連載「菌活ボーイがゆく」⑰思い出酒
どぶろくを口に含んでいると、Yさんのことを思い出した。
昔、僕らは毎晩一緒に酒を飲んでいた。
Yさんが経営する居酒屋で晩酌し、それから別の店に繰り出す。
20歳以上も年が離れていたが、僕らはずいぶん気が合った。
女性にまつわる武勇伝もたくさん聞いた。
例えば、付き合いたい女性に、「好きに使っていいよ」とプラチナカードを手渡す。
相手の反応が肝心なのだ。
「1晩で300万円使った女がいたなぁ」と笑っていた。
「男の懐具合を心配してくれるのがいい女」とも。
さんざん遊んで、4年前に病気で亡くなった。
キジトラ新発売のどぶろくを、Yさんにも飲ませてみたくなった。
「栄養価が高く、お肌もつるつるに」
さっちー師匠に教わった「効能」を話したら、どんな反応をするだろう。
「わしも男前になって、女にもてるかな」
目をキラキラさせて、ほがらかに笑いそうだ。
それから僕の肩を抱いて、微笑むだろう。
「うまい酒が飲める。それで十分」
(続く)