伊賀花入れ「からたち」
加賀金沢に伝わった桃山時代の伊賀花入れ
「からたち」。
とある方の「この花入れに活けてみたい」とのお言葉を聞き
ただそれが見たいがために
急遽東京行きを計画。
リニューアル開館記念展開催中の荏原畠山美術館に向かった。
お天気も良かったのでJR高輪駅で降り、
美術館を目指しつつ、木々の紅葉で色づいている泉岳寺周辺を散策。
最後に訪れたのは10年ほど前だろうか。
迷いながらたどり着いた美術館は
白金台の住宅地の一角にあり、
どこか懐かしく、
年月を感じさせる樹木の調和した庭園の奥に静かにたたずんでいた。
「こんな場所があるなんて知らなかったのよ」と
入口ロビー付近で老婦人らの話し声が聞こえてきた。
60年前の開館当時の趣はそのままに
設立者の想いと茶道文化の深さに触れられる贅沢な空間となっている。
今回のお目当ての「からたち」の花入れは、
昭和9年に即翁(畠山一清)が購入し、金沢の外に運ばれようという日、
金沢駅で別れを惜しむ多くの人たちに見送られたという。
その知らせを聞いた即翁は人を集めて
全員紋付き袴の正装にて上野駅に集い、
心を尽くして出迎えたという粋な逸話を持つ別格の品だ。
伊賀焼の野趣と圧倒的な存在感、
桃山から令和と時代をゆうゆうと超え
威風堂々そこにあった。
さてかの人ならばどんな花を活けるのだろうか。