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スピーチで僕が思い出す悲しい過去

スピーチライターという仕事

現在、僕は「スピーチライター」という仕事をしています。

卒業式や入学式、結婚式の友人代表のスピーチ、さらには試験などのスピーチまで。

あらゆる場面で行われる挨拶を忙しい方や文章をまとめるのが苦手という方に代わって言葉を紡ぐという仕事です。

なぜ、このような仕事をしているのか。

もちろん理由はいくつかありますが、その中でも極めて強烈に覚えている悲しい過去についてお話したいと思います。

スピーチと聞いて僕が思い出す悲しい過去

中学の頃にお世話になった大好きな先生

中学生の頃の話です。

当時の僕は本当に勉強もそこそこで、授業中も寝ていたり、ボーッとして全然話を聞いていないような生徒でした。

そんな僕が好きだった唯一の科目が国語

理由は先生が好きだった。ただのそれだけでした。

1年生の頃に国語を教えてくれた女性のT先生は、僕のクラスの担任もしてくれていた先生で、生徒みんなから好かれる本当にいい先生でした。

国語の授業はもちろん、生徒指導にも熱い先生で、悩みがあったときは親身になってくれたし、先生が出張でいないときに僕が校内でちょっと問題を起こしてしまった時も、

「ごめんね、私がいなかったからあんたのこと守ってあげられなかった」

100%僕が悪かったのは明白なのに、そんな優しい言葉をかけてくれた本当に大好きな先生でした。

悲しい記憶が残っている卒業式

2年生だった僕は、生徒会長だったこともあり、卒業式の送辞を任されました。

「どんなことを書けばいいんだろう」

お世話になった先輩はたくさんいるものの、どのようにまとめればいいのかがわからない。

担当の先生に提出してね、と言われている時間は刻一刻と迫っているものの、全然文章のアイディアが出てきません。

どうしようかと悩みながらパソコンで生徒会の業務をしていたその時、長年使用され続けているUSBの中に『卒業式 送辞』というファイルがあるのを見つけました。

試しに開いてみると、そこには何年か前の先輩が送辞をした際の文章がそのまま残っていたのです。

締め切りが近づいていて焦っていた僕はそのファイルの文章をコピーして、ほとんど加筆も修正もすることなく、担当の先生に提出してしまいました。

担当の先生のチェックはもちろん一発OK。すぐにスピーチの練習が始まりました。

そして、卒業式当日。

送辞は問題なく終了。少し罪悪感があった一件も無事終わったと安心していたその時に事件は起きました。

卒業式が終わって帰ろうと思った時に、たまたますれ違ったT先生に呼び止められたのです。

ちなみにその時、もうT先生は担任もしておらず、国語の先生も違う人に変わっていたため、廊下ですれ違うこともなくなっていました。

「あんたさ、今回の送辞の原稿さ、あれ自分で書いたの?」

心臓が止まるかと思いました。

「・・・いいえ」

蚊の鳴くような小さい返事しかできませんでした。

「そうだよね。あれね。前に先輩が一生懸命考えて書いた挨拶なんだよ」

「・・・・・・」

僕がたまたま見つけた原稿はT先生の指導のもと作られた原稿だったと、その時に知りました。

「・・・まぁいいや。わかった。ありがとう」

T先生は何かを考えるそぶりをした後にその場を去っていきました。

その時の先生の悲しそうな、残念そうな顔が今でも鮮明に残っています。

これが僕のしてしまったスピーチにまつわる悲しい過去です。

スピーチとは何者なのか

この経験が「言葉を届ける・伝える」ということについてものすごく敏感になるきっかけを与えてくれたのだと、いま振り返ると思います。

誰かが前に言っていた文章を借りても、話し手の心は聞き手に届かない。

これが僕があの時からずっと思っていることです。

しかも人間はそういうふうに誰かから借りた言葉のようなものを瞬時に判断して、切り捨てるという機能が備わっている、とも考えています。

例えば、イメージしやすいのは校長先生や来賓の方の話。

最初の入り方が大体同じっていう方が多くないですか?

もちろん良いスピーチをされている方はたくさんいらっしゃいますが、

大抵の方が経験されてる「校長先生の話がだるかった」とか「来賓の人って話長いよね」と思ってしまう原因の一つには、このスピーチの入り方が同じということが往々にしてあります。

つまり、最初の入りを聞いた時点で脳が勝手に「この話は聞かなくていいものだ」と判断してしまうのです。

これは本当に勿体無いことだと思います。

せっかく言葉を届けるなら、相手の心に残る文章の方が絶対いいに決まっています。

だからこそ、僕がスピーチの代筆をする際は、相手へのヒアリングを怠りませんし、入りのインパクトを作って、聞き手を一気に引き込むような、他にないオーダーメイドのスピーチにしています。

人生で数えれば、大勢の前で話すなんてことは本当に回数が限られています。

僕はその数回しかないうちの一回を、悲しい結果で終わらせてしまいました。

そんな過去があるからこそ、せっかくなら心に残るスピーチをしてほしいと切に願うのです。

まとめ

今日は僕がスピーチライターになったきっかけについて書きました。

改めて振り返るとやっぱり悲しい過去ですね。

USBを見つけて、ラッキー!と思った自分に平手打ちをかましたい気分になりました。

でも、その経験が今のいろんな方との出会いを作っているのだと思うと、辛くも良い経験をしたなと思っています。

あの先生は今どこで授業をしているんだろうか…。


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※近々プロフィールを一新する予定です。
その際はまたnoteに書こうかなと思っています。

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