木屑問屋

業務中こっそり読むのに適した散文

木屑問屋

業務中こっそり読むのに適した散文

マガジン

最近の記事

歯以外も磨いている

 私の取り柄の一つに「歯が丈夫」というのがある。  人生で一回も虫歯になったことがない。  むかし読んだ原田宗典氏のエッセイで「虫歯の苦しみを知らないのは、人生における苦しみの半分を知らないのと一緒だ」的な格言(うろ覚え)が紹介されていた記憶があるが、虫歯の痛みというのはそれほどつらいものだということであろう。  それなのに、私は何故か毎月歯医者に通っている。  歯が丈夫といっても毎日使っている「道具」みたいなものなので、たまには点検も必要だろう、ということで昨年自宅近くの

    • ホロライブ新人「ゲーム飽きた」的な炎上を防ぐとっておきの方法

       秋も深くなり、すっかり肌寒くなりましたね……と言いたいところですが、ここ最近は11月にしては温暖な日があったりして時候の挨拶がやりにくくて仕方がない。  というわけでどうもこんにちは、木屑でございます。  久々のVTuberの記事です。  当初は「さくらみことインド哲学の親和性」について書くつもりだったのですが、最近目に飛び込んできたとあるニュースが気になったので、予定を変更しまして本日はそれについて書こうと思います。 ■ ホロライブ新人の炎上  今月、ホロライブ傘下の

      • 「おもろいやつ」には“意見”がある(NON STYLE 石田明)

         NON STYLE 石田明さんが書いた本、『答え合わせ』(マガジンハウス新書)を読みました。 ■ 何故『答え合わせ』なのか?  近年「ナインティナインのオールナイトニッポン」で「M-1グランプリ」放送後に大会の総括や漫才論を語る機会があった石田さん。そのときの企画が「M-1答え合わせ」というタイトルでした。  中学1年生のとき、お笑い好きのお姉さんに連れて行かれた心斎橋筋2丁目劇場で、石田さんは初めて「漫才」に出会います。  「世の中に、こんなおもろいもんがあるんか!

        • フォリアドゥれない『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』【映画感想文】

           映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』を今週見てきました。  耳にするのは良くない評判ばかりでしたが、「とは言えあの『ジョーカー』の続編ということであれば、やっぱ見ないわけにはいかないでしょう!」と映画館に行きました。  そしてどうだったか。  「最悪」とまでは言わないけど、なかなか「う~~ん……」な出来でした。  前作『ジョーカー』は世界的に大ヒット。  興行収入はR指定映画として初めて10億ドル超え。日本だけでも50億円稼いだそうな。  公開当時私も映画館で見ましたが、

        マガジン

        • VTuber
          19本
        • 書評
          10本
        • 笑い
          13本

        記事

          村上春樹ライブラリー、古書現世、なつかしのゲーセン【早稲田・高田馬場】

           今日もおでかけ日和だ。  街へと繰り出そう。  高田馬場で電車を降りる。  早稲田通りを東にツーッと歩き、一風堂に入る。  本日の朝食、とんこつ醤油。麺はバリカタ。  朝からこってりラーメンの背徳。  ちと塩分が濃いめな気がするが、もろみ醤油のうまみが舌に直撃する一杯でございました。  付け合わせの辛もやしが相変わらずうまい。  「一風堂 もやし」で検索したら、一風堂公式noteの辛もやしについての記事が出てきた。  「1日の仕込み量は、国内全店の平均で1店舗約12k

          村上春樹ライブラリー、古書現世、なつかしのゲーセン【早稲田・高田馬場】

          休日、明治神宮、中野ブロードウェイ

           見事な秋晴れ。  こんなに気持のよい日は外に出かけるっきゃない。  明治神宮にお参り。  ここは歩いているだけで気持がいい。いつ来ても緑が綺麗だ。  外国からの観光客で賑わっていた。  中野へ。  サンモール商店街は相変わらずの活気。  どうとんぼり神座でおいしいラーメンを食べる。  メニューの名前自体が「おいしいラーメン」。その自信に見合ったおいしさである。  大きなチャーシュー。大量の白菜。つるつるの麺。  スープの一口目はいつもスキヤキっぽい甘みを感じる。不思

          休日、明治神宮、中野ブロードウェイ

          オードリー若林がゴールデン覇王になるためのたった唯一の方法

          それは、オデコを出すことである。  ある日、私は気付いてしまった。  売れている芸人は、もれなくオデコを全開で見せているということを。  売れっ子を思いつくままにパッと挙げてみようか。  千鳥。二人ともオデコ全開。  かまいたち。二人とも全開。特に山内さんはオデコにハイライトが入っている。  霜降り明星。当然ながら全開。  くりぃむしちゅー。ズルムケとシワシワ。全開。  さて、本題はオードリー若林である。  彼はかつて自身の冠番組『あちこちオードリー』で 「ゴールデン覇

          オードリー若林がゴールデン覇王になるためのたった唯一の方法

          「今のことしか書かないで」と彼女は告げた【大槻ケンヂ新刊書評】

          ■「絶筆宣言」  そのエッセイは、こんな書き出しで始まる。  これを書いたのは大槻ケンヂ。愛称「オーケン」。  ロックバンド「筋肉少女帯」「特撮」のボーカリストとしての活動のみならず、前述の通り小説家としても活躍している。  大槻さんが本を書きまくっていた時期は私の学生時代とすっぽり重なり、無限とも思えるヒマを持て余す身分にとって、大槻さんのエッセイ・小説は最高のごちそうだった。面白くて面白くて、むしゃぶりつくように読んだ。  私がnoteでぎこちないなりにも文章を書

          「今のことしか書かないで」と彼女は告げた【大槻ケンヂ新刊書評】

          先日投稿した記事が、note公式「今日の注目記事」に初めて選ばれました。 是非この機会にご笑覧いただければ幸いです。 君は3,850円のパフェを食べたことがあるか?【銀座千疋屋 銀座本店】 https://note.com/kikuzudonya/n/ndab46e877d26

          先日投稿した記事が、note公式「今日の注目記事」に初めて選ばれました。 是非この機会にご笑覧いただければ幸いです。 君は3,850円のパフェを食べたことがあるか?【銀座千疋屋 銀座本店】 https://note.com/kikuzudonya/n/ndab46e877d26

          東京都現代美術館「高橋龍太郎コレクション」を見る

           何年ぶりだろう、久々に東京都現代美術館に来た。  お目当ては「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」。  チラシには「ひとりの精神科医が集めた日本の戦後」というサブタイトルがあった。  鑑賞前に館内のコインロッカーに荷物を預ける。  ロッカーを閉めるには100円玉が必要だが、荷物取り出しのときに硬貨が返却されるタイプ。うれしい。  入場すると、初手から草間彌生作品がお出まし。  作品から放たれる膨大なエネルギー量に早速ガツンと頭をやられる。  本展覧会は六つのゾ

          東京都現代美術館「高橋龍太郎コレクション」を見る

          君は3,850円のパフェを食べたことがあるか?【銀座千疋屋 銀座本店】

           なんとも下品なタイトルを付けてしまった。  煽情的なタイトルで少しでも多く耳目を集めたいという浅ましい発想が丸わかりである。  私も立派なnote中毒患者ということだ。  先に結論を言う。  一年に一回、私は3,850円のパフェを食べている。  最近は急に涼しくなって世間的には「秋が来た」と見做されているようだが、私の元には未だ秋は訪れていなかった。  何故ならば、銀座千疋屋フルーツパーラーの「和栗パフェ」をまだ食べていないからである。  この国で一番いい季節は秋だと思

          君は3,850円のパフェを食べたことがあるか?【銀座千疋屋 銀座本店】

          「内村プロデュース」復活に中島らもの言葉が交錯する夜

            「お前たちはダメだー!!」 国立競技場に響き渡るサングラス男の咆哮。  「ああ、また帰ってきてくれたんだな…」と思った。  9月28日放送の「内村プロデュース復活SP」(テレビ朝日)を見た。  今年の夏に「内Pが特番で復活するらしい」の第一報を聞いたときは「嬉しいけどなんで!?」と寝耳に水だったが、“内村光良還暦記念”と知って「その理由だったら確かに復活できるかも…」と納得した。  「内村プロデュース」のレギュラー放送が終わったのは2005年(もう19年も経つのか…

          「内村プロデュース」復活に中島らもの言葉が交錯する夜

          ホロライブGTAにおける戌神ころねの物語展開力

          ■ はじめに  なんだか論文みたいなものものしいタイトルですが、本稿はそんなに堅苦しいものではなく「こないだのホロライブGTA面白かったね~」という気持を共有したいがためのざっくばらんな内容となっております。  ちなみにホロライブGTAとは……  さまざまな人間ドラマが繰り広げられたので正直どこから手を付ければいいのやらという感じですが、やはり特筆すべきは「パン屋ファミリー」でしょうか。  その中心で、戌神ころねさんは台風の目とでも言うべき活躍を見せていました。 ■

          ホロライブGTAにおける戌神ころねの物語展開力

          VTuber の引退は何故ショックなのか・補遺

             「VTuberの引退は何故ショックなのか」というテーマで、今まで私はたびたび記事を書いてきました。  過去に記事を書いた時点ではモヤモヤして言語化できなかった部分について「こういう理由もあるのではないか」と最近急にハッキリ像を結んだものが一つ出てきたので、補遺として書き残しておきたいと思います。  今から述べる「何故ショックか」の理由が当てはまるには一つの条件があります。  それは、当のVTuberが人気絶頂の真っ只中で辞めてしまう、という場合です。  一般的に漫

          VTuber の引退は何故ショックなのか・補遺

          「色即是空」で読み解く映画『きみの色』

             昨日、映画『きみの色』の感想を投稿しました。  この映画についてはまだまだ書きたいことがあります。  昨日の記事では割としっかりめ(?)な内容を書いたので、本稿はわりかしフリーダムな感じでまいりたいと思います。 ■「宗教」と「色」といえば?  主人公・トツ子が通う高校はミッションスクール。  劇中に聖書の言葉が登場したりと、どこかしら「宗教」的要素が入ってきます。  そして本作のタイトルは『きみの色』。当然「色」も重要なファクターです。  「宗教」と「色」と聞いて

          「色即是空」で読み解く映画『きみの色』

          くるくる回ってきらきらと――映画『きみの色』感想

             映画館を出る頃、頭の中でずっと音楽が鳴っていた。 「♪ 水金地火木土天アーメン」  太陽のまわりをくるくる回る惑星のように、その“聖歌”はずっと私を取り囲んで離さない。  人混みの中ではあったものの、もうガマンできず、周りにギリギリ聞こえない声量で「♪ 水金地火木土天アーメン」と唱えた。  とても中毒的な歌だ。 ■ あらすじ  先日、山田尚子監督の新作アニメーション映画『きみの色』を見た。  映画のあらすじはこんな感じだ。  本作の主要人物三人は、それぞれに

          くるくる回ってきらきらと――映画『きみの色』感想