今回取り上げるのは「統合〜自律(Integrated~Autonomy)」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。
リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はまず、こちらのNoteを読んでいただければと思います。
この方法で何ができるか?
全体が掲げる原則に従うのか、個別の判断にまかせるのかということは、組織にとって永遠の課題といっていいものである。この「統合〜自律」はその課題に向き合うLSであるといえる。それはこのLSで使う次のワークシートに表れている。
このワークシートのうち、「B.もっと両方とも進める」の実現を狙っていくのである。
5つの構造要素
個を全体に従わせる「標準化」とそれぞれの個に合わせる「個別化」の両方について検討し、その両立状態を探っていくという流れはわかりやすい。
文中に繰り返し出てくる「1-2-4-All」はLSの一つである。それについては以下のNoteにまとめている。
実施にあたっての追記事項
ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。
革新的な「戦略」の開発に関わるという点に目がいく。「標準化」と「個別化」の両方を追求する先に、新しい行動や有力なアイデアがあるということだ。
「標準化」と「個別化」の両方を同時に満たすというシンプルな着地点であるが、そこに辿り着くように気持ちを集中させるのが難しい。そこで重要になるのが「問いかけの言葉」である。最初の例にあるような言葉を紡げるように、進行役にも熟練が必要そうだ。
最初の項目で扱われている「最小スペック」もLSのひとつである。その進め方については以下のNoteにまとめているので参考にしてほしい。
全体の力と個の力の両方を活かすことが求められる職場、例えば医療のように専門性がある人々が集まってチームで成果を出さねばならないような環境下では特に力を発揮しそうである。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係
全体と個を両者を尊重し、良いところが出るように結びつけることは、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドのワークショップをするときにもしばしば目標になる。
そのためのワークのシナリオの雛形としては、主に2つのアプローチが考えられる。
(A)組織や集団全体のもっている「強み」や「特質」を含む組織のアイデンティティを表現したモデルを作る。続けて、個々人の持っている「強み」や「特質」を含む個人のアイデンティティ・モデルを作る。2つのモデルの間に「両者を同時に発揮させる取り組み」のモデルを作って配置する(関係性を明確化するためにつながりの表現も加えるとなお良いだろう)。
このアプローチはこの「統合〜自律」のステップに近い。
(B)組織や集団全体の持っている「強み」や「特質」を含む組織のアイデンティティモデルを作る。周囲に影響要因のモデルを置き、その関係性をモデルで表現する。その上で、組織や集団が影響を受ける大きな出来事を想定し、そのときに個人がどう反応し行動するかをシミュレートする。その後に「個を活かしながら全体の良さを発揮するための原則」のモデルを作る。
このアプローチは、リアルタイム・ストラテジーと呼ばれるシナリオに沿っていくものであり、「個を活かしながら全体の良さを発揮するための原則」のモデルは「シンプルな行動原則(simple guiding principle)」とも呼ばれる。
この場合には、さまざまな局面を想定した上で、個と全体を同時に活かす方法を見つけるので結論とする原則がより頑強なものになっている。さまざまな局面を考えていくのでそれだけ時間はかかるが、結論をどれだけ良いものにしたいかによって採用するかどうかの判断は変わるだろう。