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『私にふさわしいホテル』加代子みたいに自分の文章を大事にしたくなった、2025元旦

2025年の映画初めは、元旦に観た『私にふさわしいホテル』だった。

新人賞を受賞したにも関わらず、出版社から単行本を出してもらえない新人作家・中島加代子(のん)が、自らの不遇を変えるため、大学時代の先輩で大手出版社の編集者・遠藤道雄(田中圭)に頼ったり、酷評してきた大御所作家・東十条宗典(滝藤賢一)に復讐したり、破天荒に戦うストーリー。

タイトルにある“私にふさわしいホテル”とは、川端康成など多くの文豪に愛されたことで知られる東京・千代田区の老舗ホテル「山の上ホテル」を指している。加代子は「山の上ホテル」に自腹で宿泊し、“いつかこのホテルにふさわしい作家になりたいと”と夢見るのだった。

まずはこの「山の上ホテル」の登場にテンションが上がった。休館前の2023年11月に仕事で訪れてロビーまで入らせてもらったことがあり(サムネイルはその時に撮影したもの)、宿泊したことはないが、私自身“いつか泊まってみたい”憧れのホテルだったからである(本作を観て、ホテルとして営業が再開したら絶対泊まろうと決めた)。

休館前の「山の上ホテル」

一番印象に残ったのが、のんが演じる加代子の“自分の作品に対する誇りと執念の深さ”である。

加代子は新人賞を受賞する実力があるにも関わらず、大御所作家に酷評されたり、出版社の都合だったりで単行本が出せずにいた。そんな現状を変えようと編集者の先輩・遠藤に頼る。遠藤の指示のもと、何度も修正して磨き上げていく。そしてその作品を文芸誌に掲載するため、偶然同じホテルに宿泊し、締め切りに追われている作家・東十条の執筆を妨害して原稿を落とさせ、その枠を獲得したのだ。この大胆な作戦を皮切りに、デビューするためにペンネーム(と人格)を変えたり、(デビュー後は)書店に自ら赴き営業したりと、作品を世に出し、その作品が読まれるために行動し続ける。それは自分が作家として生き残るための戦略なわけだが、ここまで執念深く“書く仕事”にこだわり続ける姿勢に感動した。この原動力は、自分の作品の可能性を信じ、誇りを持っているからだろう。

作家ではない(し、加代子ほどの実力はない)が、こうしてnoteを書いたり仕事で執筆したりする機会がある自分も、書き上げた文章に対して最後まで責任と誇りを持ちたいと思った。たとえその文章が下手でも誰にも読まれなくても、自分だけは好きでいたいなと。

『私にふさわしいホテル』は、“こんな物書きになりたい”と向上心をもたせてくれた、まさに「元旦にふさわしい」映画だった。

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