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情緒不安定な恋愛は悪なのか?

恋人といると情緒が不安定になる人がいる。

さめざめと泣いて恋人を困らせる人たち。中山美穂の名曲『ただ泣きたくなるの』の歌詞に出てくるような。

それは悪いことではなく「いいことだ」と主張する記事にしたい。

この記事は、今まさに恋人がいて、情緒が安定しない人に読んでほしいし、パートナーが情緒不安定で悩んでる、みたいな方にも読んでほしい。すでに恋の螺旋を降りている方は「そんなこともあったな」と過去を思い出しながら読んでほしい。



むかし。

恋人と部屋で2人、ニコニコと旅行の計画を立てる。今度行く旅行はニセコに行こう、そこでピザを食べよう、天気のいい草原にレジャーシートも敷かないで。2人で行ったら雨なんて降らないからきっとどこまでも行けるよ。

そうやって話していたら、彼女が突然ほろほろと泣き出したから「え、どうしたの?」と聞く。

彼女は「幸せすぎて泣けてきた」と言う。

どういうことだ? と困惑しながら、もしかすると自分が悪いことでも言ったのかと不安なので「で、でもどうして泣いてるの?」と聞く。

すると彼女は、

「ダーキ君、幸せすぎても涙が出ることはあるんだよ」と言う。

情緒、安定してないですねぇ〜。



仕事終わりの夜、家にいると突然彼女が合鍵でガチャガチャとやってきた。部屋に入ってきた彼女はパーカーのフードをかぶって顔を隠している。

「どうしたの?」と聞きながら、フードを外してあげると、ジョーカーのような、ピエロのようなメイクをしてニコニコしている。ハロウィンでもなんでもない日に。

ええっ!? と思って「そ、そんなメイクしてここまで来たの?」と聞くと「うん! バスで来た!」とニコニコしている。

なぜそんなメイクをして私に会いに来たのか、なぜニコニコできるのか、その理由が全くわからない、と思って「どうして!?」と聞くと、

「ダーキ君、最近私に興味がないから」

と、一転して泣きながら言う。「興味を惹こうと思ったってこと?」と聞くと、コクンとうなずくだけ。

ああ、そうか。

私は当時社会人になりたてで、ずっと仕事仕事の毎日。一方の彼女はまだ大学生。そっかそっかと言って、ごめんねと抱きしめる。

情緒、安定してないですねぇ〜。


情緒が安定してない、ってそれだけ愛してるってことだよな。それだけ感情が振り子のように揺れ動いてて、いい時と悪い時の幅がでかいってことの裏返し。


情緒がやけに安定している恋人もいた。山のような海のような、林のような育ちの良さ。もちろん、時に安定しない雷のような日もあったにはあったけど、比較的落ち着いた、トゥモローランドのような人。


が、張り合いがないというか。

過去の記憶をどれだけ辿って棚から思い出を引っ張ってみても、情緒が安定していた恋人をつぶさに思い出すことができない。

いつも思い出すのは情緒が不安定だった恋愛で。


中学のころ、中山美穂の『ただ泣きたくなるの』を初めて聴いた。なぜ泣きたくなるのか意味がわからなかった。なぜ「あなたの部屋の前に座り込んだら恋の入口」を感じるのかわからない。

でも、男でもこの曲が理解できるときがやってくる。情緒不安定ソングと一蹴しなくなる。


あのころ恋人と2人で話していたのは「この恋もいつか思い出になるなんて嫌だよね。ずっと一緒にいようね」というベタなやつだったんだけど、そういうクサいことが言い合える恋人にはなかなか巡り会えない。


本当に思い出になっちゃったなぁ。


〈あとがき〉
時代の流れというか、コスパ、タイパの流れは恋愛においてはどうなってるんでしょうか。きっとそこだけは過去も現代も変わらず、とても効率の悪い、感情に支配されたままのものであろうと思います。とても人間的な営みなのでずっと変わらないでほしいです。今日も最後までありがとうございました。

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