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リベレーティング・ストラクチャーとレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッド(28)オープンスペース・テクノロジー

 今回取り上げるのは「オープンスペース・テクノロジー」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。

 リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はまず、こちらのNoteを読んでいただければと思います。

この方法で何ができるか?

 人々が共通の複雑な課題に取り組まなければならないとき、その人が本来持っている創造性やリーダーシップ、自己組織化の能力を解放することができます。オープンスペースでは、すべての人が議題を作成し、自分にとって重要な問題に取り組むことが可能です。議題を共同作成し、自分の情熱に自由に従った人々は、問題を解決し、行動に移すために非常に早く責任を持つようになります。中央のコントロール(議題や割り当て)を手放し、参加者全員の手に委ねることで、コミットメント、行動、イノベーション、そしてフォロースルーが生まれます。オープンスペースは、数千人規模のグループでも使用することができます。

”LS Menu 25. Open Space Technology”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 各人の能力を引き出し、深く関わらせる会議をつくるときに使われる。また、それを数千人規模でも展開できるというのも大きな魅力である。

5つの構造要素

1.始め方
・人を招いて、複雑な問題に取り組む。
・参加者に、自分が熱中しているテーマで開催するセッションを投稿してもらい、アジェンダを共同構成してもらう。
・参加者が気になるセッションに参加できるようにする。

2.空間の作り方と必要な道具
・広い部屋やオープンスペースに10~1000人分の同心円状の椅子を並べる。
・40名以上の団体にはマイクが必要である。
・イーゼルやフリップチャート、長尺の壁に貼る紙、ホワイトボードに貼られた白紙の大型アジェンダ。
・議題は課題と参加者数に応じて出現してくる。それに対応するため、十分な同時進行セッションの枠を設けること。(一つの経験則として、10人の参加者のうち3人がセッションを投稿する。例えば、50人の参加者からは15セッションが投稿される。)

3.参加の仕方
・目の前の課題に関心を持ち、主催者の招待を受け入れるすべての人が含まれる。
・誰もが平等に貢献できる機会を持つ。
・「主体的移動の法則」は、参加者全員が様々なセッションに参加することを規定するものです。それは、「好きなセッションに参加しなさい。しかし、もし自分が学んでいない、貢献していないセッションにいることに気づいたら、2本の足を使いなさい!」というものです。

4.グループ編成の方法
・大きな1つの円(または必要な数の同心円)で一緒にスタートします。
・議題となるトピックを中心に自己組織化された様々な規模のグループを編成しつづけます。

5.ステップと時間配分
・リーダーやファシリテーターが、「2本足の法則」や「4つの原則」など、オープンスペースの概念や仕組みを紹介します。5分(短尺バージョン) 20~45分(長尺バージョン)
・"マーケットプレイス "を開く:参加者がグループを作るためのテーマ+時間・場所を提案する。15分(短尺バージョン) 20~30分(長尺バージョン)
・召集者がセッションを進行させ、グループで提言や行動計画を策定する。メモを取り、印刷または掲示する。30分のセッションを2ラウンド、または1ラウンドの60分(短尺バージョン) 60分~90分のセッションを数ラウンド(長尺バージョン)
・報告会、議事録配布、閉会 10分(短尺バージョン) 60分 日毎(長尺バージョン)

”LS Menu 25. Open Space Technology”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 文中であまり説明がない「4つの法則」については別のサイトで以下のような解説がある。

1. ここにやってきた人は誰でも適任者である
2. 何が起ころうと、それしか起こることはない
3. それがいつ始まろうと、始まるときが適切なときである
4. それが終わったときは、本当に終わったのである

https://www.humanvalue.co.jp/keywords/ost/ より

 この「4つの原則」はオープンな空間をつくるための法則である。シンプルであるが、しっかりとオープンな空間のイメージを伝え、参加者にわかってもらい、空気を崩さないようにすることが重要である。

実施にあたっての追記事項

 ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。

なぜ その目的なのか?
・行動を起こし、エネルギー、コミットメント、リーダーシップの共有状態を構築する。
・自己組織化によって、難解な問題や衝突に対処する。
・参加者にとって最も重要な問題をすべて提起し、議題に含め、対処することを確認する。
・参加者が、自分の関心のある問題に取り組み、何が起こるか、何が起こらないかについて、責任を持つことができるようにする。

”LS Menu 25. Open Space Technology”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 この項目を見ていると、何かを決めることに留まらず行動を起こしていくことを狙っていること、バラバラな集まりではなく組織として動けるようになっていくことを狙っていることが強調されている。

コツとワナ
・ はじめに『Open Space Technology』を読むことをお勧めします。Open Spaceの創設者であるHarrison Owenによる指南書です。オープンスペースを初めて試すためのすべての要素が含まれており、非常に明確に説明されています。
・説得力のある挑戦と魅力的な招待の呼びかけが重要な要件です。
・会議の進行はすべて1つの文書にまとめ、会議中にすぐに配布・共有する。
・ファシリテーターは、「主体的移動の法則」、「4つの原則」、オープンスペースの仕組みなどを、真剣に楽しく紹介すること。
・ファシリテーターとして(何が正しいか間違っているかという)判断のときや、自分がどのように手助けできるかという考えを持ったときに、それを「手放す」〜することをひとつ減らす〜ということに気づく。
・「主体的移動の法則」がない会議、つまり、議題は参加者によって作られるが、人々は自分の好きなセッションに自由に参加することができない会議は、オープンスペースではありません。

”LS Menu 25. Open Space Technology”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 第1項目で紹介されている指南書については、日本語訳も出ている。準備の詳細やファシリテーションの技術などを知るために役立つだろう。

 また、ファシリテーターとして迷ったら「手放す」という心構えは、他の手法・幅広い場面で役に立ちそうだ。

繰り返し方とバリエーション
・朝ごとに2回目のマーケットプレイスを開く(より大きなコラボレーションが生まれるかもしれない)。
・オープンスペースを始める前に、「著名人インタビュー」、「真価を見出すインタビュー」、「TRIZ」を、そして閉会後に「25/10クラウド・ソーシング」でつなぎます。
・オープンスペースの他の形態は、アンカンファレンスやバーキャンプと呼ばれています。

”LS Menu 25. Open Space Technology”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 「著名人インタビュー」、「真価を見出すインタビュー」、「TRIZ」は「オープンスペース・テクノロジー」と同じLSのひとつであり、参加者に発想の柔軟さやインプットを与える効果がある。これらについては、以前に記事で紹介している。

 また「25/10クラウド・ソーシング」もLSのひとつである。これは多くの解決策や行動プランが出てきたときに皆のコミットメントを失わずに絞り込むために役出つだろう。以下の記事を参考にされたい。

事例
・あらゆるジャンルの経営会議に対応します。
・第3部「現場からの声」の「ビジネスを好転させる」を読む。Alison Joslynは、全社員を3日間のオープンスペース・ミーティングに招待することで、ビジネスの転換を図った。
・第3部「現場からの声」の「未来のヘルスケア実践を発明する」をお読みください。Chris McCarthyは、イノベーション・ラーニング・ネットワークのクリエイティブなメンバーの間で、オープンスペースを使ってコラボレーションの方向性を決めています。
・合併直後、両社の全従業員を集めて、次のステップを形成し、一緒に行動を起こすため。
・ ITイノベーションのプロトタイプを共有し、広く分散している助成金受給者の共同行動を解き放つため。

”LS Menu 25. Open Space Technology”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 参加人数が増えても効果が落ちにくいということで、大きな企業やコミュニティで使うことが望ましいだろう。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでは、議題を統一して行い、情報を共有して情報や文脈を全員で共有していく。そのため、複数の議題を同時に扱い、参加や離脱、開始や終了も委ねられている「オープンスペース・テクノロジー」とは、一体化の方向が全く異なるものである。
 それぞれの議題のグループごとに、お互いに考えをよりスムーズに伝え共有するためにレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを使うことは考えられる。ただし、参加や離脱が自由な点とどう折り合いをつけるかが問題になりそうだ。
 メソッドを理解し良いモデルをつくるための基礎演習は全員で行うのがよいだろう。そして、各々のグループで短い時間でプロセスを進める方法の開発が必要になりそうだ。また、新規参加や離脱のときに生じる、参加者間での情報の偏りを解消するための仕組み(それまでの話し合いの流れがわかるリアルタイムでの記録共有の仕組み)も開発が必要である。
 なかなか難度が高い課題だが、もし乗り越えることができればこの「オープン・スペース・テクノロジー」のように1000人規模のワークショップを効果的に行える道が拓かれるだろう。

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