ファブラボ栗山で自作電子楽器製作:「フレキシトーン」
みなさん、こんにちは!木箱のSAyAです。
今回はステッピングモーターを使用した電子楽器を栗山町地域おこし協力隊ものづくりDIY工房運営支援員の鈴木敦文さんと、私が所属する電子音楽ユニット「木箱」がコラボして製作しました。
この楽器名をフレキシトーンと仮で名づけました。
周波数(frequency)からとった名前です。
今回、製作をはじめたのは3月2日でした。
1か月で作成するプロトタイプとして開始しました。
製作のきっかけは鈴木隊員が自主事業として「栗山町の課題解決の為のプロジェクト」として「個人が欲しいもの(ファーストスパイラル)」をヒアリングし制作したいということで、今回木箱に声をかけてくれました。
木箱に声をかけてくれた理由として、音楽には発信力があるというところ、そして栗山町=クリエイティブなまち、それを広めることで関係人口だったり、町の人口を増やしていけるのではないかという考えたからです。
木箱が提案したのは「ライブで使える電子楽器」でした。
そして木箱のバンドのイメージコンセプト(テーマ)としている「デジタルだけど温かみのあるもの」これを兼ね備えた楽器をオーダーしました。
鈴木隊員は、ステッピングモーター(ステッパーモーター)を生かした楽器にしたらどうですか?という提案をしてくれました。
ステッピングモーターは、3Dプリンタ等を動かすときのモーターに使われているものです。デジタルファブリケーションの機械にはほぼ使用されているそうです。
それを今回なぜ使用したいと考えたのは、ステッピングモーターは回転時に音が発生するのでその仕組みを生かして楽器にできるのではないか?という理由からでした。
話によると京急電車にも使用されていて(「ドレミファ インバーター」というもの)が使われていて発車するときに音階が聴こえるそうです。
一方、木箱側が今回の楽器に求めるものは
木箱のトラックメイカーのニシム(西村サトシ)案
*電子基盤でなにかやりたい
*MIDIに連動するもの
*VIVIWAREを使用した 音楽版のモジュール楽器的なもの
SAyA案
*電子楽器だとしても、見た目はあたたかみのある雰囲気に仕上げたい
*例えば木の箱にはいってるオルゴールのような感じ
木箱側でもステッピングモーターを生かした楽器作りはとても面白いと思ったので、是非採用したいと伝えました。これだと、ニシム案の電子基盤でなにかやりたいというのもクリアされます。さらに、MIDI連動もできるとのことでした。
そして、この楽器のパッケージ(見た目を決めるもの)となるものを木製にすることもできるとのことで、私の案も採用される形になりました。
みんなの意見が合わさって、楽器製作がスタートしました。
1か月かけて、鈴木隊員が試行錯誤を重ねフレキシトーンをブラッシュアップしていきました。
フレキシトーンの仕組み
動作原理は、時計の秒針と同じで、モーターが一定の角度で回転する際に生じる振動で音になります(回転数が一定で回っていると音がなる)
基盤部分のこと
ここでは、フレキシトーンに使用する基盤部分を説明します。
下段には
マイコン(マイクロコントローラーの略)というものが搭載されています。
こちらは小さいパソコン的な位置で プログラムを書き込む役割をします。
頭脳的な役割をしてくれるところです。
上段には
モータードライバーを搭載しています。
これには、モーターを制御する役割がりあります。
(向きを決めたり、停止したりする役割)
今回は登場しなかったセンサーとモーターでしたが
ロボットでわかりやすく例えると
マイコンが頭脳だったら センサー(光、温度、湿度等を感知するところ)は、目と耳の役割 で、モーターは手足の役割になります。
なかなか専門的な話になってはきましたが、フレキシトーンが楽器として完成されるまでには、様々な思考と緻密なプログラミングが必要になるということです。素人にはマネできない工程だということがわかります。
見た目はあたたかみのある木製に
さきほども記載したように、私がこの楽器に求めるものとして
このような要望を伝えました。木箱としてコラボした部分で、見た目でもきちんと表現したかったからです。
しかし、今回は1か月のプロトタイプのため、製作過程ではまずは純粋な木材ではなく使用しやすいMDFを使うということになりました。
鈴木隊員がFusion360(3DCADソフト)で設計したものをMDFを材料にレーザー加工機でカットして作ってくれました。
MDFを使用しましたが、まるで純粋な木を使用したかのような質感で出来上がりました。パッと見たらスピーカーを感じさせるようなフォルムもとても素敵でイメージに近いものが出来ました。
ゆくゆくは、栗山産の木材を使用したいと話しています。
音を出してみる
見た目も楽器らしくなったところで、試奏を重ねて、音をチェックしていきます。
MIDIと連動するということで、パソコンと、MIDI鍵盤をフレキシトーンに繋げます。
最初は、もともと用意していたMIDI情報を使用して再生します。
気になっていた音色でしたが、シンセのサイン派のようなピコピコした可愛い音色でした。近いのは昔のゲーム機の音。
さらに実際、リアルタイムにMIDI鍵を弾いても使えるのか?ということで
弾いてみました。
YouTube試奏動画
無事、弾くことができ、1カ月のプロトタイプのフレキシトーンとして完成しました。
これまでは、フレキシトーンの仕組みなど楽器制作に関わる部分をお伝えしてきましたが、今回鈴木隊員に話を伺う中で鈴木隊員のパーソナルの部分も
ヒアリングでき、私的に是非記事に残したいと思い、ここからは鈴木隊員のものづくりに対する想いなどを書かせていただきますね。
自身の目指すポジション
鈴木隊員は自分のポジションについてこう語ってくれました。
「例えばヒーローものでいうとバックエンドのチェアマンのようなポジションが自分には理想で、自分はあくまでも裏の人で、メインの人をサポートできる人になりたい。人を輝かしたいんです。」と。
私は長年バンド活動をしてきてボーカルというフロントマンの立場で活動してきました。そのポジションの陰では私を支えてくださる方々(メンバーやスタッフさん)がいての活動だったので、今回、裏方で活躍されているかたの想いというのがダイレクトに聞けたことが自分としては新鮮でそしてとても有難いと思いました。
「人の役に立つため、人の手助けをしたい。」
鈴木隊員はそれを有言実行する手段のひとつとして、このプロジェクトをいくつか進めています。今回のように音楽家なら楽器、農家なら畑を管理するシステムだったり。その人のニーズは様々。人のニーズにあったものを(困りごとを解決する)制作するプロジェクトです。
プログラマーの現場で感じた違和感
大学では機械工学(メカニカルエンジニアリング)を専攻しソフトとハードの内部のプログラミングを学びました。その中で感じたことがありました。
プログラマーやエンジニアなど職人的、専門的な仕事は外からは評価がされにくいということ。
例えば、結果を出しそのコミュニティ内では高評価だとしても、結局はそのコミュニティの中でしか評価されない閉鎖的な「ひとつの箱の中の世界」
すごいことをしているのに世間的には説明しずらい、理解されずらいということからなのか、それは大学時代に感じていた違和感でした。
そういった経験もしつつ、現在鈴木隊員が活動拠点としているファブラボ栗山ではその違和感というのはまったくないそうです。
「みんながみんなを評価してくれる」
「いろんなバックグラウンドのかたが自由に参加できる」
「作るものも明確でオープンである」
そのことをファブラボ栗山のメリットだと鈴木隊員は話します。
時代とともに、世の中の流れも変わり、現在はプログラマーやエンジニア達の意識もだいぶ変わったといいます。
その昔、企業は「車輪の再発明」をしていましたが、今はみんなが情報を公開したり、協力するようになり、制作の効率もあがりました。
オープンソースという、エンジニアやプログラマーのみなさんが自由に使用するために公開しているプログラムがあるのですが、そちらが良い例と言えます。
栗山町というこの地で最先端な技術を追いかけ、実践している場所というファブラボ栗山があるということ、それに関わる優れたスタッフがいるということ(現在3名のスタッフがいます)、私は胸を張ってこのことをみんなに自慢したいと思います。
フレキシトーンはこれからどんどん改良されていく予定です。
もちろんライブやレコーディングでも使っていきたいと思いますので
是非皆さんチェックしてくださいね。
SAyA
関連リンクまとめ
■ファブラボ栗山公式ホームページ
■ファブラボ栗山のある「栗山煉瓦創庫 くりふと」の公式ホームページ
■木箱(kitorinarecords)
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