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第112回 マンション防災を考えよう
災害時の情報 マンションで困ること「被災情報」4
皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。
さて、今回も「情報」という観点で災害時に困ること、特にマンションで困ること、マンション全体で困ることについての3回目です。
このシリーズは「マンション防災」で、災害をテーマにしていますが、少し立ち返って考えてみてください。どのような災害があるでしょうか。「災害」を考えるときにまず頭に浮かぶのは地震という方が多いと思います。そして、東日本大震災や能登半島地震などの経験から、地震により発生する津波も併せて連想するかと思います。そのほかに台風や線状降水帯による豪雨災害、土砂崩れや河川氾濫などもあるでしょう。ところが、これよりも身近に発生する可能性があり、局地的に大きな被害が生じる災害として、火災を忘れてはいけません。
マンションにとっては大きな災害に一つで、発生するとその被害は甚大なものになる可能性が高く、マンションの維持に大きなリスクを伴う災害です。さらに、この災害が厄介なのは多くがマンション内の居住者が原因となる災害で、さらに大規模災害とは違い、ともするとマンション内の人しか認識しないという場合もある災害です。
この、マンション内の人しか認識しないという点が、困ることの大きな要因でもあるのです。広域にわたる大地震災害などは、TV・ラジオ・SNSその他のメディア等を通じて世の中のほとんどの人が比較的速やかに災害発生を認識する可能性が高く、国内だけでなく海外からも救援、支援が届けられる場合が多いと思います。ところが火災は、発生時点では気づく人が少なく、また気づくのは火災が発生した住居の居住者や周辺の住居の方、広くても近隣の住民でしょう。そして気づいた方は消防に通報をするか火災報知機を作動させるなどの行動をとります。少なくともマンションにいた人はそれで気づくことができますが、広範囲に渡って報道やスマホの速報、プッシュアップのアラートが鳴るわけではないので、消防車が来たことを知ることができる範囲の方以外は認識できません。
このマンション周辺以外にいた人が認識できないところがマンションとしては困るのです。地震であれば外出先や勤務先などにいても災害発生を自ら感じる、または何らかの方法で知ることが可能で、自宅マンションや家族が心配になり能動的に連絡を取ろうとしますが、火災の場合はだれも教えてくれないと自宅マンションが火事だと知ることができません。
そこで、マンションの理事会や防災会の方や居住者がマンションで火災が発生していること、緊急事態であることを居住者に知らせる、情報共有できる方法を用意しておくことが重要です。
マンションではコミュニティが育まれている場合に連絡先を交換していれば互いに知らせ合うことは可能ですが、これまで何度もお話しをしているようにそのような関係性が苦手な方もいますので、緊急事態の時だけつながる、情報共有できる体制、仕組みが求められます。
これは火災を含めた災害だけに留まらず、マンション内に不審者が侵入したなどの情報が寄せられた時などにも言えることで、防災・防犯上、必要な環境であると言えます。
ぜひマンション全体で情報をお知らせできる方法を検討していただきたいと思います。
ちなみにマンションで火災が発生した場合を想定して、防災マニュアルの一部を火災発生時用に修正したものを用意しておくことも頭に置いておいていただきたいと思います。
状況により災害対策本部設置が必要になる場合もありますが、ほとんどの場合は消防訓練と同じで速やかな通報、マンション外への避難と安否確認をするところまでで、そのあとの消火、対応などは消防に任せることになると思います。但し保険適用の件はありますが、破損個所の修繕などは管理組合での合意により対応が必要なので、この点はその他災害と同様の部分が多いと思います。
前回も書きましたが、区分所有者、居住者とはどこにいても連絡できる仕組みを作り、「一時的にマンションに戻ってください」「総会を開催します」という告知ができるようにしておくためにマンション専用のSNS的な情報共有サービスの導入も検討すべきことだと思います。
今日はここまでです。
次回ですが、マンションで困ることで、もう一つを挙げておこうと思います。ぜひ、またお読みください。よろしくお願いいたします。
マンション防災研究所 所長
防災士 福祉住環境コーディネーター
城戸 学
マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。