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【今日のひと皿】オトナなグラタン

グラタン食べたい。

納品を済ませてホッとした瞬間、私はそんな衝動に駆られた。

子どもが好きなメニューの上位に、常に上がるグラタン。
作るのけっこう面倒くさいし時間かかる、わりと気合いを入れて取りかからないといけない料理、グラタン。

それを私は、今日、作ることにした。
なぜなら私は、オトナだから。
食べたいと思ったら、自分の裁量で作ってしまえる。それがオトナだ。

グラタンといえばマカロニグラタンとかエビグラタンとかを思い浮かべる人が多いだろうが、そこはオトナに、変化球でいきたい。
私はスーパーへ行き、ズッキーニを一本購入した。冷蔵庫には数週間前に買ったまますっかり忘れていた長芋がある。オトナなチョイス、長芋とズッキーニのグラタンだ。

マカロニはいちいちゆでなきゃいけないし、エビも下処理があって手間だが、長芋もズッキーニも切るだけでよい。加えてどちらも生で食べられる野菜なので、少々生焼けでもいける。時短を狙う抜け目なさも、オトナなグラタンには必要だ。あんまり長時間台所に立っていると、腰が痛くなる。オトナは毎日体のどこかしらが痛い。

玉ねぎ、ズッキーニ、長芋、そして、やはり冷蔵庫のすみっこで忘れられていたシャウエッセン。これらを切って、フライパンで炒める。小麦粉を入れて、粉気がなくなるまでさらに炒める。

ここで、ダマにならないように気をつけながら、少しずつ牛乳を注ぎ入れる……のだが、オトナな私はひと味違う。牛乳ではなく、豆乳にする。昨年受診した人間ドックでコレステロール値が引っかかってしまったため、次の検診まで乳製品とは極力距離を取っているのだ。オトナになると、好きでもあえて気のないフリをしなくてはいけない関係もある。

いい感じにとろみがついたら、耐熱皿に移し、とろけるチーズをかけて、あとは焦げ目がつくまでオーブンで焼くだけだ。コレステロール的にはチーズもアウトだが、チーズがかかってないグラタンなんて悲しすぎるからそこはいいことにする。なんならソーセージだってアウトだ。いまさら細部にこだわってもしょうがない。ここはオトナとして、妥協しよう。

焼けた。
少し冷めるのも待たずに、即座にアツアツをいただく。そして、ひとりで「うまぁー!」と叫ぶ。
ちょうどよく火の通った、みずみずしいズッキーニ。ねっとりとした食感はほどよく残しつつも、熱が入ってホクホクになった長芋。豆乳のやさしいクリーム感。焦げたチーズの背徳的な香り。
納品前の追い込み作業で、朝から何も食べていなかった。手が止まらない。たぶん2人前ぐらいはあったが、ペロッといってしまった。

おなかがいっぱいになってあっという間に眠くなったオトナな私は、とっとと風呂に入って、とっとと寝た。

夜中。変な時間に目が覚めた。早く寝過ぎたようだ。そしてなんだか、胃が重い。
急な爆食いに耐えられない程度に、私の胃腸もオトナになっていた。

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福市恵子
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