女系じゃないよ直系だよ
私は、女系天皇に反対の立場です。
そう言うと、女性が天皇になっちゃいけないのか!
という反論が聞こえてきそうですが、決して、そういう事ではありません。
これまでにも、女性が天皇になった事例はあります。
私は、あくまで「女系」に反対の立場なんです。
そもそも、容認している人や、推進しようとしている人たちは、「女系」という言葉で、お茶を濁しているというか、真相を隠しているように感じます。
では、その真相とは何でしょうか?
結論から申しますと、これは「直系重視主義」を採用する事にほかなりません。
そして「直系重視主義」を採用すると、様々な弊害が起こってきます。
①本家と分家問題
まず、本家と分家という概念が誕生します。
まだ子供を産んでおられない、愛子内親王殿下には、申し訳ないのですが、ある仮説を立てて、架空の系図を作ってみました。
黄色で塗りつぶされた人物、すなわち直系の人が、天皇になった場合、色が付いていない人たちは、分家となってしまいます。
色が付いていない人たちが天皇になれない理由は、直系ではないから・・・という理屈が誕生するからです。
そうなると「所詮、君は分家でしょ?」
という概念が誕生してしまいます。
上の架空系図は、孫の代までですが、これが曾孫、玄孫と続いていけば、更に、その度合いを増していく事でしょう。
こうなると、時の天皇が、偏った考えや、突拍子もない事をやらかしたとしても、誰も止められなくなります。
他の皇族が、意見したところで「分家の分際で口出しするな!」
という図式が生まれる可能性が有るからです。
中国の王朝は、ほとんど、この図式で滅亡していきました。
この流れで、伝統が破壊される可能性も出てきます。
中国の王朝では、仏教を保護したり、廃仏したりと、時の皇帝の意志や思想に振り回される事件が頻発しています。
今まで築き上げたモノが、消え去ってしまったのです。
ちなみに、我が国の宮家は、分家ではありません。
同じ男系という皇位継承資格を有した人たちです。
もし、時の天皇が変な事を考えたとしても、これを制する事が出来ます。
言い方は不適切かもしれませんが、皇族間での相互監視のような状況が生まれ、伝統を破壊するような、下手な事は出来ない(してはいけない)という雰囲気が生まれるのです。
②外戚の台頭
さて、ここまで本家の力が強くなり、分家の力が弱いとなると、分家で終わりたくない・・・と考える人たちが出て来てもおかしくありません。
そんな彼ら、彼女たちを応援する人たちが出てきます。
いわゆる、外戚(がいせき)です。
配偶者の家族ですね。
外戚の人たちも、自身の孫が天皇になったら・・・なんて妄想を働かせ、いろいろと画策するかもしれません。
中国の王朝では、外戚たちの思惑によって、皇太子が命を落としたり、皇帝が殺害されたりと、様々な事件が起きています。
当然、本家も外戚と協力して、対抗措置を取るでしょう。
そうなると、時の天皇や皇族の後ろ盾となった、外戚たちによる、骨肉の争いが生まれる可能性が有ります。
なぜなら、誰が直系となるかは、(外戚の)力次第という事になるからです。
中国の王朝では、外戚たちによる争いが頻繁に起こりました。
皇太子が死ねば、自ずと次男、もしくは次女が、次の天皇になるのですから、躊躇する理由は無くなります。
暗殺事件が起きたりするかもしれないのです。
そんな非人道的な事をした奴を、誰が天皇と認めるのか!
という反論が聞こえてきそうですが、では、皇太子が殺害されたあと、一体、誰が、次の天皇になったら良いと思いますか?
様々な人たちが、あの人が良い、いや、あの方が良いと意見を出し合う事になるでしょう。
こうして、国を分裂させるほどの争いになった王朝も有ります。
また、この図式が成立すると、時の天皇が、外戚に依存する状況が生まれる可能性も出てきます。
外戚に頼りっぱなしの天皇が出て来ても、不思議ではありません。
また、外戚の影響を受けて、突拍子もない事を言い出す天皇が誕生するかもしれません。
当然、「分家の分際で!」
という図式がありますから、誰も止められません。
更に、外戚が天皇を操り、次第に、権威も奪っていく場合が出てきます。
こうして、国を奪われた王朝も存在します。
しかし、我が国は、直系ではなく、男系である事が皇位継承資格です。
ですから、勝手な事(伝統を破壊する、非人道的な事をする)をしたら、別の宮家の方が天皇になる可能性がありますので、そんな事は出来ないわけです。
男系は、骨肉の争いを起こさない為の制御装置でもあるわけです。
余談になりますが、これが、院政誕生の一因でもあります。
すみやかに皇位を息子に譲り「今後も、私の系統が天皇に成るんだよ」
と宣言する必要があったわけです。
ところで、様々な王朝の盛衰を見て、よく学んだ王朝があります。
それが、清王朝です。
清の皇帝は、皇太子を置きませんでした。
では、次の皇帝は誰が?
それは、皇帝の胸の内に秘められたまま・・・。
時の皇帝は、額縁の裏に、次の皇帝になる人物の名を書いた紙を挟んでおきます。
そして、皇帝が亡くなったあと、その紙が公開されるという仕組みでした。
これによって、皇族間の争い、外戚の台頭を防いだのです。
直系重視主義を変化球にして、争いを制御した事例と言えるでしょう。
③薄れる尊崇の念
さて、本家と分家の争いも、外戚の台頭も無く、つつがなく時代が流れたとしましょう。
そして、時の天皇に子供がいないという状況が発生したとします。
また、身近な親戚にも、子供がいないという状況だとします。
今の令和年間のような状況ですね。
そうなると、遠く離れた親戚の方が、次の天皇となるわけですが、いきなり現れた分家の方が天皇になったとして、時の国民が、その人を尊ぶ事が出来るでしょうか?
本家が尊く、分家は軽んじられる風潮が生まれていたとしたら、受け入れられない状況も発生するのではないでしょうか。
それくらいで済むのなら良いですが、これまで語ってきた、骨肉の争いや外戚の台頭が起きないとも限りません。
④まとめ
妄想と言われれば、それまでですし、男系だからといって、争いが起きないとも断言出来ません。
我が国においても、藤原氏のような外戚が誕生しましたから、男系だからといって、外戚の影響が出て来ないとも言い切れません。
しかし、「直系重視主義」を採用した場合、大陸の王朝のような、愚かしい骨肉の争いが起きる可能性が有る事は、理解していただけたのではないでしょうか。
そして、私は、宮家を再興させるのが、最善の策だと思っています。
再興される宮家の方は、国民に受け入れてもらえるよう、まずは神職となり、名の有る神社で神にお仕えいただくなどして、その資格を取り戻していただけたらと思っています。
また、旧宮家のお子様を養子として迎え入れる方法も有るかと思います。
とにもかくにも「直系重視主義」だけは、同意しかねるのです。