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創作小説(19) ハバネロババヘラ
単身赴任の旦那の英彦が夏季休暇のため帰ってきた。
娘の桜も夏休みだ。
ということで一家三人、久々に川の字で寝ている。
娘の桜は明日、ショッピングモールに連れてってもらうので大はしゃぎだ。
一向に寝る気配がない。
すると、英彦が「そんなに寝ないのなら、いっそのこと怖い話でもするか」と言い出した...。
ババヘラというアイスをご存じだろうか。
秋田県の道端でお婆さんがヘラでアイスをすくって、花の花弁のように盛り付けるアイスだ。
色はピンクと黄色。
お婆さんの軽快な会話と相まって、夏に食べると本当にうまい。
だけども、そのババヘラに隠れた味がある。なんとハバネロ味だ。
ハバネロ味のババヘラを食べに、私は秋田県に急行した。
一日目、どれも美味しいババヘラだった。
二日目、やはり美味しいが、どれも普通のババヘラだった。
最終日。勢いあまってお婆さんに聞いてみた。
「お前さん、挑戦してみるかい?」と紙に地図を書いて手渡された。
気分はまるで宝物を探す冒険者だ。
その場所へ行ってみると古き良き駄菓子屋があった。
ハバネロババヘラはご当地の駄菓子だった。
お婆さん曰く「だって他人を騙すみたいで食べさせられないだろ?甘いはずなのに激辛なんてさ。」
人情味溢れる秋田県ならではのご当地駄菓子、ハバネロババヘラだった。
なお味は激辛ではなくピリ辛なアイスというより氷である。
試してみるには...、まずは秋田県でババヘラアイスを食べてほしい。
「何それ?」妻の宏美も娘の桜も興醒めした。
英彦は「でも何のためにハバネロ味のババヘラを採算無視して作ってるのとか考えたら怖くなってくるだろう...。」
「面白くない」と桜が言ってとっとと寝てしまった。
こんなに早く寝かしつけるとは...。
宏美は単身赴任中にも関わらず、英彦がうまく娘を手懐けていることに感心した。