義理の距離感。
妹の家に遊びにいくと、小さな姪っ子と甥っ子がどこからともなく私のもとに飛んできて大騒ぎになる。
「ダーキ兄ちゃんがきた!」×10。
あいつらはうるさいけど、お互いに好きだからとりあえず話し相手になったり遊び相手になったり。
私は子どもがそれほど好きではない。
でもあいつらの場合は別枠。きっと私の妹の子どもだから、血のつながりみたいなものを感じてしまっているのだと思われる。
「ダーキ兄ちゃん、何しにきたの?」「ダーキ兄ちゃん、仮面ライダー」「ダーキ兄ちゃん、キモい」「ダーキ兄ちゃん、これ食べる?」
こいつらは私よりも20数年以上後輩にあたるが、どんなものの言われ方をされても、空のような寛大な心で対応できる。
というか私は、幼い姪っ子と甥っ子の言葉遣いを「おい、なってないぞ」と指導するような男でもない。要するに一切気を遣わないわけだ。
ところがどうだろう。
これが「義理」の関係になると様相が変わってくる。たとえ親せきであろうが、義理の関係になると対応に困るのだ。
小さなころを思い出してみると、私のひいおばあちゃんの長男にアキヒコおじちゃん(仮名)という人がいた。この人はつまり、私のおばあちゃんの兄妹にあたる。なので私と血のつながりがある。
「アキヒコおじちゃん、アキヒコおじちゃん」と小さな私はピコピコ言っていた。
が、アキヒコおじさんの奥さん、こっちは謎だ。
たたでさえ遠いアキヒコおじちゃん。その人の横にいつもいる謎の女性。正直言うと名前も知らない。会話をしたことがあるような気もするが「あ、こんちは〜」くらいのもの。一切の血のつながりがないんだもん。
なんともいえない義理の距離感だ。
それから、私には大好きなおじさんである、マー君がいる。マー君は私の母の弟なので、血のつながりがある。
私たちが小さなころからマー君は遊んでくれたわけだから、今でも会うと「ねぇ、マー君、最近何してんの?」と言える。マー君はもうすぐ50歳になるが「そりゃダーキお前、俺は最近ゴルフだよ」とヘラヘラ言ってくれる。
マー君の奥さんはミキさん(仮名)だ。
マー君とミキさんが結婚したとき、ミキさんは私の人生にいきなり現れた赤の他人だったので、敬語を使った。
「あ、ミキさん、こんちは」「え、あ、ミキさん、そうなんですね」「あ、ミキさん、お茶どうぞ」「え、あ、ミキさん、あけましておめでとうございます」
こう言うとミキさんは私に「うん、ありがとう」「あ、ダーキくん、お茶ありがとね」みたいな感じでタメ口で、幼心に「この人はやけにタメ口だなぁ」と思っていたんだけど、きっと、ミキさんもミキさんで、どう会話すればいいのか手探りだったはずでござい。
今でこそミキさんとは「あ、ミキさん、今日マー君は?」とか「あれ? ミキさん最近どう?」と言えるような間柄になっている。
気を遣い、気を遣われ。
そんな私にも、義理の姪っ子がいる。
妻の姉の子でたしか12歳とかになる。
妻の姉一家は海外に住んでいるのだが、年に数回、札幌に帰ってきて2週間ほど滞在する。その際には必ず会うことになる。となると、妻の家族みんなで集まるわけだから、今度は私がよそ者になるわけだ。
私だけが血のつながりがないグループになる。
こうなると非常に難しい。アキヒコおじさんの奥様の気持ちがわかるし、マー君の奥さんのミキさんの気持ちもよくわかる。
義理の両親、義理の姉は大人であるから、なんとも言えない居心地の良さ8割、気遣い2割の空気感。では義理の姪っ子にどう接すればよいだろうか。
ここは臆せずいこう。私が取った戦略は「ガンガン詰めちゃおう」であった。
数年前に初めて義理の姪っ子に会ったときは、普通に会話をするよう心がけた。海外に住んではいるが日本語もペラペラだから普通に話せる。
「日本のアニメは見るの?」「ヒロアカ見る」「ヒロアカ見るんだ。誰が好きなの?」「かっちゃんが好き」「あーいいよね、かっちゃん」とか。
「なにわ男子はやっぱ道枝くんだよな」「そうそう道枝くん。でも最近微妙」「え、なにが微妙なの?」とか。
よしよし。うまくいっているような。
いや、そうでもないような。
自己満足的であるような。それこそ私が小さなときに義理の奥さんシリーズの人たちに感じていた違和感を、いまこのとき姪っ子は感じているんだろうなぁと思いながら。
まあでも、いい感じの距離感。
詰めちゃえ詰めちゃえ。
以前、妻家族とみんなで一緒に買い物にいったとき、義理の姪っ子が手に持っている商品を「あ、それこのカゴに入れておくよ」と言って受け取ったことがあった。
仲良くなったなぁと悦に浸っていた私に、義理の姪っ子はなんと言ったか。
「あ、ありがとうございます。すみません」
義理の親せきとの距離感ってマジ謎だよね。
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