鯨がいる街のインフォメーション。
北海道の南、札幌から車で約2時間いったところに室蘭という街がある。人口は7、8万人くらいで「鉄の街」として知られる。
古くから日本製鉄や新日鐵だとかの鉄鋼系大企業が進出していて、室蘭はそれはもう巨大な、東京ドーム何個分とかでは形容できないような鉄の工場がたくさんあって。
街の作りは城下町のようでもある。本物のお城はないんだけど、巨大工場を中心にして街が形成されている姿はまるで城下町だ。
いま書いたとおり、この街は「鉄の街」だから、北海道ではそれ以上でもそれ以下でもなく、観光客がくることも少ない。海外からのお客さんも少ない。個人的にはこれはもったいないと思っている。
室蘭はいい街だ。
まず、地形がいい。湾が入り組んでいて、三方を山に囲まれている。山と海があるから平地部は少なく坂が多い。コンパクトな神戸、小樽、長崎のようである。
室蘭は北海道の南、太平洋に面している。室蘭の南端にある「地球岬」に行くと、広大な太平洋を見ることができる。そしてここには鯨がいる。
先日、仕事で室蘭に行った。
久しぶりの室蘭。
室蘭は基本的に天気がいい。夏は涼しく青空が広がっていることが多い。しかも冬は北海道なのに雪が少ない。少ないというか「ない」と言ってもいい。
車を30分走らせれば登別温泉がある。さらに車を1時間走らせれば、あのニセコがある。ウィンタースポーツもできる。
さらに近くにゴルフ場が3つある。
海に行くとサーフィンのメッカと呼ばれる白い浜があり、ここの波を求め全国からサーファーがやってくる。
夜になると工場夜景が広がる。海と山、街のきらめきと工場の光、自然と人のコントラスト。
海側に行くと地形の変化が見られる。地層の成り立ちがよくわかる金屏風・銀屏風の断崖絶壁。
港町だから魚介類も豊富。近くでは酪農も盛ん。
地球岬では地球ってマジで丸いんだなと思える極論360度のパノラマビューが広がり、運が良ければ鯨が見られる。なんならホエールウォッチングツアーでは2回に1回の確率で鯨に遭遇できる。
「なのに移住者が増えないんですよねぇ」
室蘭の関係者が苦笑しながらコーヒーを飲んで私に言う。いま書いた通りの魅力があるのに、よほどPRが苦手なのか、この街の魅力は伝わっていないらしい。
「イケメンで性格もいいのに部屋にひきこもってるんですかね、室蘭は」
こう言うと関係者はさらに苦笑していた。
これからの30年はこういう街で暮らすのがスタンダードになると予想されている。しがらみさえないのなら、私も室蘭で暮らしたいくらいだ。
「鯨ねぇ、いいねぇ」
室蘭からの帰り道、街には鯨のモニュメントがいくつもあった。
日本全国にはこういう知られざる街がたくさんあるんだろうな。なにより、こういう街で暮らしいている人たちは、その魅力に気づいてもいないんだろうな。
それはそれでいいんだよなぁ。
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