変体仮名を読む練習~私のやり方、お見せします
こんにちは、ぱんだごろごろです。
今回は、あまり需要のなさそうなテーマなのですが、
中森学さんから、ご質問がありましたので、
それにお答えしようと思って、書くことにしました。
この記事のコメント欄での、中森学さんと私とのやり取りです。
中森 学(学さんと呼んで)
僕はこの中では
「くずし文字」に興味が湧きました。
どうやったら読めるのか・書けるのか
気になります!!
ぱんだごろごろ
くずし字に関しては、50音順に、一字につき、色々な崩し方をした文字を集めた本があって、それをたよりに、古典の原本を写真に撮ったものに、一字ずつ当てはめながら、読んでいくわけです。
今度、写真に撮って、お見せしようかな?
はい、という訳で、私のやり方なので、もっと良いやり方が、他にいくらでもあるとは思うのですが、
ぱんだはこんなふうにやっていますよ~、というお話です。
「土佐日記」
まず、こんな本があるんですね。
左側が、紀貫之の書いた「土佐日記」の影印本、
右側が、五十音順に(変体)仮名が並んでいる、「字典かな」です。
影印本「土佐日記」の中身です。
この「土佐日記」の文章を読みながら、読めない字があると、
「字典かな」を開いて、文字を探すのです。
たとえば、一行目、
上から、「よめりける」と書いてあります。
「よ」と「め」と「る」はわかりますよね。
問題は「り」です。
何で、この、「わ」みたいな字が、「り」なのか。
そこで、「字典かな」の出番です。
「り」のページを開きます。
「わ」によく似た字が、ずらりと並んでいます。
右上には、[利]という漢字。
つまり、「利」が変化して、「わ」によく似た仮名文字ができたのです。
ですから、今後、「わ」に似た字を見て、「わ」ではなかったら、
「り」と読んでみるといいのですね。
「け」は、「計」という漢字からできました。
ですから、「け」の字も、ごんべんを崩したものに、「十」を並べたような字になっていますね。
これで、「よめりける」と読めました。
もし、何としても読めない場合には、
原文と現代語訳の付いた、角川文庫版の「土佐日記」が手許にありますから、
こっそり調べます~♪
かな字典
▼「字典かな」の中身です。
これは、「な行」の「の」の項目です。
皆様ご存知の通り、
平仮名というのは、漢字からできたものです。
漢字の一部を取ったり、全体を簡単につなげたりして、
易しく書ける文字にしたわけです。
現在、私たちが使っている、ひらがなの「の」は、
[乃]という漢字からできました。
一方、[能]からできた、くずし字の「の」は、
ひと筆書きのような、
左下と右上でそれぞれ交差して丸を作っている、特徴的な字ですが、
これはしょっちゅう出てきますので、「の」だと覚えました。
応用編~和歌を読んでみましょう
手許に、ちょうどいいものがありました。
あるおせんべい屋さんの紙袋に印刷してあったものです。
一行目をみて、すぐピンときた方もいらっしゃるでしょう。
そう、これ、「宇治橋」と書いてありますよね。
そして、続く仮名は、さっき出てきたばかりの、「の」です。
つまり、「宇治橋の」と始まる和歌です。
そうです、紫式部の「源氏物語」の「宇治十帖」に出て来る和歌なんです。
「宇治十帖」とは、「源氏物語」の最後の部分、
もう、主人公の光源氏は亡くなっていて、その息子の薫と、孫の匂宮が、
宇治十帖での主役になります。
(息子とは言っても、本当は、薫は、柏木と女三宮との間に生まれた不義の子です)
さて、この和歌は、「源氏物語」51帖の「浮舟」の中にでてきます。
薫から浮舟に送ったものです。
意味は、
「宇治橋のように末長い約束(契り)は朽ちないから、不安に思って心配したりしないでください」
さあ、読んでみますよ。
▼宇治橋 能(の)
▼那(な)可(か)幾(き)
▼千(ち)支(き)利(り)八(は)
▼久(く)知(ち)世(せ)之(し)遠(を)
◇宇治橋の
◇長き
◇契りは
◇朽ちせじを
▼安(あ)也(や)不(ふ)武(む)
▼可(か)多(た)仁(に)
▼己(こ)ゝ(繰り返し記号・こ)呂(ろ)
▼佐(さ)王(わ)具(ぐ)奈(な)
◇危ぶむ
◇方に
◇心
◇騒ぐな
宇治橋の 長き 契りは 朽ちせじを 危ぶむ 方に 心 騒ぐな
宇治橋のように、末永く一緒にいましょうというあなたとの約束は、
破られることはないのだから、
私の誠意を疑ったりして、
むやみに将来を悲観したり、
心配して不安に思ったりしないでくださいよ。
(*濁点は、昔は付けませんでしたから、自分で補って読みましょう)
中森学さん、いかがでしたでしょうか。
くずし字を「書く」方は、書道の先生に習うのが手っ取り早いと思います。
学さん、これからも、心身の健康に気を配って、
お健やかにお過ごし下さいね。
今日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。
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