愛が足りない こんな馬鹿な世界になっても|うちで踊ろう(大晦日)
年末になると思い出す。
2020年のNHK紅白歌合戦。
私はテレビの前で泣いていた。
歌や演奏やダンスなどで多くの人がコラボしたこの曲、フレーズを知っている方も多いと思う。
その、「大晦日」バージョン。
もしかしたらフルで聴けるのかな?と期待はしていたのだけど、星野源さんが2番を歌い始めて、私は呆然としてしまった。良い意味で。
源さんのことが好きな理由はたくさんあるけれど、そのひとつは、人間の暗い部分やどうしようもない情けなさ、それに対する苛立ちや諦めも、絶妙な言葉選びでさらっと歌ってしまうところ。
そういう歌詞に出会えた時、私は胸がキュッとなり、書いてくれてありがとうという気持ちになる。
1番は比較的ポップだったのが、2番でチクリとする、という歌詞は「アイデア」という曲もそうで、朝ドラの主題歌として流れる部分とのギャップに当時は震え、最高だよ源さん、と歓喜した。
「うちで踊ろう(大晦日)」も同じ感覚。
いや、それにも増して思う。
2020年のあの渦中に自分も実体験していた様々な感情、「アイデア」の時よりもっとリアルでどろどろした心のうちを、わーっと連れ出してまるっと許してもらったようなあたたかさ。
…ああ、やっぱり私しんどかったんだ。
「もっと大変な人はたくさんいる」と言われ、私はまだ恵まれた環境にいるんだと思うようにしていた。けれど、自分にとってはしんどいことが山ほどあって、それに対する自分の感情にも嫌気がさして。
でも、それでいいんだ。
「馬鹿な世界」って思っていい。
生きているから、大丈夫。
私は泣いていないフリをして、その歌う姿を最後まで目に焼き付けた。
大げさだけど、本当に出会えてよかった。
この曲に、あのステージに救われた人がどれだけいただろう。
きっとまただれかの心に届くことを信じて、ここに残しておきたい。