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川上弘美「物語が、始まる」は何故グッとくるのか? 第一夜
第一夜 はじめに
上には上がいるのでこんなことは畏れ多くて言えないのですが、蛮勇を振るって言うと、わたしは昔から本が好きで、そこそこの数の本を読んできました。
今も家には溜まった積ん読が常にスタンバイしていて、しばらく前からもう読むものには困っていません。
少しでも住環境をよくするために(読んだ本を片っ端から処分するために)次から次へと読書をこなしていきたいという欲望がある一方、そんな狂騒状態を一旦お休みにして昔読んだ名作をもう一回読み返すこともあります。
なかでもわたしは川上弘美の「物語が、始まる」という短篇小説が好きで、事あるごとにこの作品を読み返してきました。
何故そこまで自分はこの作品に惹かれるのかを一度言語化してみたいと思っていました。今回のささやかな夏休みでそれについて書く時間を確保することが出来ました。
ところで今、川上弘美には「七夜物語」という作品があることを思い出しました。
それにかこつけるというわけではないのですが、わたしも七夜で、つまり全7回で「物語が、始まる」という小説を読み解いていきたいと思います(本日から最終夜まで毎日更新)。
本日はその第一夜ということになります。
本来なら前段の部分なので「第零夜」とでもすべきかもしれませんが、そうすると全体の文章が足りなくなってしまうので第一夜とします。
ぶっちゃけ水増しです。
ちなみに各回のタイトルはこんな感じです。
第一夜 はじめに
第二夜 「物語が、始まる」ってどんな話?(前半)
第三夜 「物語が、始まる」ってどんな話?(後半)
第四夜 ずれる世界
第五夜 「私たちのもっとも幸せな時間」
第六夜 「物語が、始まる」
最終夜 「生きながらえる」ということ
たいていの書評は、そこで論じられる作品が過去に読んだことのあるものでないと、どうしても面白さは半減するものです。
本来であれば実際に「物語が、始まる」を読んでいただくのが一番なのですが、未読の方にとっては「そんな時間ないよ!」という人がほとんどだと思います。
しかし、わたしとしてはどうしてもこの物語の魅力を、この記事を読む人に伝えたい。
そこでですね、第二夜と第三夜でガッツリ物語の内容に触れます。
ネタバレなんていう表現では生易しいくらいにネタバレしまくります。
ただ、安心してください。この小説は地肩が強く、会話や地の文が面白いので、決定的なネタバレをくらったとしても、その本来的な面白さが損なわれることはありません。
それでも何がなんでもネタバレはイヤなんだ、という人もいらっしゃるかと思います。そういう方は今すぐこの船から降りろ!!(急な情緒不安定)
………………
ハッ………?
ただいま意識が途絶えておりました、たいへん失礼いたしました。
そういうわけでですね、なかなか先行きは不安ですけれども、川上弘美「物語が、始まる」は何故グッとくるのかを、明日から本格的に探っていきます。
わたしの酔狂に、もしお付き合いいただけるようでしたらとても嬉しいです。
それではまた明日。
↓ 第二夜