セールスの成績を飛躍的に上げる方法
今回はデール・カーネギー氏のところに訪れた保険のセールスパーソン・キャンベルさんと、彼の部下のお話をしましょう。
キャンベルさんの部下である、この若い保険セールスパーソンには月10件の保険が割り当てられていたのですが、去年の9月に3週間の休暇をとったため、当然のことながら、仕事が遅れてしまいました。そして9月29日、月末の前日になって、キャンベルさんに電話をかけてきたのです。
いいですか、キャンベルさんの自宅の場面を想像してください。まず電話が鳴ります。
キャンベル (受話器を取って)はい。
トム (電話の声)キャンベルさんでいらっしゃいますか?
キャンベル そうですが、やあ、トムじゃないか。
トム キャンベルさん、大変申し訳ございません。今月はノルマの10件ができそうにないんです。
キャンベル どうしてだね?
トム 今月は調子悪くて、明日が30日なんですが、まだ実績が3件しかありませんので、明日は7件売らなくてはならないんです。
キャンベル なるほど、ではそうすればいい。
トム 1日に7件売るなんて、とても無理です。3週間分の仕事です。
キャンベル 保険加入手続きをとるのに、どれくらいかかる?
トム 10分です、もしお客様が加入を本当に希望しているならばの話ですが。
キャンベル よしトム、朝の7時から仕事を始めて、見込み客1人に15分かけたとして、真夜中までに何人くらいの人に会うことができるかね。
トム ええっと(口ごもって)17、16時間、かける4として(ブツブツ一人ごとのように言う)、ああ、50人から70人には会えるかもしれません。
キャンベル OK。頑張ってくれ。
トム えっ? で、でも、いったい朝の七時に生命保険に加入するような人なんて、いるんですか?
キャンベル そこだよ。今まで会えるなんて思いもしなかったような人に会う絶好のチャンスじゃないか。明日の夜また電話して、結果を教えてくれ。
トム (あいまいに)わかりました。失礼いたします。
(受話器を戻す音)
カーネギー それでキャンベルさん、結果はどうだったんですか。
キャンベル それが次の日の朝10時半に彼から電話がかかってきましてね、3時間で7件達成したというんです。
カーネギー 3週間分の仕事を3時間でやったんですか。それは、驚異的ですね。いったいどんなふうにやったんです?
キャンベル 生命保険の外交というのは大抵朝の9時か10時から始めるものなのですが、このセールスパーソンは火の玉のように燃えていたんです。7時から始めたんですから。
そこで、煙突から煙が出ている工場がまず目につきまして、彼は真っ直ぐに入っていって、工場長と生命保険の話を始めたんです。朝の7時に生命保険の勧誘をして歩く人間がいるということで、工場長のほうもびっくりして、結局その工場長は加入しました。その後で、工場長の許可をいただいて、そこで働く工員と話を始めて、それからの3時間で30人以上と話をすることができ、最終的には朝の10時までに7件の加入を獲得したというわけなんです。
要するに、保険の勧誘は時間ではないということです。エンスージアズム(熱意)なのです。ヘンリー・フォードが、人は、本当に望むなら今やっている仕事の2倍はこなすことが可能だ、と言ったのは正しかったのです。
もう一度言いましょう。いやむしろ控えめな表現といえるかも知れません。人は、本当に望むなら今の仕事の最低2倍をこなすことができるのです。