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なぜ、あなたはWEBライターに希望を見るのか?

 私の職業はゲームシナリオライターである。

 目指して今の職業に就いたわけではない。自分のできることを当てられるニーズが社会にあった、というだけの話で生きている時代と運がよかっただけだと思っている。

 そして、あっという間に10年のときが過ぎた。そろそろ担当しているソーシャルゲームがサービス終了する。当然、新しい仕事を探さねばならない。

 当然10年間、ライターの仕事をしてきた私は今さら他の職業に就けない身体になっている。そんなおっさんを雇うような奇特な企業もないだろう。

 要するに私が人として生きるためには書くしかない。

 しかし世の中には書くこと以外の職業に就き、忙しく立派に仕事をして生活が担保されているのに安くない学費を払ってまで文章を書くことを学び、副業としてWebライターを目指す人々が多くいる。noteでこの記事を読んでくださっているあなたもそんな人々のひとりである可能性は高いと思われる。

 私はそういう人々がいるのが不思議でならない。

ライターというお仕事

シナリオ案件の工数と報酬

 Webライターになる敷居は高くはない。もちろん「文章が書ける」ということは当たり前の必要最低条件となるが、それは日本人なら小学生でもできることだ。

 多くのライターが仕事を探すのはもっぱらクラウドソージングサービスとなるだろう。文章を書ける人を求めるクライアントは多い。採用されるかは別として誰でもトライアルくらいは受けられ、場合によってはトライアルで微々たる報酬を得ることも可能だ。

ライターを募集している案件で多いのは、というか私が専門としているシナリオライターの案件で多数あるのはYouTube動画のシナリオ作成である。
下記の画像をご覧いただきたい。

 なかなか悪くない内容の案件である。事件系であれば個人的には好きなジャンルで書くことができる。しかし、下記をご覧いただきたい。

 報酬に注目すると、あまりにバカげている。
 約1万字で7,000円である。文字単価で1円に満たない。クラウドソージングサービスの手数料を抜かれれば6,000円強くらいだろうか。テーマが指定され資料が用意されているとはいえ、リサーチが必要な案件の相場がこの程度である。
 ただ書くだけでも工数がかかる。その前のリサーチという下準備だけでも5分10分でできるものではない。この手の記事を納品するまでに要する時間はリライトを含め、早くても2日以上はかかる。下手すれば週1本しか書けない可能性もゼロではない。本業を持っている副業ライターなら、なおさらだ。

 これを踏まえるとライターという副業で稼げる金額はせいぜい月額25,000円程度。これを割の合う仕事だと思う人はいるのだろうか?応募している人がいるところをみると、どうやらいるのだろう。

 いや、割に合う/合わないということは度外視した駆け出しのライターが修行のためにこういった案件を受け、搾取されながら文字単価を1円から2円、3円と上げていきライターとしての信頼を得ようとしているのかもしれない。
 
 私はゴメンだ。正直に申し上げれば1万字弱を7,000円で依頼できる程度の仕事だとクライアントが思っているならば、自分でやれよと思ってしまう。
 そしてライターもこんな足元を見られた案件に応募してほしくない。それじゃライターはいつまでも記事を安値で買い叩かれる。

 クラウドソーシングで実績を積むのがライターとしての将来に繋がること、自分の目標を達成するために避けて通れない道だと思っている人もいるだろうが、他人のチャンネルのYouTube動画シナリオなんか書いていてもライターの地位は上がらない。築ける人脈もたかが知れている。だいたい、そんな僅かな報酬で募集しているのは、ほとんどの場合は個人であり二次請け、三次請け、四次請けくらいのクリエイターとしか思えない。書きたいテーマでもなく報酬も低く、先に繋がることもない。

 ただ書く力が磨かれるのは間違いない。
「書く勉強という感覚をしながら微々たる報酬までもらえてしまう」と考えられる人以外は、こういった案件を受ける理由もメリットがないというのが私の考えだ。

記事執筆案件の工数と報酬

 さて次は記事執筆の仕事内容と報酬について見てみよう。

 これは非常に専門的で記事執筆に知識が必要となる案件だ。文字単価2.1円は最初に取る案件としては悪くない方だと思うが(固定報酬)予算は要相談、とあるのが気になるので仕事内容を確認してみる。

 非常に怪しい。初回に10本の記事を執筆する必要がある。報酬は文字単価2.1円✕5,000文字✕10本、約10万円となる。が、私の経験上、初回にこれほど報酬は支払われない可能性が高い。さらに資料なども自分で集める必要がある。投資というテーマで、それ読者に推奨する内容とするにはセールスライティングのスキル、Google検索で上記に表示されるようSEOの知識も必要となるだろう。

 この案件については自分が投資に手を出した経験とその成功体験、もしくはそれらの経験がある人への取材、今の情勢から先を見据える経済学のセオリー(それも不確かなものだが)を知っておくなどリサーチにかかる工数は2,3時間では足りないだろう。積み重ねた経験や知識も必要だ。

 私はそのような知見はないので、この手の記事は書けないが書くつもりはハナッからない。投資が世間のニーズがあるのは間違いないが、それを人が役立つ記事にできるライターもそう多くないだろう。それでも1記事1万円程度だ。
ということは1日1記事を書いても最大31万円。それ以上の報酬を得ることはできない。

ニーズのある記事とバックエンド商品

 記事の内容に関わらずクライアントから受ける案件を書き上げたとしても、かかる工数、労力と報酬を考えるとライターは弱者である。一度、そういった仕事を受けてみればわかると思うが二度とやりたくないと思う人がほとんどだろう。

 だが、報酬を度外視してもそれらの記事を書くのが先に繋がる人々もいる。ニーズのある記事、お金/ダイエット/語学などを強みとしており、WEB記事で自分のブランディングをして自身のオンライン/オフラインビジネスを世間に知ってもらう必要がある人。いわゆる本業がある人だ。

 読み物、エンターテイメントとしてエッセイを書くというのもあるが、それでPVを取るのはかなり厳しいだろう。特殊な環境におり、多くの日本人と同じ感性を持ちながら、起こる出来事を独自の視点で見ることができ、かつ共感を得られて文字で笑わせる文才が必要だ。有名人ならともかく無名で何者かもわからない人の私生活など誰も読まない。それこそ岸田奈美さんのような天才でなければ無理だと言わざるを得ない。

 それ以外の人々、商業出版を目指す人なら企画書を書く下準備のためにインプットした情報の一部を有料noteなりKindle出版などしたほうがよいと私は思っている。書くべきはWEB記事ではない。

なぜWebライターに希望を見るのか?

 これには3つの理由があると思っている。

 1つ目に在宅でPCさえあれば(なんならスマホさえあれば)記事を書けること。これは地方在住の方々にとっては非常に魅力だろう。主婦の方であれば月5万円の副収入があれば家計はかなり助かるだろう。ただ、その僅かな副収入のために多くのことを犠牲にしなければならない。

 2つ目、よく言われるのが時間と場所を選ばずに仕事ができるということに魅力を感じるということ。自由を手に入れるという幻想だ。甘い。これは将来的にフリーランスとなることをイメージしていると思われるが今、現在そのような状況にある私は公私の境がない。ほとんどが公になったような気すらする。何度か旅行を試みたが山のような資料を鞄に詰め込み、三泊四日の旅行で丸一日、ホテルで原稿を書いていたという経験がある。有給休暇もなくボーナスもない。東京でライター業のみで生計を立てるのは大口の業務委託契約が取れていないかぎり、ほぼ不可能と思ったほうがよい。

 3つ目は何かを表現、アウトプットしたいけれど特技などがない人がワンチャン、有名になれるかもという承認欲求と自己実現欲求を根本としたもの。こういう人は自己啓発やエッセイなどにいく傾向がある。そして無駄にポジティブであるのも特徴を持つ。まだ現実を知らないのだ。だから夢と希望に胸をふくらませることができる幸せな人々だ。
 この種の人が成功できるとすれば、節約術や整理整頓、お片づけなど実用的で人を楽しませるエッセイしかないだろう。

最後に言いたいこと

 このようにライターで稼ぐことは非常に難しい。そんなに甘い世界ではないのだ。考えてみてほしい。日本人なら誰でも書ける文章で報酬を得るという意味を。それは誰でも歌えるけどプロのシンガーで食える人は一握り、誰でも喋れるけど落語家には誰でもなれるわけではないことに近い。

 もしあなたが病気を患い、働きに出ることができずにいるが少しでもお金を稼ぎたいというなら、まずライターという仕事をおすすめする。
 しかし書く以外にできる仕事がある人は最初からやめておいたほうがよい。

 ただ報酬など関係なく自己表現がしたいのだ!という人はnoteに思いたけを書き散らかすにとどめてるべきだ。もしかしたら、そうすることで自分が見えていなかった世間のニーズに刺さる場合もあるかもしれない。ただ金を稼ごうと思っているならばコンビニでバイトでもしたほうがよほど効率がよい。

 だが私のように「書くことしかできない」という人種は書くほかない。
 いつか書くことで生計を立てられなくなる日が来ることには、うすうす気がついている。そうならないように必死になるべきなのもわかっている。
 しかし好きでもないことを書いてまでライターという職業にしがみつくつもりはない。

 ライターで稼げなくなったときは私はコンビニででも働きながら、誰にも読まれない作品やエッセイを書いて暮らすことになるだろう。
 どちらにしても書く。なぜなら私にはそれしかできないからだ。

 それ以外のことができる人に書くことで報酬を得ようとすることを私は決しておすすめしない。

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