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口切の茶席
お茶席に入ると
茶壷が3つ並ぶ厳粛な雰囲気の床に迎えられた。
5月に摘んで茶壷に入れられた茶は
先月神前に奉納されたもので
その中のひとつを口切し
挽きたてのお茶をいただけるのだ。
お菓子は「小倉山」。
シューシューと釜鳴りも最高潮。
手の内の白い粉引茶碗に
鮮やかな緑色が映える。
軽やかで新鮮。
だからといって新茶とは違う深みがあり
コクのある名残りの茶とも違う。
まさに口切の茶の醍醐味。
お茶の世界に出会った頃は
そんな微妙な味の違いなど判らなかったが
やっと違いを感じられるようになったのだから
面白くならないわけがない。
女性のお稽古ごとのイメージが強く
お茶になど全く興味を示さなかった私が
かれこれ二十数年前になるが
この人のお茶なら学んでみたいと
素直に反応した私の心は間違いではなかったのだ。
茶杓も仕覆も
今日のために作ってくださったのだという。
一期一会。
心づくしで迎えて下さった誕生日。
忘れがたい至福のひとときとなった。