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好きな電話の第一声。
「電話」の話がしたい。
26歳のときにいた会社は本社が横浜で、北海道支社と関西支社があった。私は北海道支社の立ち上げに参画したのだけど、毎月1回、出張で横浜本社にいっていた。
北海道支社は人数が5人くらいで、私と同年代はいなかった。代わりにいたのは、36歳の女性上司のパワ原さん(仮名)で、いわゆるマイクロマネジメントをしてくる系の上司。
胃に穴が開くんじゃないかと思うほどに面倒な上司だったが、仕事のイロハはパワ原さんから教わった。
横浜本社にいくとたくさんの人がいて、私と同年代か私よりも若い年代のスタッフもいた。なので、月に1度の出張で横浜にいくと、みんなと「イェイ」と言いながら交流をしたり、仕事の話をしたりで毎度楽しかった。横浜本社の人たちの間でもパワ原さんの厚かましさぶりは周知の事実で、
「イトーさんはよくパワ原さんとうまくやってるよね」
という話題が出張時の酒の肴であった。
当時の私の仕事は営業職であったのだけど、webマーケティングの仕事でもあった。webページ作成や広告運用をともなう仕事。私は顧客とのコミュニケーションや企画提案をおこなう。なのでサイト作成と広告運用は私ではなく、横浜本社のだれかと連携しながら進めた。
いつも私の案件の広告運用を担当してくれる女性がいた。名前はアドさん(仮名)。
当時の私は26歳だったがアドさんは23歳で、新卒2年目だった。アドさんは若いのだが、私は中途入社だったからアドさんのほうが私よりも先輩にあたる。しょっちゅう仕事の電話をしたものである。アドさんの身長はたしか146センチとめちゃくちゃ小さかった。
「あの案件の配信スタートは……」「あの広告はTwitterでも配信したほうがいいと思う」「CPAの最適化は〜」「CTAをもっと目立つ色にしてほしい」なんて、意味のわからないことを話すわけ。
アドさんはとても真面目で、私がやりたいこと+アルファの提案をしてくれる。報連相もきちんとしてくれるタイプだから、しばらくすると阿吽の呼吸だ。
...
私の上司のパワ原さんは、何が楽しいのか、しょっちゅう横浜本社に出張していた。まるで札幌から逃げるかのように横浜に戻っていく。
一体全体なにを本社で話しているんだろうと疑問で、そんなことをしているヒマがあるならとっとと電話でもかけて1社でも多く商談してほしいと思っていたが、今思うと私が間違っている。パワ原さんは管理職なのだから、現場にでるべきではない。
とにかく、何がいいたいかというと、パワ原さんはしょっちゅう横浜本社にいっていた。
あの人は本社にいくと、どの席に座るのかランダムなので、もしかするとアドさんのとなりに座ることもあるかもしれない。だから、私が札幌から横浜本社に電話をして、アドさんと広告運用についての話をしているのを聞いたパワ原さんが「あ、アドさんはイトーさんと電話をしているな。どんな広告にするんだろう」みたいな感じで余計な口出しをされるのがダルかった。とにかくダルいんだ。
そこで私はある手法を編み出す。アドさんとの電話の第一声でパワ原さんが近くにいるかいないかを確認する方法。いつも電話をかけてアドさんと話すときは、以下の流れだった。
(プルルルル…….)「ガチャ、はい、アドです」「あ、アドさんですか、イトーです」「おつかれさまです」「おつかれさまです」「『はい』か『いいえ』で答えてほしいんですけど……パワ原さんは近くにいますか?」「……はい笑」「なるほど、では手短にいきます」
このような具合である。
はいかいいえで答えてもらう。必要最低限の応酬で、ほしい情報を特定できるムダのないシークエンス。これを何度かやっていると、やがてアドさんは電話に出てすぐ「イトーさん、今日はいません」とか「イトーさん『はい』です」と答えるようになってくれた。
この「『はい』か『いいえ』で答えてください」のきっかけになる先輩がいるのだけど、その先輩とのやりとりのほうが私にとっては愉快。
かつ、この話は文章だと伝わり切らない気がする。
いつか音声配信を再開したときに話せたら、私はヘラヘラと笑いながら話すことと思う。
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<あとがき>
「はい」か「いいえ」で答えてくださいって、なんかおもしろいんですよね。言われたほうはなんか笑いながら従いたくなっちゃうというか。パワ原さんがとにかくダルい人、という共通認識があるからこその話です。「いいえ」と言われたときに「本当ですか? 私をハメようとしていませんか?」と聞くと「そんなわけないじゃないですか」と言っていたのを覚えています。今日も最後までありがとうございました。
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