待ち焦がれていた眼科のチェックアップ〜飛蚊症の症状に遭遇して〜
どのくらい前からだったか、右目に異変が起きていることに気づいていた。目覚めている間中、とにかく何かの影が目の前にチラついて鬱陶しい。言葉ではなかなか表現し難いのだが、それは糸くずのような髪の毛のような。キラキラ光るガラスの欠片のような時もあったり、増殖するアメーバや小さな虫に見えることもしばしば。なんとなく視力も低下しているように感じられるし(それは両目ともなのだが)、とにかく、体からの何らかのSOSと考えて間違いはないのだろうと、ちょっとした恐怖と闘っていたのだ。
心配を増長させる原因の一つとして、パンデミックの直前に受けた眼科の検診で「網膜裂孔」と診断を下された、ということもある。その時はこれといって症状はなかったように記憶しているのに、家族全員で検診を受けた時に私だけが引っかかってしまった。
その時担当してくれた眼科医はDr.Gustavo(グスターボ)だった。ブラジル人とのハーフの日系の医師なのだが、初めてお会いした時からとても親しみを感じてしまうお顔つきだった。よくよく考えてみたら、あのさかなクンにそっくりなのだ。目を見開いて話される様子、おしゃべり好きな感じも。(流石にあそこまでテンションは高くないが。)
年齢も同年代ではないだろうか。ハーフなので、さかなクンをさらに色白にして、目や髪の色を薄くした感じ。物覚えの良くない私でも、さかなクンの顔を思い出せばそれはほぼグスターボ先生だというわけだ。私の病気が発覚した時の、さかなクンの私を憐れむような表情がとても印象的だった。(私の目はそんなに重症だったのね。)
さかなクンにより同じクリニックに勤務される、日系の若き女性医師が直ちに紹介され、2、3日のうちにレーザーでの手術を受けることになった。眼科の関係の検査や手術はなかなか厄介だ。事前に瞳孔を開く目薬を点眼するため、処置後しばらくは視界がぼんやりして(外では眩しくて目を開けるのが困難だ)、1人で帰宅するのは心もとない。特に運転などはご法度だろう。あの時は娘が付き添ってくれたように記憶している。
レーザーの治療自体は短時間で済む簡単なものだった。ただ、レーザーを照射する瞬間の「ぴしゅん、ぴしゅん」という音が仰々しくちょっと恐ろしい。片目だけの処置は、何度か休憩を挟みながら慎重に行われた。数日後、経過観察で再度女性医師の元を訪れた。特に問題はなし。その時の説明で、網膜裂孔は近視になりやすいアジア人によく見られると聞いた。強い近視がある場合、網膜が引っ張られ薄く脆くなり穴が開くと。放っておくと網膜剥離になる場合もあり、ますます厄介だとのことだった。
その説明は無知な私には晴天の霹靂だった。網膜剥離など、目に激しく衝撃を受けた人だけがかかる病気だと思っていたのだから。検査で見つけてもらってラッキーだったと、現代の医療技術の進歩に心から感謝した。
さて、今回の診察でさかなクンに今の右目の症状を伝える。さかなクンの表情が今までの世間話の時と違ってサッと曇ったように感じられた。右目に症状があること、それは前回レーザーの処置を受けた方の目か確認をしたら、保存されているデータからそれで間違いないとの話だった。
目の前に何かがチラチラとするこの病気は、ポルトガル語でも日本語と同じような命名がなされていて、moscas volantes というらしい。実は私もその病気の患者なのですよ、というようなことをさかなクンは仰った。
飛蚊症の原因は、簡単にいえば「硝子体混濁による影が、網膜に映し出され脳がそれを認識すること」だそうだ。加齢で起こる現象でもあるし、近視のある人はより感じやすいらしい。網膜裂孔や網膜剥離、癌などの深刻な病気が隠れていなければ、放って置いても差し支えがないらしい。脳は映し出されるイメージに直に慣れてしまうと。将来的に白内障の手術が必要となった時に、希望すればその浮遊物を除去するレーザー手術を一緒にすることも可能だと仰っていた。
説明の後に、精密な検査がなされた。症状のある右目は特に丁寧に。幸いなことに以前のような裂孔は見られないとのことだった。子供の頃から目の中(目頭の涙丘)にある黒子も、特に成長した様子もなく、このままにしておいて良いとの診断だった。但し、大きさが変わることがあれば直ちに連絡をしてくるように、と念押しされた。
症状のない左目の検査となった時に、さかなクンがはっと表情を変えた。何とレーザー痕があるのは右目ではなく、左目の方だったと。しかし、こちらも順調で問題はないと言っていただけて安堵した。
残念ながら両目とも結構近視が進んでいたので、日常的にかけているメガネのレンズの度数をあげてもらうことにした。パンデミック前まではハードコンタクトレンズ生活だったから、メガネはあくまでも室内用。気になるローガンの症状はメガネを外すことで対処、度数は緩めにしてもらっていたのだ。
パンデミック以降はメガネで過ごす日々が圧倒的に多い。着脱が楽だし、目に優しいからだ。従って、緩めの度数のメガネでは外で少々不自由を感じるようになっていたのだ。日常的なメガネの度数は上げてもらい、別のメガネのレンズはそのままに。PCでの作業など、中距離で物を見るときにはそちらのメガネを使ったら、との名案をいただいた。
少し前に三つ違いの日本の弟が白内障の手術を済ませていたので、そちらも気がかりではあったが、検査の結果まだその兆候はないとのことで胸を撫で下ろす。私のように中程度の近視がある場合、白内障や硝子体を弄る手術は少しリスクが上がるそうだ。
日常的なケアで、ドライアイから目を守る方法も教えていただけた。毎日の洗顔時に、睫毛の根元のバクテリアを洗い流すと同時に、脂の詰まりを防ぐこと。涙で潤った目の表面を乾燥から守るのはこの脂だからと。
ジョンソンのベビーシャンプーのようなニュートラルで刺激の少ない製品で、目の周りを優しく洗うことがオススメとの話だった。それでも目の乾燥が気になり充血や痒みを引き起こすようなら、涙の成分で出来た目薬をさすように。特にPC作業の時にはおすすめだと話されていた。いろいろな種類の試供品も出してくださり感謝。仕事柄PCでの作業が多く、アレルギーのある娘に早速勧めてみようと思う。
今日の診察は、正午からの私がどうやら最後だったらしい。診察の30分前に到着した時は待合所もぎゅうぎゅうであったが、診察が終わった時には、Dr.グスターボと受付嬢の他に誰もいなかった。厄介な患者で申し訳ない。もともと夫の知り合いであり、アミーゴのような関係なので無駄なおしゃべりにも花が咲いてしまった。
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クリニックを出て、遅めの昼食とクリスマスの買い物を、ということで近くのショッピングセンターに向かった。車を駐車させるのに苦労するくらいの激混み。そんな様子はこの時期の風物詩でもある。
昼食を済ませて向かったのは、ドイツのシュトーレン的な立ち位置の発酵パン、パネトーネ(panettone、ポルトガル語ではパネトーニと発音する)の専門店。シンプルで安価な黄色い箱のはスーパーで買えるが、贈答用の体裁の良い商品は直営のカフェで売られている。(値段は3倍くらいするが。。)
https://note.com/kikko_yy/n/n6eca77f3c16f
クリスマスのパネトーネについては、以前こちらに書いたことがあった。別名パネトン(paneton)ともいうらしい。
とりあえず3種類を2箱ずつ購入。2箱目は割引になるというプロモーションだった。
ブラジルでクリスマスの焼き菓子といえばイタリアのパネトーネが主流だが、幼馴染みの住むチリではパン・デ・パスクアという、同じくドライフルーツ入りのケーキが出回るそう。先日のチリ出張で、夫がその彼女のご主人様からいただいて持ち帰って来た。
ブラジルでPáscoa (パスコア)といえば復活祭を意味するが、チリではNavidad (ナビダ)とPascua(パスクア)共にクリスマスを意味するそう。本来ならクリスマスのデザートとして家族や親しい人々と分け合うお菓子なのであろうが、ちょっと早めにいただいてみることにした。
このケーキは、パネトーネと同じような大きさとしても、重量がずっしりと重い。パネトーネにはあまり使わない胡桃やアーモンドなどナッツもたっぷりと入って、ケーキナイフも簡単には入らない感じの生地だ。切り分けるとホロホロと崩れるところも、フワフワかつねっちりのパネトーネとは全く違う。同じ南米の国々ながら、この慣習の違いは面白いと思った。私はそのまま、夫はアイスクリームと一緒に美味しくいただいた。
朝から緊張した1日だったが結果的には平和で良い日だった。目に見えない誰かに見守ってもらっているような。
皆様も目の異常にはくれぐれもお気をつけて。同じような症状があれば、早めに眼科医のドアを叩くことをお勧めする。
【今週のおススメの音楽】
私の夫がこの時期になると必ずかけるのがAndrea Bocelli(アンドレア・ボッチェリ)が歌うクリスマスソングスなのです。今回はどなたもがご存じのこの曲で。
「私たちは世界の別々の場所で育ったのだけれど(カナダとイタリア)、あなたのクリスマスの思い出は?」と訊ねられ、「あなたの思い出とそんなに違いはありませんよ。美しいクリスマスツリー、家族が集うこと。そしてたくさんのクリスマスソングスたち」と。世界中どこも同じですね♡
Andrea Bocelliは来年5月に来伯されるとのことで、ただ今コンサートのプロモーションが盛ん。そのチケット代の高さも話題となっています。