日本経済の闇・労働生産性の問題
前回、投稿したデービット・アトキンソン氏と山崎 大祐氏の対談の第2弾をお届けします。
お二人の経歴やプロフィールなどは、前回の投稿を参照してください。
デービッド・アトキンソン氏(1965年5月10日- )
イギリス出身小西美術工藝社社長。オックスフォード大学で日本学専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせた。
山崎 大祐 氏(やまざき だいすけ1980年5月21日 - )
株式会社マザーハウス代表取締役副社長。マザーハウスカレッジ主宰。
①コロナを考える2つのポイント
山崎氏:今の現状を考えたときにコロナ禍があって、大量失業時代が来るかもしれない事に関しては、今はまだ起きていない。
これは、ポイントは2つあり、1つは、雇用調整助成金は効いていて、実際に自宅待機の人もかなり多くなり、本来の失業率は分からないが、2%台は少なくとも出ていて、雇用調整助成金も出て、今の所は人員をカットしていない状況。
日本に関していうと、もう1つは、企業セクターにかなり余剰がある。預貯金が相当残っていて、すぐに人を調整するような状況にない。
経済の状況だけ見たら、踏ん張っている状況があると思うが、結局この後、懸念して考えないといけないのは、第2波が起きた時どうするかという事と、雇用調整助成金も結局9月までとか、その後延長されるかどうかという話があり、切られていく。
厚労省:雇用調整助成金概要
財源が厳しい状況の中で、財政の大盤振る舞いをしているのが現状で、この状況が続けば、必ず、財政の議論になると僕は思っている。
議論の1つとして、借金を大量に増やしても、国債を発行しても大丈夫という意見がある。
日本は、世界で言うと、最悪レベルの財政赤字があっても全然問題ないという圧力と、一方で財政の問題がこれからやばくなるから、この状況で補助金・助成金は続けられないという議論が始まっていると理解している。
デービット氏と議論したいのが、①財政の問題と、②今の経済状況の現状、③コロナを踏まえて、結構見えてきたこと。
1:マクロとミクロの両面から議論を
デービット氏:この対談は、3つのポイントがある。
山崎氏は元々マクロ経済のエコノミストで、私は企業の分析をやってきた。
日本ではマクロの議論とミクロの議論が別々に行われていて、マクロの人たちは、マクロが全てで、あとはもういらない。
政府が特効薬的に大量に財政を支出すれば、全ての問題が解決されるという人は結構多い。
エコノミストとは?
経済学者や経済研究者など、経済の動きや諸問題に関する調査・分析・予測などの仕事をする専門家のこと。金融機関、シンクタンク、官公庁、大学などの研究機関で活躍 している。
証券会社においては、顧客である投資家のために役立つ経済の情報や調査結果、将来の予測等を提供しており、シンクタンクにおいては、より広範囲の人々に向け、経済活動全般に関する情報を学会やメディアを通して提言している。エコノミストには、複雑な経済活動に関する情報を収集するため、情報収集能力はもちろん、コンピュータプログラムを用いた分析能力も必要とされます。
山崎氏も私も、1度金融の世界から離れ、会社の経営を通して、実体経済を毎日見ている。
さらに、2人は、生産性の悪い業界で、悪い所をみている特徴がある。
もう一つ特徴が、色々な対談で、大企業・上場企業を中心とした議論になっている。
テレワークや日本の技術などの色々な話は、ほとんど大企業。
大企業の場合は、日本の人口、労働者の人口の比率でみると、高くても3割程度。アメリカでは50%を超えている。
ということは、残りの70%の人の議論になっていない。
全体の従業員数4,794万人に対して、大企業1,433万人、中小企業3,361万人となっている。(中規模企業2,234万人、小規模事業者1,127万人)
割合:大企業が29.9%、中小企業が70.1%。
総務省統計局:「平成26年経済センサス-基礎調査」
我々の企業経営は、中小企業で上場もしていないオーナー企業になる。
大半の企業が無視している、実際の日本の産業構造の大半の所にいるため、普通のエコノミストや、研究所の人たちと全く違う世界を見てきて、その世界一の非常に大事な世界でもあると、私はそういうところを忘れてはいけないと思う。
山崎氏:私もそう思っていて、すごく違和感があったのが、「リモートワークだ」みたいなことを言っていて、6-7割の業種はリモートワークが出来ていない。
それは、小売り、福祉サービスとか建設、製造みたいなもので、もちろんマネジメントはできているが、リモートワークが出来ない仕事がかなり多い中で、リモートワークしない中小企業は問題みたいな論調が一部あった。
マクロの議論も、今回コロナが突きつけた事は、業界によって全然違う事だったり、日本の産業構造の問題は、かなりあった。
財政みたいなマクロな議論になるのは、危険と思う。
2:財政支出はバラ色ではない
デービット氏:私は、実は以前、マクロエコノミストに「教科書通りでできる」と言われた。
産業構造の部分、つまり生産性の話で、GDPの総額を計算するとき、一番簡単なのは、「人口×生産性」になっており、私からするとミクロの世界であり、これを積み上げていくものと思うが、それは違い、生産性を決めると「生産性÷人口」になる。
本当はそうではないが、数学的には成り立つ。
需要を、政府が財政へ効かせれば、生産性はあくまで「GDP÷人口」であり、生産性を上げる事は可能でそれがないと出来ないという理論を唱え、それは認める。
需要が無ければ、生産性を上げたくても、上がらないに決まっており、裏にその支えがある事は正しい。
しかし、無限に生産性を上げることは、マクロエコノミストからすると、この計算方式では、例えば1人の人口の国でも、日本と同じ500兆円の経済にすることが出来る。
現在、1人当たりのGDPは、世界一でも10万ー13万ドルなのに、計算方式だけをみれば、13万ドル以上のGDPを超える事が可能になる。
世界の1人当たり名目GDP 国別ランキング・推移(IMF)
確かに財政を使う、国の支出を増やすことは理解できるが、これまで30年間やってきたことで、日本経済は横ばいになっており、生産性がそんなに上がっているわけではない。
そうすると、財政をそこまで出せるかという事と、気になるのは、財政を出す事で無限に期待できるかということは、私は研究していることであり、企業アナリストとしては、政府が支出を増やせば、日本企業360万社を世界一の生産性にすることが出来るかどうかに対して、私は懐疑的である。
3:医療の低生産性がバーンアウトを生む
山崎氏:短期と中期の議論をしっかり分けるべきで、短期的に、財政を出せば需要が増え一時的に生産性が上がる。
中長期を考えたとき、日本は短期的対策をずっとやり続けてきた。
政府しかお金を使わないという状況があり、民間は期待のリターンが低く投資もしない。
皆、貯蓄は増やし、現実として、世界でも過去最高水準の民間の貯蓄残高があり、それに対して世界最高水準の財政赤字の累積赤字がある。
家計の金融資産、19年末最高に 現預金1000兆円超え
日銀が18日に発表した資金循環統計(速報)で、2019年12月末の家計の金融資産残高は前年比3.3%増の1903兆円で、05年以降で過去最高となった。3四半期ぶりの増加となる。株価上昇で保有株式や投資信託の評価額が増加した。消費増税後に節約志向が強まったことで現預金が初めて1千兆円を超えたことも寄与した。
日本経済新聞:2020/3/18
世界の家計貯蓄率 国別ランキング・推移
財務省:債務残高/GDP比の国際比較
そこで起きたことは、20-30年で見ると生産性がずっと下がり、政府も公共事業を縮小し、一方で医療などに莫大なお金が掛かり、自動的に医療福祉サービスに多額なお金がかかる状況になっている。
この状況を続けていいのかということが一つある。
デービットさんに聞きたいことは、労働人口が激減することが始まり、生産性を上げないと、根本的にサービスが成り立たない事について。
今回のコロナ禍で突きつけたられたのが、一つは医療の生産性で、医者も多忙すぎてバーンアウトが問題になっている。つまり医者が足りない。現場の生産性もずっと上がっていない。
バーンアウト(燃え尽き症候群):アメリカの心理学者フロイデンバーガーが1980年に提唱した概念で、それまで人一倍活発に仕事をしていた人が、なんらかのきっかけで、あたかも燃え尽きるように活力を失ったときに示す心身の疲労症状をいう。
今回、限定的に初診のオンライン診療が解禁されたけど、医師会はオンライン診療について、特例中の特例であるとしている。
本来、こういう分野こそ生産性を上げないといけないし、人の限界性がきているにも関わらず、お金だけが大量に投入され続けている。
自動的に年配の人は増加し、金額は増えマーケットはあるように見えるが、実際、生産性は上がってない現状を作ってしまっている。
これは限界に来ていると思っている。
②MMT(現代貨幣理論)の誤解と本質
デービット氏:実際に、MMTに関して、海外の論文や主要の教授の本を読んだが、アメリカの場合は人口が爆発的に増加しており、失業率が高く、活用していない資産や資源が沢山ある。
アメリカ経済を考えるに当たり、なぜ資産や資源が活用されていないのかというと、企業部門が雇ってもらっていないということであれば、政府が支出を増やし雇用を行い、今まで以上に色んな商品やサービスを買い、企業が継続していくという考え方。
これは、ケインズ経済学の、完全雇用の理論の延長線である。
現在、税収と国債を発行し政府が資金調達を行い、支出をしている。
それには、制限やある程度の条件があり、何%という事はないが、世界金融市場には、「この範囲内」ということになっている。
MMTによって、その制限を外すという事。
しかし、どのMMTのアメリカの学者の論文を見ても、完全雇用を実現するためのMMTということは、一貫して全部書いてある。
MMTは完全雇用を実現するために、非常に有効であると書いているが、その延長線に書いているのが、完全雇用を実現したうえで継続すると、資源が無くなっている以上は、インフレになるリスクの可能性が非常に高まっていくとしている。
MMTにより完全雇用になるまでは、GDPが名目でも実質は上がっていく。
その後は、実質が増加しない。そういう考え方。
マクロとミクロの違いが出てくるが、そのメカニズムを、単純化すると、人が労働している事による生産性と、労働生産性、例えば1000万円で考えてみる。
その場合、人口の中で労働している比率、労働参加率が50%とすると、国全体の生産性はあくまでも「1000万円×50%」なので、GDPが500万円になる。
生産性を無視して、単に人口全体の10%が失業していると仮定すると、政府が支出することで、残っている10%、働いていない10%を雇うことになり、1000万円まで労働参加率が50%だったが60%にあがると仮定すると、生産性そのものを、他の条件全部一緒にしても500万円だったのが、600万円になりGDPの総額自体が、実質でも名目でも、20%増える。
これがケインズ経済学でありMMTである。
ここで重要なのは、完全雇用という数の原理の所で50%が60%になっているが、労働生産性が変わっていないという前提で、この限界値に来るときにこれ以上出すと、労働生産性が変わらない限りにおいてインフレになっていくだけで、MMTの効果が消えてしまう可能性が出てくる。
昔のケインズ経済学というのは、大恐慌時代のニューディール政策のように、どんな無駄な仕事でもとりあえず雇うという考え方である。
ニューディール政策:1930年代、アメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトが世界恐慌を克服するために行った一連の経済政策。
この政策により経済は1933年を底辺として1934年以後は回復傾向になったが、NIRAやAAAといった政策のいくつかが最高裁で「公正競争を阻害する」とする違憲判決を出された。さらに、積極財政によるインフレ傾向および政府債務の増大を受け、財政政策・金融政策の引き締めを行った結果、1937-1938年には失業率が一時的に再上昇する結果となった。その後、第二次世界大戦に参戦したことによる、アメリカ合衆国史上最大の増大率となる軍需歳出の増大により、アメリカ合衆国の経済と雇用は恐慌から完全に立ち直り著しく拡大した。
この政策に関しては、賛否両論である。
米国の実質GDP(1910-1960年)、赤色強調は大恐慌時代 (1929–1939)
米国の失業率(1910-1960年)、赤色強調は大恐慌時代 (1929–1939)、1939年以前は推定値
アメリカ合衆国大統領 フランクリン・ルーズベルト
そうすると、労働生産性を無視した単に大量に雇用を行えう考え方は、人口が増加しているアメリカでは正しい面もあるが、労働人口も総人口も減少していく日本の中で、生産年齢人口は減少しているにも関わらず、去年、就業者数が史上最高になっている。
ここのポイントは、数は完全雇用だが、問題は、就業者が有効に使えないということになり、労働生産性の向上という事になる。
財政の国の支出は、最初は、人間の数を増やせば、効果が簡単に得やすい。
その後は、賢い投資に変えなければ、財政を単純に増やしたからと言って、効果が出ることは難しくなる。
そういう場面に近づいているのではないかということであり、バラマキではなく産業を長期間放置してきた日本の労働生産性が、財政が注目されると同時に、この財政を正当化する方法があるとすれば、労働生産性の問題の解決のために使っていかないと、財政を出せると言っても、効果が出ないのではないかと危惧している。
③教師不足が示す「労働力不足」
山崎氏:デービットさんが言っているのは、労働参加率が上がってきた日本で言っても9割で、もう限界が来ているという事。
それが一つ目のポイントで、マクロで見ても労働参加率がかなり高く、完全雇用でなくても、人が足りないなら、今、労働市場に行ってない人たちに、労働参加してもらう。
そういう議論はあって、女性労働参加率もかなり上がっており、マクロで見ても、労働の供給量は増えない予定なのに需要だけ増えれば、ギャップが生じインフレになるという事だと思う。
二つ目が、ミクロで見ると業界によってかなりそういう状況は起こっており、医学の世界、医療の世界もそうだが、教育も典型で先生が20-30年前には倍率7倍だった。今は、県によっては、1倍近くになっていて、先生になりたい人がほぼいなくて、足りない。
デービット氏:よく聞きます。大学の先生も誰でもいい状態になっていると。
山崎氏:小・中・高もそういう状況で、先生がいない。
★は受験者数による倍率、( )内は昨年度 ※倍率2以下のみ抽出
令和3年度(2021年度) 教員採用倍率
もう、労働生産性でカバーしないといけないので、今回のポイントになるのは、市場が柔軟であれば、人が足りない倍率は1.5倍とか普通は賃金が上昇する。賃金上昇で、なりては増加する。
公的サービスではそういうことはない。
実際、人が足りない業種は増加していて、我々が生活サービスで必要な業種、医学、医療の世界や教育ですでに起きているので、そこに需要をつけたところで、供給量は増えず、むしろ現場がひっ迫し、辛くなるだけ。
そのために労働生産性を上げなければいけない。
コロナ禍のタイミングは、それを実行するチャンスと思った。
教育もオンライン教育で変えるとか、現場の先生も疲弊しているので、この機会にと言っているが、中々進まない現実がある。
私は、コロナ禍の状況を使い、労働生産性を上げる方向に行かなければいけないと思う。
もう一つのポイントは、結局電子政府の話で、今回露呈してしまったのは、雇用調整助成金も1.6兆円の予算がついてる。それに対して施工されているのは、500億円しかない。
ドイツでは、2週間で全数が出ている。
私は申請する立場でよく分かりますが、申請書類が変わりすぎて、どのタイミングで申請していいかも分からないし、毎日連絡しても、現場も混乱して進まない。
今回、日本が残念ながら露呈したのは、公的サービスの生産性が非常に低い。
公的サービスに大量のお金がこれまで、30年間投入されてきた。
お金は投入されたが、生産性が低いという事が起こっていて、その結果、我々の生活に影響が出ているということになっている。
マクロで見ると、MMTの議論は、ここ30年起きてきた事だと思うし、財政赤字が危険なプライマリーバランスがやばいと言われながら、全然金利も上がらなかったし、悪化しなかったというのは、MMT理論は、一部分あると思うが、今もう、労働、働いている人がいないから、ここから先限界がくると私は思います。
プライマリーバランス:国や地方自治体などの基礎的な財政収支のことをいう。一般会計において、歳入総額から国債等の発行(借金)による収入を差し引いた金額と、歳出総額から国債費等を差し引いた金額のバランスを見たもの。プライマリーバランスがプラスということは、国債の発行に頼らずにその年の国民の税負担などで国民生活に必要な支出がまかなえている状態を意味する。逆に、プライマリーバランスがマイナスということは、国債等を発行しないと支出をまかなえないことを意味する。
近年の日本は、プライマリーバランスがマイナス(赤字)の状態が続いている。国債残高の増加傾向に歯止めがかからない状況からも、早期のプライマリーバランスのプラス(黒字)化を目指しているが、政府が掲げている2025年度の黒字化の実現も困難だということが2019年1月の経済財政諮問会議に提出された。
④最低賃金を上げても、雇用は減らない
デービット氏:最低賃金の話をやってきたが、最低賃金を引き上げると、失業者が増加するとか、スキルのない人達が、最低賃金だから皆切られるという事が、いわれる。
実は最低賃金を毎年3%引き上げてきて何が起きたかというと、最低賃金で働いている人たちを中心に雇用が増えている。
実体経済を知らない見ていない先生たちの言う事は、新古典派の経済学により、労働市場は、完全競争状態で、需給により決まっている。
そうすると、値段を上げていけば、その分人が切られると言ってきているが、実際、安倍政権になってから、最低賃金を毎年3%程度平均上げたことで、生産年齢人口が617万人減少しているのに、雇用数は371万人増加した。
この中で、99%は24歳以下と65歳以上。
この方たちは、ほぼ最低賃金で働いており、効果があったことは間違いない。
問題は、65歳から70歳、75歳の人たちが入ってきたり、戻ってきたとしてもフルに若い方たちのように働く事、生産性が出せるかというと、絶対に出せない。
そういう意味では、限界に来ている事は間違いない。
1:小さい会社が多すぎる
デービット氏:今の生産性の問題は、技術が進んでいない部分もあるが、もう一つは、産業構造として、非常に小さい企業が多くありすぎる事で、技術を使うとか、労働生産性を高めることが出来ない。
しているか?、してないか?
していないのなら補助金を出しやってもらうではなくて、器としてできない。
例えば、労働生産性を高めるためには、技術を使うと一定の企業の規模が必要になる。
輸出をすると、世界の学者の第一人者が、従業員数が平均で158名くらいの企業でないと輸出の継続性が困難で持続性がないと言っていて、それは一定の規模が必要という事になる。
規模の経済は、それなりの給料を払うためには、一定の大きさがないと出来ないという事も、世界共通の人類の歴史で証明されている事実。
結局、財政は大量にお金を出せば、このような問題があっても、あたかもない前提で、全部の問題が解決できるという事は、絶対にありえない事で、危険な論理である。
⑤助成金の振り込みが遅れる理由
デービット氏:今の問題というのは、韓国のように、申請から、日本で言う雇用調整助成金が3分以内にくる。
ドイツでだいたい2日ぐらい。
私は申請していまだにもらっていないというのがあり、そこで問題が、出来る・出来ない、やってる・やってない、ではなくインフラが出来ていない。
なぜインフラが出来ていないかというと、労働生産性を無視して、人間の数で対応してきた日本経済だからです。
経済モデルとしては、仕事が1.5倍増えれば、人を1.5倍増やすというやり方を行ってきた。必ず人を投入する動きやってきた。
この人たちを違う形で活かすことは出来ないかというと、日本では文化が違うとか、屁理屈の連発で、平時であればそれでいいかもしれないが、有事では、この欠陥、欠点は、全部表面化してくる。
政府が助成金を出せなかった理由としては、遅いではなく、インフラがないという事なんです。
インフラのなさで、ドイツも同じように遅かったと思うが、単に政府が決めるのが遅いとか、仕事が非効率でお役所仕事とかそういう問題ではなくインフラが出来ていない。
なぜインフラが出来ていないかというと、そこに投資してこなかったからです。
必ず人を出来るだけ安く雇い、真剣に働いてくれるので、ある意味では、良い人材の呪いだと思う。
安く真剣に働くので、経営者は、自分達はインフラを整える必要はないとなり、企業の投資をインフラに投資しない。
単に良い人材を、奴隷のような安い賃金で、真剣に真面目に働くので、労働生産性の向上に対して、文化が違うとか「ファクターⅩ」のように訳の分からない感じで、やるべきことをやっていない。
ファクターX:新しい環境効率指標で環境負荷の増減を見るだけでなく、製品の性能や、機能の向上との比率で評価する手法。その目安の一つがファクターX。例えばファクター4(環境効率4倍の意味)の新製品を開発する為には、旧製品に対し、資源投入量と環境負荷を半分に抑え、製品性能を2倍に高めることで達成される。
財政で人を雇うという完全雇用状況にもっていった後に、やらなければいけない事に、単に生産性が「GDP÷人口」だから無限にMMTを使えば、この問題を全部解決できる事ではないと思う。
山崎氏:その部分も完全にアグリーです。日本の現場の力は、本当に人の力が強い。
アグリー:ある主張に対して賛成、同意をすること。 相手と同意見であることを雰囲気で伝えるだけでなく、相手の案や提示に「好意的に」「快く」受け入れるという意味が込められている。 しぶしぶ同意をすることは、アグリーと言えない。
世界最低レベルの最低賃金で働いている方たちが多く、それが前提で成り立っている会社が非常に多いのは事実だし、小売りやサービス業になると労働人口も多いのもありますが、それは変えないといけない。
OECD 「Real minimum wages」
OECD加盟国における最低賃金ランキング(時給換算)のトップ5ヵ国、■1位:オーストラリア(12.1ドル)■2位:ルクセンブルク(11.8ドル)■3位:ドイツ(10.9ドル)■4位:オランダ(10.4ドル)・ベルギー(10.4ドル)という、“世界の賃金ランキングトップの常連国”が顔を並べている。
日本(8.1ドル ※2017年のデータ)は11位で、続く12位が韓国(7.9ドル)というランキング。OECD加盟のアジア諸国では首位だが、先進国としては、韓国およびアメリカを少し上回ることで、なんとか最下位を免れた結果となっている。
そこにはいくつか問題がはらんでいると思っていて、この何十年を見た時に、所得層の一番低い人たちの収入は増えていない。
そこが、増えていかないと、社会的にも不公平感も強くなり日本もそうなっている。
私は、経済だけでMMTなどを語るのは非常に危険と思っていて、将来インフラを起こせば良いという議論は、不公平。
今の人たちは何か大量にお金を使ってもらえて、生産性が低くても収入がある程度担保されている状況。
しかし、それは将来、インフレが起これば、将来世代の負担になる話なので、実はマクロだけで語るのは、非常に不公平だと思う。
1:長期的には生産性が全て
デービット氏:冒頭で述べたように、マクロの人たちは、マクロだけを見てますが、今の問題をミクロで解説すると、生産性が上がってこようが、増えても、下の方の人たちを中心に給料が上がっていかないといけない。
なぜ上がらないかは、さっきの話で、GDPは、労働生産性×労働参加率なので、増えてない理由は、労働参加率が上がることによって、全体の生産性が上がっていても、労働生産性が変わらないと、あまり変わらない。
給料は何をベースに計算しているかというと、全体の生産性ではなく、あくまでも「労働生産性」。
皆さんは、経済がこうなっているのに、例えば、安倍政権になってから経済が悪くなってない、よくなっている部分もあると言う。
なぜこのような状況になったかというと、雇用が増加したという実感がないと皆いう。
なぜ実感がないのかというと、労働生産性が上がっていないから。
そういうのは、人間の数という数学の原理で、経済を支えてきたが、中身がよくなっていない。
「ポール・クルーグマン」が言ってたと思うが、「生産性が全てではない、ただ長期的には生産性がほぼ全てである」という名言がある。
ポール・ロビン・クルーグマン(1953年2月28日 - )
アメリカの経済学者、コラムニスト。ニューヨーク市立大学大学院センター(CUNY)教授。2008年度ノーベル経済学賞受賞。
そこでの問題は、プロダクティビティ(生産性)ってことになるが、生産性と労働生産性と参加率の3つのコンビネーションというのは、日本では十分に理解できていないと思う。
生産性上がっているのに、自分の給料は上がっていないというのは、明らかに理解していないという事になる。
⑥トルコ、スロベニヤに負けた日本
デービット氏:一つのポイントですが、生産性と労働生産性が違うもので、生産性が上がっているからといって、給料が上がらないという事は十分にあり得る。
今の日本は中身が良くなっていない。
原始的なままずっときている。
労働力を投入するだけで、やってきたので、生産性を上げる事に成功しているかもしれないが、労働生産性がほぼ変わっていない。
最近出た数字ですが、日本は労働生産性の世界ランキングが下がっている。
34位である。(2018年は33位)
2019年は、イタリア、スペイン、ギリシャ、チェコ、トルコ、スロベニア、ニュージーランドなどに抜かれた。
あまり聞きなれないスロベニアに抜かれた。
購買力調整なので、日本はデフレとか関係ない。
そういうのも全部調整されている。
トルコとスロベニアに抜かれるのは凄い事実だと思う。
これはあくまでも、事実で客観的データであり、34位でずっと低いままで、順位が下がっていっている。
東洋経済オンライン:2019労働生産性ランキング
そういう意味では、財政ではなく、日本はずっと無視してきた、日本人の多くの真面目に働く人を大量に投入すれば何とかなるということで、中身はどうでもいいという考え方でやってきたこのパラダイムというのは、MMTであっても無理ではないかと思う。
パラダイム:ある時代のものの見方・考え方を支配する認識の枠組み。
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