いていた。”どらやき”と知ると、「どらやきおいしいねぇ〜甘いねぇ〜」と小さなどらやきのかけらを大事そうに味わっていた。これは明日聞いてくる食べ物になったなと感じる瞬間だ。
翌日の朝、パジャマから着替えている最中に「きのう何食べた?」と聞き、どらやきと知ると「甘かったねぇ」とその味を想い出す。どらやきという大人と同じおやつを食べた喜びもあったためか、「おとなと同じの食べちゃったねぇ」とも言い、初めての”大人の味”としても記憶されたようだった。
つい先日は、こんなこともあった。
ばぁばと一緒にスーパーへ夕飯の買い出しに行った娘。卵売り場のコーナーで「また、たまごのやつ食べたいねぇ」と呟いていたらしい。ばぁばはどうにも”たまごのやつ"が思いつかず、いろんな卵料理を娘に聞いてみたが、正解には辿り着けず。
帰ってきてから、夕飯の支度をしている時にふと”すき焼き”ではないかと思いつき、すぐに娘に確認すると大正解を合図する大きな「うん!」をもらえたそう。娘は「パカンってしたねぇ〜」とその時の思い出も語っていたらしい。
みんなですき焼き鍋を囲んだ時に、おもちゃでない本物の卵をパッカーンと割ったことが強く印象に残っていたらしく、それを思い出しての”たまごのやつ”だったようだ。
食べているものを知りたい!この出会いを記憶していたい!という強い欲求を見せる娘の姿勢を見て、ふと、食べることが当たり前となり、目の前の食べ物を空腹を満たすため、栄養をとるためだけに自分は食べているんじゃないかと、自戒する。
そして、小さい時はこんなにも、目の前の食べ物との出会いで感動していたのかとも気づく。
これからも娘は「いまなに食べた?」でたくさんの”覚えたい味”と出会っていくんだろうなぁ。
娘の「いまなに食べた?」で覚える味に、父も一緒に出会っていきたいと思う。