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【栄養士さんに聞いてみた!~原材料編~】第1回:砂糖って子どもに悪いもの?

こんにちは。KIDS SNACK LABです。KIDS SNACK LABは、子どもの食生活のあり方について、日々研究を重ねています。本企画は、KIDS SNACK LABの研究員が、子どもに必要な栄養素について栄養士の渡辺友美子さんにお話をうかがい、子どもの健やかな食生活のヒントを得ていく連載です。第1回目は、砂糖とGI値の関係、日々の食事で意識すべきポイント、日常の食事をたのしみながらバランスよく栄養を摂る秘訣などについて、お話を聞きました。

【プロフィール】栄養士 渡辺友美子さん
栄養士として病院や社員食堂で働いた後、フリーの栄養士として食や栄養に関する情報発信を続け、インスタグラムのほか、YouTubeチャンネルも開設。週末モデルとしても活動している。
渡辺友美子さんInstagram:https://www.instagram.com/yutanpiyo/

「良い砂糖」「悪い砂糖」ってある?

――第一回目は、大人も気になる「砂糖」について、ぜひいろいろ教えてください。最近は糖質ゼロの商品もたくさん目にするようになり、「糖質は悪いもの」というイメージを持つ人が増えたように感じます。栄養学の中で、砂糖はどんな立ち位置なのでしょうか。

渡辺さん:世の中では「砂糖はよくないもの」と言われがちなんですが、実は砂糖そのものが悪いわけではないんです。脳の主なエネルギー源はブドウ糖なのですが、脳内で蓄積することができないため、何かを食べたり飲んだりすることで常に補給する必要があります。そこで、効率よく糖分を吸収できるのが砂糖なんです。

――ふむふむ。では、なぜ「砂糖はよくないもの」と言われてしまうのでしょうか。

渡辺さん:砂糖には、GI値の高いものと低いものの2種類に分類されます。GI値の高い砂糖を摂ると、血糖値が急激に上がってしまいます。一方、GI値の低い砂糖であれば、血糖値をゆるやかに上げることができます。血糖値の急激な上昇は、糖尿病や肥満の原因になるため、大人は特に「砂糖はよくないもの」というイメージを抱きやすいのかもしれませんね。

――GI値の高い砂糖、低い砂糖にはどんなものがありますか?

渡辺さん:GI値の高い砂糖は、グラニュー糖、麦芽糖、氷砂糖、上白糖、粉糖、三温糖ですね。GI値の低い砂糖は、ココナッツシュガー、はちみつ、アガベシロップ、てんさい糖、黒砂糖などが該当します。

GI値の高い砂糖を摂り続けることで、子どもの生活に起こる変化

――子どもの場合、血糖値が急激に上がることで、どのようなことが起こりますか?

渡辺さん:GI値が高い食べ物をたくさん食べてしまうと、運動機能や学習能力にも影響を及ぼしてしまいます。GI値が高い食べ物を摂取すると血糖値が急降下してしまい、それが原因で情緒不安定になってしまったり、イライラしやすくなったりと、心にも作用が……。一時的に食べるものであれば大丈夫なのですが、長期的に摂取してしまうと、これらのような症状が出る可能性が高まるので、摂り方には注意が必要ですね。

――渡辺さんご自身のなかで、「子どもの頃のあのときの不調って、甘いものや糖分の摂りすぎが原因だったかも」と思い当たる出来事はありますか?

渡辺さん:あります、あります! 高校生の頃にお弁当と一緒に菓子パンを食べたり、甘いものばかり食べていたことが原因で、ビタミンやミネラルが不足してしまい、肌もボロボロになってしまって……。心も余裕がなかったな、と思いますね。

――身体だけでなく、心にまで影響が出てくるのですね。これは個人的な疑問なのですが、子どもの頃によく「朝ごはんを食べないと頭が回らないよ!」と言われた経験から、菓子パンでもドーナツでも、食べないよりは食べた方がいいのかな、と思っていました。実際に朝食を菓子パンやドーナツで済ませるのはどうなのでしょうか。

渡辺さん:朝食を菓子パンやドーナツのみで済ませた場合、いっときだけは調子がいいと感じるかもしれません。ですが、これらの食べ物は急激に血糖値が上がりやすい分、下がるのも早いので、午前中の集中力が低くなったり、またすぐに空腹感がやってきてイライラしたりする原因にもなるかもしれません。先ほどGI値の低い砂糖をご紹介しましたが、実は「食べ方」でも血糖値の上昇をゆるやかにすることができるんです。

――食べ方、ですか。

渡辺さん:ご家庭によっては、ご両親が共働きで朝ごはんを準備する時間があまりなかったり、朝はお子さんの食欲がなく、食べてくれるものが限られてしまう、といったケースもあるかと思います。そういったときには、サラダやスープ、ヨーグルトなどを用意し、菓子パンの前にサラダやスープを食べるだけでも、血糖値の上昇の仕方がぐっと変わります!

――スープだけでも変わりますか?

渡辺さん:スープがあるだけでも、全然違います! 1からすべての品数を毎日作るのは大変なので、市販のものをうまく取り入れながら、食べる順番を意識していけるといいですね。

「お菓子= 身体に悪いもの」 ではない。

――普段の食事では食べ方に気をつければいい、ということまでわかりましたが、砂糖の摂り方でもうひとつ気になるのが、お菓子の食べ方についてです。市販のお菓子だと砂糖がたくさん使われているお菓子が多いのでは? という懸念がありますが、どんなものを選べばよいでしょうか。

渡辺さん:市販のお菓子であれば、できるだけ素材そのままで、砂糖や油があまり使われていないものを選ぶのがおすすめですね! 野菜チップスや、アーモンドフィッシュ、干し芋なんかはスーパーでも手に入りやすいのかなと思います。もし、どうしても甘いものが食べたくなったときは、自分で蒸しパンとかパウンドケーキを手作りするのがいいですね。そのときに白砂糖ではなく、ココナッツシュガーやはちみつのようなGI値の低い砂糖を使うと、さらに良いです。

――自然のものでも、たとえば干し芋だったら糖分が含まれているので、食べ過ぎはよくないですよね。

渡辺さん:そうですね、何においても摂り過ぎは禁物です(笑)。でも、一日に食べる量を決めておけば、お菓子を食べること自体は何も悪いことではないですよ! 

――お菓子が悪いのではなく、その食べ方次第ということですね。

渡辺さん:そうです! 体調によっては三食きちんと食べられないお子さんもいると思うので、そういった場合には、おやつでエネルギーや栄養素を補給する、という方法もありますし。食事は日々の暮らしの割合を大きく占める部分なので、肩肘はらずに、できることから少しずつ取り入れてみてくださいね。

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漠然と「糖分の摂りすぎはよくない」と感じていましたが、砂糖そのものは、脳のエネルギーをつくるのに大事な栄養素だということがわかりました。血糖値をゆるやかに上げてくれるGI値の低い砂糖を手にとってみたり、主食の前にサラダやスープを食べるようにすることで、1日を通じて元気に過ごすことができそうです。

次回のテーマは、不足しがちな栄養素である「鉄分」。鉄分不足によって子どもの身体に起こる変化、鉄分を日常的に摂る方法などについて、引き続き栄養士の渡辺友美子さんに教えていただきます。



取材・文=ひらいめぐみ 編集=KIDS SNACK LAB編集部

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