NZ life|数をかぞえて
ニュージーランド生活49日目。
天気くもり。気温20度。じめっとしているのに、時折カラッとした空気が吹く。
あっという間の木曜日。木曜日は朝からソワソワする。なぜなら明日が休みだから。絶対に休みを楽しんでやる、という強い気持ちで仕事を終わらせる。
だらだら残業してお金を稼ぐより、シャキッと帰って「完全なる休み」をいち早く手に入れ「完全なる私」になるのだ。
明日でニュージーランドに来て50日が経つらしい。
微妙な区切りだけど、キリのいい数字で節目かもしれない。何かお祝いをしなければいけない。何をしよう。フラットホワイトのミルクを、ソイミルクに変更しようかしら。
さらに明日で、今年も残すところあと3日になるらしい。
早いような遅いような。よく「年を重ねると1年があっという間に過ぎる」とは言うけれど、私はまだ実感していないので、案外若いのかもしれない。
去年の今頃は何をしていたっけと日記を広げると、いちねん前のちょうど今日、5年日記をつけ始めたらしい。
ようやく1周したことがうれしいので、やはり明日はお祝いをしなければ。フラットホワイトだけでなく、お昼ご飯にベーグルも買ってしまおう。
ちなみに去年の今頃に書かれていることは、とても昔に起こった出来事のように感じて、この1年で私は随分と遠くまで来てしまったみたいだ。
さらにさらに明日で、ここの生活も残すところ13日となるらしい。
年が明けたらもっと南へ行って、新しい生活を始める。慣れ親しんだとは言えないけれど、人々の暮らしを覗かせてもらって、愛着のようなものは湧いた。
行きつけ(と言っていいのか分からないけれど)のカフェだってできたし、スーパーのレジのお姉さんの名前も覚えた。オレンジジュースがいつもより安くなっているのにも気づけるし、フライドポテトの味付けがいつもより濃いのにも気づける。
あと13日しかフラットホワイトの神様にも会えないし、あと13日しか味付けの濃いフライドポテトも食べられない。取り憑かれたように食べてしまう悪魔のクッキーも、めまいがするほど美味しいラザニアも、もう食べられないのだ。
そう思うと、少し寂しい。
あと13日。裏切りの数字を数えているみたいな気持ちを抱えていると、コーヒーが飲みたくなった。神様のカフェに行こうか、それともやはり裏切り者は裏切り者らしく、別のカフェに。
いろんな数を数えている。
ニュージーランドで使ったお金の数、クッキーの残りの数、これから必要になるお金の数、日本との間にある時間の数、返せていないLINEの数、noteのスキの数、スキの数よりずっともっと多い閲覧の数、日本に帰ったらすぐに会いたいひとの数、もう二度と会わないだろうひとの数。
毎日を過ごす中で、漠然とした不安に襲われることもあった。
けれども2ヶ月後の航空券を見て「740ドルあればいつでも帰れる」と思ったら、気が楽になった。740という数は、私をつよくするのに必要な数。
もし仕事が見つからなくても(ニュージーランドは恐ろしいほどに就職難!)せっかく来たのだし、思いきり楽しんじゃった方がいいよね、と能天気な私がささやく。
見たことのない大自然に飛び込んでみたい。信じられないほどうつくしい山を見て、湖を見て、星空を見て、海を見て、鳥を見て、花を見て、私の知らない地球を感じたい。
日本では見られない星を数えたり、どこまでも続くひつじの群れを数えたり、そういうことがしたい。
なんてったって、私は自由なのだから。どこにでも行けるし、何にでもなれる。なんだって数えていいし、数えたくないものは、数えなくてもいい。
やりたいことを、ひとつずつ数えていく。増えたり減ったりする数。この数が、いまの私をつよくするのに必要な数。