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奇縁堂だより 2 【本の紹介 : 戦争・平和について考える】

 8か月前の2022年2月24日にロシア・プーチン政権によるウクライナ侵攻が始まりました。この報は,私のみならず多くの人に驚きと怒りをもって迎えられたと思います。

 第二次世界大戦で,多くの国が多大な犠牲を払い,決して全世界が安寧とは言えないまでも,平和を感じることができる21世紀に至って,プーチン政権はなぜこのような暴挙を引き起こしたのか?不思議でなりません。

 10月23日の時事通信によると,ロシアはこれまでウクライナ侵攻は特別軍事作戦であり『戦争ではない』としていましたが,10月22日ロシアの大統領府第1副長官は『NATOはロシアと戦争をしている』と述べたといいます。
 また,この副長官は『ロシアはウクライナと戦争していない』として,あくまでもNATOがロシアの排除を目的に仕かけている『戦争』に対応している,つまりロシアは被害国であると訴えていたとも伝えています。

 『それでも,日本人は「戦争」を選んだ』(加藤陽子:著)によると,77年前に終結した日中戦争の端緒ともいうべき盧溝橋事件(1937年7月7日)後,またたくまに全面戦争へと拡大しますが…日本は中国との戦争を『事変は戦争ではなく報復である…』として戦争とは位置付けていませんでした。
 そして,アメリカとの開戦を経て…1945年8月15日の終戦の日を迎えることになります。詳細は省いていますが,このパターンは今のロシア・プーチン政権の現状に似ている!と思うのは私だけではないと思います。

 また,プーチン政権による部分動員令の発令に際し,ロシアでもこの戦争に関して懐疑的な意見が多く聞かれるようになりました。旧ソ連において第二次世界大戦で過酷な環境におかれ,戦後はそれに倍する苦難を味わった女性たちを克明に綴った『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ:著)を一読すれば,ウクライナにおける戦争はロシア国民の多くが望んでいないだろうと推察できます。

 そこで,今回は上述した2冊ピックアップして紹介します。

それでも,日本人は「戦争」を選んだ (加藤陽子:著) 四六判 ¥1,100(税込)
 本書は,著者(東京大学教授・専攻は日本近代史)が鎌倉市にある栄光学園で行った,日清戦争から太平洋戦争の終結までの5日間の近代史の講義を元に執筆したものです。
 明治からに太平洋戦争まで,日本人はどうして「戦争」を選んで来たのか?史実を読み解きながらこれを解説する著者の妙は,読んでいてとても腑に落ちるものでした。ウクライナでの戦争が続く現在,もう一度,戦争そのものを考えるためにも本書をお勧めいたします。
 ちなみに,著者の加藤陽子は,学術会議の会員に推薦されながら,当時の菅義偉首相によって任命を拒否されたことで改めて脚光を浴びました。

戦争は女の顔をしていない (スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ:著,三浦みどり:訳) 文庫 ¥770(税込)
 ソ連では,第二次世界大戦中に100万人を超える女性が看護婦,軍医そして兵士として従軍しました。しかし,戦後は従軍した女性は白眼視されることになり,命を賭した従軍を隠して生活するこを余儀なくされました。
 著者は500名以上の従軍女性から根気よく聞き取りを行い,本書をもって戦争の実態を明らかにしました。
 本書は完成後出版を許可されず,ペレストロイカを経てようやく2年後に出版に漕ぎ着けたということです。また,隣国のベラルーシでは,ルカシェンコ大統領が長い間本書の発行を禁止していたそうです。
 著者はウクライナ生まれ,国立ベラルーシ大学卒業後にジャーナリストの道に進む。2015年にノーベル文学賞を受賞しています。

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