KIDS SNACK LABのお菓子はどうやって作ってる? 開発担当のTETOTETOさんにお話をお聞きしました
KIDS SNACK LABのお菓子は、暮らしの感度を高めるクリエイティブプロダクション〈TETOTETO〉として普段活躍している、井上豪希さん、桃子さん、丸山さんの3人に開発を担当していただいています。
今回は開発担当者であるTETOTETOさんに、これまでの活動内容や、KIDS SNACK LABとの出会い、お菓子開発の進め方などについて、KIDS SNACK LAB代表の古谷、取締役の関とともに、お話をお聞きしました。
TETOTETOは「最適解」ではなく、「わくわくするソリューション」を提案するブランディングチーム
――まず、TETOTETOさんがどんなことをされている会社なのか教えてください。
豪希さん:一言で言えば「食のお困りごとがあればなんでも相談に乗りますよ」という会社かな。大事にしているのは、最適解というよりも、わくわくするソリューションを提案すること。「売るため」とか「お金を生み出すため」の手法ではなく、「わくわくする方法」を考えて、一緒にブランドを作っています。TETOTETOのスタッフとしては僕、桃ちゃん、まるちゃんの3人だけど、一緒にかかわってくれている人も裏側にたくさんいて、プロジェクトごとにチームを結成していますね。
――どのような経緯で今のご活動がはじまったのでしょうか。
桃子さん:はじまりは、夫婦の共通の趣味であるホームパーティーを開催するようになったことからですね。わたしは企画やおもてなしがすごく好きで、豪希さんは料理をするのが好きだったので、二人でできることは何かな、と思ったらホームパーティーがぴったりだな、と。やり始めたときはまだ二人とも会社員だったんですが、休日と平日の夜を使って開催していたらたのしくなっちゃって、気づけば年間100回くらいやってました(笑)。
――年間100回!(笑)どうやって参加する方を集められたんでしょうか。
桃子さん:わたしたちが招くというよりは、参加したい人が1組6人から予約してもらうスタイルで、「一人だけ知っていれば、他の人たちは知らない人でも大丈夫」という条件にしていました。そうすると知らない方がどんどん参加してくれる場になっていって。
桃子さん:わたしたちも料理を提供するだけでなく、作ったら同じテーブルでごはんを食べるようにしていたので、その場で悩みごとや困っていることについて相談に乗ることがよくあったんですね。そのときに豪希さんがアイデアを出したり、一緒にできたらいいね、と盛り上がり、どんどんプロジェクトが立ち上がっていったんです。ホームパーティーを通じてカメラマンやデザイナーとの出会いもあり、ひとつのチームができあがってきていたので、これを仕事にしたいね、ということになり、二人とも会社を辞めて「TETOTETO」を作りました。
――ホームパーティーから徐々にプロジェクトが立ち上がっていったのですね。丸山さんはどのようにしてTETOTETOさんにジョインされたのでしょうか?
丸山さん:もともと料理や食にまつわることが好きで、農学部だった学生時代には自主的に農家さんへ訪問したりもしていました。仕事でも食に携われたらいいな、と考えていたんですが、そのときは大手の食品メーカーに就職するイメージがわかず、それ以外の選択肢もなかなか見つけられなくて。だったらまったく違う業界を経験してみよう、と一社目はコクヨに就職し、企画職をしていました。
丸山さん:次第に「やっぱり食にかかわる仕事がしたいな」という気持ちが芽生え、飲食店の経験をしてみたのですが、長時間かつ深夜の勤務が身体に合わず……。それで一度、別の業界の企業での広報に転職したものの、やっぱり食への思いを諦められなかったんです。そんなときにふとTwitterでTETOTETOのことを知り、縁あってここで働かせてもらうようになりました。
――食にかかわる仕事となると、メーカーで働くか、飲食店で働くことのどちらかしか選択肢がないと思う方は少なくないんじゃないかなと思います。
丸山さん:そうですね。わたしも就活時代は特に、ブランディングを通じて食にかかわるお仕事ができるとは想像もしていませんでした。ただ、これまでいた会社での経験があったことで、今のお仕事につながっていることも多いんです。なので、違う業界の仕事も含めて、いろいろやってみてよかったなと思っていますね。
KIDS SNACK LABとの出会い
――KIDS SNACK LABとはどのようなご縁でご一緒してくださることになったのでしょうか。
豪希さん:久留米にある「古蓮」という老舗のアイスクリーム屋さんがあるんですが、新しいブランドを作りたいとご相談を受けて、アイスクリームでアートをすることをコンセプトに掲げた「SCREAM ICECREAM」というブランドを作ったんです。そこの代表二人からの紹介ですね。
――最初に子ども向けのお菓子のご相談があったときは率直にどう思いましたか?
豪希さん:実はずっとお菓子を作っている会社で働いていたので、子ども向けのお菓子のOEMをやりたいって聞いたときには、僕だったら結構力になれるかな、と。
桃子さん:特にまるちゃんが興味を持っていて、ぜひやりたいですと言ってくれていたよね。
丸山さん:子どもにかかわることがしたかったのと、同級生や妹が子育てをし始めて、親としての悩みを聞く機会が増えてきたので、そういった身近な人たちの何か助けになるようなことができたらいいなと思っていました。
――そうなんですね。具体的にはどんなお悩みを聞いていましたか?
丸山さん:子どもが泣いているときに、お菓子をあげたら泣き止むのはわかってるけれど、コンビニのものはあげたくない、とか。そのことで「自分のためにお菓子をあげてるんじゃないか」という罪悪感がある、とも言っていましたね。
――たしかにそれは切実なお悩みですね……TETOTETOとしてお菓子のブランディングにかかわることについてはどのようなお気持ちでしたか?
豪希さん:これはTETOTETOとして、というよりは僕の個人的な話になるんですが、KIDS SNACK LABからの相談を受ける前は、ちょうど料理人としてのポジションを考えるようになっていたんです。自分の店を持ってたら後続を育てるとか、未来の料理人を育てることができるけど、僕の場合はそれができないから、どうすれば料理人として貢献できるだろう、と。そこで、食育を通じてなら「こういう働き方を実現している料理人がいる」ということを広めることができるかもなと思ったんです。だから、機会があればぜひ力になりたいなと。ほんとうにいいタイミングでしたね。
何が好きだった? みんなのお菓子にまつわる思い出
――お菓子の会社ということで、ぜひみなさんのお菓子にまつわる思い出をお聞きしたいです!
丸山さん:わたしは酢昆布がめちゃくちゃ好きでした。駄菓子にしては高いし、親からは「それは臭いから友だちに嫌って言われるよ」って言われてたんですが、遠足には毎回持っていってました(笑)。
豪希さん:僕はいろいろあるけど、ブルボンの「チョコリエール」、「バウムロール」、「ルマンド」とか、ばあちゃんちのお茶請けにあるオールスターが好きなんですよ。なかでもルマンドが大好きで、あれを前歯を使って一層ずつ剥ぐっていう食べ方をします(笑)。
――えっ? どういうことですか?(笑)。
豪希さん:ミルフィーユの状態から、最終的にシャープペンの芯くらいの細さまで持っていく、っていうことをしていて、一本食べるのに20分くらいかけてました(笑)。それを子どものときずっとひとり遊びみたいにやってて。分解できるお菓子が、昔から好きだった記憶がありますね。
――そういえばわたしもバームクーヘンの層を剥がして食べるのに夢中になってたことがあります(笑)。桃子さんはいかがですか?
桃子さん:わたしは駄菓子全般かなあ。「酢だこさん太郎」とか、「のし梅三太郎」、「蒲焼さん太郎」は未だに好きで食べますね。「これ紙だよ」ってお父さんに言われたことあったな(笑)。
「砂を食べてるみたいだった」「味が変わってしまった」――。お菓子の開発にまつわる、ここだけのはなし
――みなさんも子どもの頃から慣れ親しんでいたお菓子ですが、1から開発するとなると大変なことも多かったと思います。まず開発はどのように進めていきましたか?
豪希さん:基本的には既存のお菓子で、保護者の方が子どもたちによく与えていたり、子どもが好きなお菓子として印象に残っているものを、いくつかアイデアとしてピックアップしていきました。そのあと栄養素をどれに入れていくのが正しいのか、っていうのを何回か検証する、という流れです。
KSL古谷:こういうお菓子で、という方向性は決まっていたんですが、グミに鉄分を入れてみたら黒ずんだ物体が出てきてしまって……(笑)。試作してみることで、お菓子の特性に合わせるかたちで栄養素を組み合わせていく必要があると勉強になりました。
豪希さん:「グミに鉄分を入れたらやばいことになる」っていうのは、やるまではわからなかったよね(笑)。
――味や食感はどうでしたか?
KSL古谷:味も苦かったですね……。
豪希さん:そうですね。食感もじゃりじゃりしていて、砂を食べてるみたいだった(笑)。あとは鉄分の質量が重いので、グミの下に沈んじゃったりね。そうした試作を経て、鉄分を入れることにこだわりすぎるのではなく、大前提として「お菓子のおいしさは大事にしよう」という話になりました。最終的には、グミに関しては鉄分ではなく、ビタミンがたくさん摂れるお菓子として開発を進めていきました。
――そのほかに開発で苦労されたことはありましたか?
豪希さん:やっぱり栄養素かな。僕らも料理人として普段触らないところだから。
丸山さん:焼き菓子に入れたいのに、加熱の過程で起こる化学反応でなくなっちゃうものもありましたよね。
豪希さん:あとは味。栄養素を入れることで、味の面では、お菓子との組み合わせや、レシピを工夫しないと、ネガティブな影響が出てしまうことが多かったです。たとえばビタミンを入れると、わかりやすく酸っぱくなる。すっぱいグミに入れれば成り立つけど、他のものに入れたら余計な要素になるから。
丸山さん:クリームサンドも、試作当初の段階では、亜鉛が結構きつかった気がします。そのままだと甘苦くなってしまって。
豪希さん:クリームサンドは油が多いので、「栄養素が油に溶けない」っていう課題もありました。入れすぎるとざらざらしたり。粉もグルテンフリーのものを使うようにしているので、普通にお菓子を作るのとは違うイレギュラーな情報が多すぎて、普通にやっても作れないものばかりでしたね。
丸山さん:ざくざくチョコも水飴を使ったらすぐできるんですが、使えないのでどうしようかな、とか……。
――栄養素を入れるだけじゃなく、体にやさしい原材料を使うというところでも調整しなければいけないところがたくさん出てくるんですね……。
豪希さん:それでもなんとか商品化できるクオリティに仕上げることができました。根気よくお付き合いいただいているメーカーさんたちの努力も、かなりあると思います。
これから作ってみたい新商品
――最後に、新しく作ってみたいお菓子があれば教えてください。
KSL古谷:社名が「KIDS “SNACK” LAB」とつけているくらいなので、「スナックと言えば」で誰もが思い浮かべるポテトチップスは作りたいですね。
豪希さん:うん、それはみんな同じ気持ちだと思います。
KSL古谷:「体にいいけれど、味気ないなあ」ってことにはならない、ちゃんとガツンとおいしいチップスが作れたらいいですね。
豪希さん:そこに「栄養」という要素を足さないといけないので、その部分では僕らの人脈で力になれたらいいですね。最近フードテックと呼ばれる、食品業界で新しく面白いことをしている会社が増えてきているんですが、そのなかの一社が作っている、藻類を使ったうま味調味料を教えてもらったんです。泡盛の搾りかすと藻を発酵科学の力でうま味調味料を作っているそうなんですが、旨みはもちろん、DHAもたくさん含まれているんです。それを使ってスナックを作ったらきっとおいしいんじゃないかなと思っています。
――わあ、それはおいしそう……! 商品化をたのしみにしています。
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「体にやさしいだけでなく、栄養もとれるお菓子」を完成させるまでには、作ってみないとわからないハプニングがたくさんありました。それでも諦めることなく、こうして商品化までたどりつくことができたのは、TETOTETOさんや製造してくださるメーカーさんがいてくださったからこそ。今後もおいしくてうれしいお菓子を開発していきますので、ぜひご期待くださるとうれしいです!
次回は、引き続きTETOTETOさんに、お菓子の開発で大事にしていたポイントや、完成したお菓子について詳しくお聞きしていきます。
取材・文=ひらいめぐみ 編集=KIDS SNACK LAB編集部
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