すべてにムカつく大学時代のわたくし。
大学時代は桜を見ても腹を立てるような男だった。
なにも考えずに大学に入学してしまった私は、そもそも大学のシステムをよく理解していなかった。
単位制度、テスト、出席、レポート、必修、一般教養。なにそれ意味がわからない。部活にもサークルにも入らず孤高を気取っていたわけで、入学した大学で何が学べるのかマジで理解していなかった。とてももったいない期間だったと反省している。
私が入学した小樽の大学は学部が商学部のみで、ウワサでは国内唯一の国立商科系の単科大学であるらしい。だからどうしたという話だ。ムカつくわ。あと学科名にもムカついていた。
商学科、経済学科、社会情報学科、企業法学科の4つ。すべての学科の名前が曖昧すぎる。もっとこう「英国文学学科」みたいなわかりやすい、あ、きっとシェイクスピアを研究する気取った学科なんだろうな、みたいな具体性がほしかった。
だから周りの生徒にも常にムカついていた。
なんの疑問も持たず、レポート、宿題、出席、テスト、過去問、単位、なんなら就活。仲間と結束してこの国の大学制度をいかにして攻略するかに精を出す。なんでその状況を受け入れているんだ。あぁうらやましい。うらやましいうらやましいうらやましい。
私も過去問がほしかったし、必修科目と一般科目の違いを知りたかったし、単位が取れなかったらどうなるか教えてほしかったよ。部活かサークルに入ればすべて解決するんだけど、私はムリだった。
そんなわけだから、1年生の後期から大学にはほとんど通わなくなる。授業は興味のあるものだけを受け、ときに忍び込み、ときに他人のふりをし、とにかく適当に、ひとりで、悲しく授業を受ける。しかし全く理解ができない。興味もない。
1年生の前半の講義で「小樽学」という授業があった。小樽の歴史について我が大学の沿革と絡めながら歴史を理解する授業。
何回かフィールドワークみたいなものがあり、実際に小樽を見てまわることもあったらしいが、私は他人と関わるのが嫌でイヤで、申し訳ないけど行かなかった。
33歳の今、マジで思うんだけど、この授業、クソ楽しそうだ。今なら喜んで受けたいし、喜んで見知らぬ他人と小樽に繰り出したい。誰よりも楽しめる自信がある。
この小樽学の授業、テストはなく、最終的にレポートで判断されるものだった。教授が過去に出版した小樽の歴史に関する本を読み、それについての読書感想文をレポートとしてまとめるクソスタイルだ。
何度も言うが、いまなら誰よりも詳細に、特A的な評価を受けられるようなレポートを提出できる自信がある。
ところが18歳当時の私は、このレポート課題にとにかく辛辣な内容を書いて提出した。
たとえば「もはや衰退の一途をたどる小樽の歴史と今を見たところで私の人生に変化はない」とか「そもそも本を買わなければレポートを書けないという講義システムに欠陥がある」だとか、失礼千万、世が世ならムチ打ち、斬首刑になるようなナメ腐ったことを書いた。
レポートはレポートの体裁をとっておらず、ただ私の文句が書かれたものだったが、教授から戻ってきたレポートを見てみると赤ペンで「内容として不適当」とだけ書かれており、小樽学の単位取得はできなかった。もちろんムカついた。
すべて自分が悪いはずなのに、教授にムカついて、毎日なにかにムカついていて、自分にもムカついて、ただ臆病なだけで、行動を起こすこともせず、結局大学には7年通って途中で追い出されることになるけど、7年ずっとムカついていた。
だから小樽で桜を見るたび悲しかった。
いまは。
ぜんぜんムカつかない。
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