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『U理論[第2版]』をレゴシリアスプレイメソッドの文脈で読む(3)ピーター・センゲによる序文

 これまで「訳者まえがき」と「第2版のまえがき」を見てきた。そして、さらに「序文」がつづく。

 この「序文」を寄せているのは、ピーター・センゲである。
 彼は『学習する組織』の著者として世界的に名が知られている。私も過去に『学習する組織』とレゴシリアスプレイメソッドの関係を考察した記事を書いてきている。『U理論[第2版]』の中でも何度か名前が登場するほか、『学習する組織』の付録でもU理論が取り上げられており、双方がお互いの思想や理論につながりを見出していることが感じられる。

 まず、ピーター・センゲはU理論を「創造の源(ソース)にたどり着く方法」を示すものとしてみなしている。この「創造の源」は現代社会が抱える複雑な問題を解決し、人類を繁栄させていくために欠かせないものだとみなしている。

 では、創造の源にたどり着くために必要なことは何か。そのためには「社会的な場(ソーシャル・フィールド)」を意識できなければならない。「社会的な場」こそがわれわれの意識に働きかけ、結果として問題を作り出すことを生み出しているからである。

 そして、「社会的な場」を意識するには「意識の構造」を深めていかねばならない。この「意識の構造」については、1.0から4.0まであることは「第2版まえがき」の「社会進化のマトリックス」のなかで出てくる概念である。

社会進化のマトリックス(再掲)

 センゲはここで、この「意識の構造」に気づくためのU理論のなかのキーワードを紹介している。それは「開かれた思考(マインド)」「開かれた心(ハート)」「開かれた意志(ウィル)」である。

 「開かれた思考」は、当たり前のように信じていた仮定を捨て去り、新たなものを認識しようと耳を傾け見ることを促す。
 「開かれた心」は、新たなものを認識しようと行動し経験した時に、それを「感じる」ことを大切にして自分に変化を起こすことを促す。
 「開かれた意志」は、変化を定着させていくために必要なものだ。なぜなら、人間にも組織にも新たなものへの抵抗する力が働いているからだ。これは「どうやっていいのかわからないが、これは私がやらなければならないことだ」という感覚として表れるという。

 この3つが一体となって人々の学びが進み、意識と行動にシフトが起こっていく。目指すべき新たなものへ進むことは「過去の経験から学ぶ」という感覚ではなく、「出現する未来から学ぶ」と表現される。
 そしてセンゲは、そのような学び方ができることが、これからのリーダーシップの本質に関わるという。

 加えてセンゲは重要なこととして、このU理論が単なる理論ではなく、その実践も同等の重みを持たせてつくられているという。つまり、U理論は読むだけでは習得できず(内容を暗記し、信じるのでは、「1.0習慣的意識」にとどまってしまう)、読み手に、U理論の実践を迫るという課題を突きつけてくると指摘し、U理論の実践を読者に促して文章を締め括っている。

レゴシリアスプレイメソッドとの関係について

 ここで新たに強調されてきたキーワードは、まずは「開かれた思考(マインド)」「開かれた心(ハート)」「開かれた意志(ウィル)」である。

 これはU理論に限らず、何かを体験しながら学ぶときに必要なものである。レゴシリアスプレイでもこの3つをいかに感じさせるかがファシリテーターにとって必要になるだろう。
 あてはめてみると、「開かれた思考」は主にレゴを使ったワークに対する偏見を取り除くことであり、「開かれた心」は、手を信じて作品を作り、自分が意識していなかった表現から意味を見出すときに大事になるだろう。この2つは主に基礎演習のときに重要となるだろう。
 「開かれた意志」は、ワークショップが進行する中で出てきたストーリーを信じて参加者同士でシリアスな対話を展開し、そのストーリーに従ってワークショップ後も進むように促すことである。これはワークショップ全体のテーマ設定やファシリテーションによるであろう。

 「出現する未来から学ぶ」感覚は、レゴシリアスプレイメソッドにおいては、主にお互いの作品のストーリーを共有しあった後の段階の感覚として重要になるだろう。お互いの作品を突き合わせ受け入れあったときに、そこから生じてくるメッセージを受け取りさらに展開していくのが「出現する未来から学ぶ」感覚である。
 これは、先ほどの「開かれた思考(マインド)」「開かれた心(ハート)」「開かれた意志(ウィル)」の条件を整えた上で、作品のランドスケープやシステムの構築などまで進めると生じやすくなると考えられる(詳細についてはこのシリーズのNoteを書いていく中で明らかにしていきたい)。 

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