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同じ時間を働いても、なぜ貧富の差が生まれるのか?【人間は~9】

 アルバート・アインシュタインは、かつて「なぜ私たちは生きているのか」という突拍子もない質問を受けたことがある。アインシュタインはびっくりして質問者のほうを振り向いた。しかし、答えは素晴らしかった。「人の役に立つためです」──この言葉こそ、人生の真理を含んでいる。

 すなわち、すべての報酬、喜びは、人に奉仕した代償なのである。人への奉仕こそ、幸せな結婚生活、楽しい家庭生活のカギであり、ひいては人生全般で成功するための秘訣なのである。

 クリスマスで、最も心ときめく一瞬を思い出してほしい。それは、好きな人に自分の贈った贈り物の包みをほどいてもらうときである。欲しいものを手に入れたときも確かにうれしいが、贈り物をするときの喜びには代えられない。

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 人に奉仕するとは、かくも素晴らしいことなのである。そして、奉仕は報酬をもたらすものであり、奉仕をすればそれだけ報酬も増えていく。「同じ時間働いているのに、なぜ貧富の差が生まれてくるのか」という子どものころからの疑問の答えは、ここにあったのだ。20勝投手や3割バッターは、試合におけるチームへの貢献により、莫大な収入を得ている。

 彼らは、希少価値の存在である。どのチームからも引く手あまたなのである。だから高額も要求できるのだ。これがスターの特権である。スタープレーヤーたちは、数年間にわたり、何百万ものファンを熱狂させ(人をわくわくさせるのも奉仕の一つである)、将来は野球殿堂入りも果たすだろう。

 ヒットミュージカル作家のアンドリュー・ロイド・ウェバーの場合も同じだ。彼は「キャッツ」「ヨセフ・アンド・ザ・アメージング・テクニカラー・ドリームコート」「ジーザス・クライスト・スーパースター」「エビータ」などの大ヒットミュージカルを書いた報酬に、現在、ロンドンの高級住宅街に六七エーカーの土地と40ルームつきのマンション、そしてスポーツ施設を所有している。

 金はうなるほどあるのだ。これも、ウェバーが、何百万人もの人を楽しませてきた結果なのである。今後も、その才能を遺憾なく発揮してくれることだろう。

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 ところで、あなたが才能を発揮できる分野はなんだろう。また、その才能で何人の人を楽しませることができるだろう。100人、1000人、それとも100万人か? 奉仕できる人の数によっては、あなたも莫大な富を有することが可能である。

 種のまき方で、収穫は決まる。そして種を多くの人にまくほど、収穫もそれに比例して多くなっていくのである。このように考えれば、なぜ20勝投手、3割バッター、ミュージカルのヒットメーカーに莫大な収入が入るのか、理解していただけると思う。

 このように、各分野のスターを頂点に「奉仕・報酬」社会の身分制度ができているのである。

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 かつて、私は、サンフランシスコにあるジョアン・ミロの原画の値段を尋ねたことがある。なんと60万ドルであった。とてもわが家で鑑賞できる額ではない。

 しかし、ミロの原画をなんとしても手に入れたいという人はそれこそ無数にいるし、売買のための市場もきちんとあるのだ。ミロの才能は、それほど素晴らしいものなのだ。

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『人間は自分が考えているような人間になる』
きこ書房

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