連載「菌活ボーイがゆく」③秘技「コーディネート」
旺盛な発酵で、こうじ世界が生み出した炭酸ガス。
「シャンパンがつくれるかも」
ボトルをグラスのようにくるくる…と、のんきに回している場合ではなかった。
いまや中身は凶暴な独裁国家「菌王朝」になっていた。
連日、我が物顔でキャップ弾を発射。
僕は床にはいつくばり、捜索を続ける暮らしを強いられていた。
「ボトルにこうじを入れすぎにゃんだよ」
さっちー師匠はあきれ顔。
でも、今さらどうにも止まらない。
とにかく。ガス抜きできれば、元の穏やかな国に戻ってくれるはず。
そう信じて、キャップをかぶせるだけにした日もあった。
いっそフタ本体をゆるめてみたら、と試した日もあった。
それでも、キャップ弾は発射され、フタの隙間から醬油こうじが垂れ落ちた。
台所は空前の危機だった。
絶望しかけた僕の前で、純白の光が瞬いた。
そよ風に揺れるティッシュだった。
キャップはかぶせるだけで菌の呼吸をラクにして、
上からティッシュで軽く覆って、首の部分を輪ゴムでとめてみたら…。
おしゃれマントでボトルが変身。
「こ~でね~と!」
師匠!
キジトラ流菌道の名誉は守られました。
喜びはつかの間。
まさか、さらなる惨事の引き金になるなんて。
翌朝の光景は、今でもありありと思い出せる。
(続く)